2つのKYを現場に定着させる

2つのKYを現場に定着させる

現場に安全と品質のKYTを定着させて、問題を未然に防ぐ、という話です。

問題を未然に防ぐ仕組みがありますか?

 

1.KY訓練、KY活動

儲かる工場経営の課題は問題を未然に防ぐ仕組みづくりです。

未然に防ぐ仕組みを考えるために必要なのは予知する力。先手必勝、とも言い換えられます。

まだ起きていないことを思い浮かべる力です。

現場リーダー、各工程のキーパーソン、現場作業者、全員の地頭の強さが問われます。

 

KYは危険予知の略。

KY訓練あるいはKY活動は作業に潜む危険を予想し、指摘しあう訓練や活動のことです。

事故や災害を未然に防ぐことを目的にしています。製造現場や建設現場で展開されています。

 

KY訓練は鉄鋼業から始まっています。

 

1973年、中央労働災害防止協会派遣の欧米安全衛生視察団に参加していた住友金属工業(現在の新日鐵住金)和歌山製鉄所の労務部長は、ベルギーのソルベイ社を訪れた際、交通安全教育用のシートに目をとめる。

危険を自らが危険と感じることにより、各自安全行動に努めるようになると考え、社内にプロジェクトチームを結成。

その成果としてKY訓練が誕生した。

(ウィキペディア)

 

現場の潜む危険を「自分の危険」と感じさせることが活動のポイントです。

 

2.管理者としてKYを現場展開した話

製造現場の管理者時代、安全衛生に関連した問題が半年に渡って連続的に発生したことがあります。

悪い流れを断ち切るために取り組み始めた活動のひとつにKY訓練があります。

毎日、KYTを実施したのです。

毎日のKYTでは事前にテーマを決めておきます。

各作業者に現状把握、本質追及、対策、目標設定の4項目を書いてもらうのです。

毎日のことですから、継続自体に負荷がかかるようでは問題があります。現状把握では1つ挙げてもらえば十分です。

 

結果をシートに記入してもらいます。

例えば、〇月〇日はボール盤を取り上げるとします。

 

  • 現状把握:ドリルに巻き込まる危険が潜んでいる。
  • 本質追及:回転体に手を出すこと、手袋をはめていること。
  • 対策:手袋をはめずに作業を開始する。
  • 目標設定:手袋をはめない、ヨシ!の安全唱和をする。

 

もっと簡略化しても構いません。継続することが肝要です。毎日やることに意味があります。

日ごとにテーマを変えますが、年間を通じればテーマは繰り返されます。

その際、前回と同じことを記入してもかまわないのです。

 

本人にとって、その対策や目標設定がたいへん浮かびやすい状態になっています。

危険予知の具体例がひとつでも定着すれば、その事項に関するリスクは確実に下がるのです。

現場の意識改革にもつながります。

こうした活動の効果もあり、半年間で悪い流れを断ち切ることができました。

 

3.もうひとつ展開したいKY訓練

製造現場ではもうひとつ展開したいKYがあります。

それは品質のKYです。

 

高品質は競争力の源泉であるとともに、収益の源泉でもあります。

高品質は不良品を減らし、手直しする手間も減らし、直行率を高めます。

品質が良ければ製品を流動させる手間が省け、余分なコストがかかりません。

ですから、コストに見合うだけの手間をかけて品質トラブルを避ける努力を継続するのです。

品質に影響を及ぼす要因を上げます。その要因と品質トラブルとの因果関係を明確にするのです。

モノづくりのノウハウと直結しています。

 

品質トラブルの原因を事前に把握しておけば、品質管理で押さえるポイントが明確です。

効果が大きい改善策は他職場への横展開、設計部門など上流工程へフィードバックします。

類似の品質トラブルを他職場で発生させないよう、組織的に防止できるのです。

 

安全と品質に関した2つのKYを現場へ定着させます。

まだ起きていないこと、起きる懸念のあることへの対応力が高まります。

問題を未然に防ぐならば高めたい力です。

加えて、トラブルに強い筋肉質の現場になります。そのトラブルに対する思考訓練ができているからです。

 

板金製品を製造する企業の現場リーダーが次のように語っているのを耳にしました。

「問題が起こったら相談するように。」

これでは問題を未然に防げません。都度対応で現場は疲弊します。

 

2つのKYを現場へ定着させて問題を未然に防ぐ仕組みをつくりませんか?

 

まとめ。

現場に安全と品質のKYTを定着させて、問題を未然に防ぐ。

 

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出典:株式会社 工場経営研究所 伊藤哉技術士事務所


製造業専門の工場経営コンサルタント。金属工学の専門家で製造/生産技術、生産管理、IEにも詳しい。エンジニアの視点で課題を設定して結果を出し、工場で儲ける仕組みを定着させることを得意とする。コア技術の見極めに重点を置いている。 大手特殊鋼メーカーで20年近く、一貫して工場勤務。その間、エンジニア、管理者としての腕を磨く。売上高数十億円規模の新規事業の柱となる新技術、新製品開発を主導し成功させる。技術開発の集大成として多数の特許を取得した。 その後、家族の事情で転職し、6年間にわたり複数の中小ものづくり現場の管理者を実地で経験した。 大手企業と中小現場の違いを肌で理解しているのが強み、人財育成の重要性も強調する技術系コンサルタントである。 技術立国日本と地域のために、前向きで活力ある中小製造企業を増やしたいとの一念で、中小製造業専門の指導機関・株式会社工場経営研究所を設立。現在、同社代表取締役社長。1964年生まれ、名古屋大学大学院工学研究科前期課程修了。技術士(金属部門)