音声データは宝の山。会話のなかに現場改善のヒントがある

音声データは宝の山。会話のなかに現場改善のヒントがある

スマートファクトリーを実現するにあたり、最も大事なものは“データ”である。現場データの出どころは大きく2つ。“設備”と“人”だ。クラウドやAIだと言っても、まずはこれらからいかに多くのデータを製造現場から収集することが大前提になる。センサを取り付けて機械やラインの稼働データを収集する、ウェアラブル端末で人の活動をデータ化するなど、すでに現場ではあらゆる手段を使って多種多様なデータを取得している。しかし実は有効なデータが収集できていない。それが会話のなかでの「人の言葉」だ。

言葉は、人から発せられた瞬間に霧散する。記録は、会話している相手の記憶のなかだけにされる。作業員同士の何気ない会話、先輩から後輩へのトレーニング中の指導中のやりとり、ふと出てくる疑問、普段は現場にいない人が現場を視察した際に漏らした一言など、その内容には、センサでは感じ取れない、とても重要なもの、お宝が含まれている可能性が高い。最近のコールセンターでは、通話内容を録音し、音声認識を使ってデジタルデータ化して管理・分析して業務に活用し始めている。人の発する言葉のなかにヒントがあると感じている証拠だ。

現場で管理される側の立場に立ってみると、業務時間中に限ったとしても、会話がデータとして残ることには抵抗を感じる。昔、街中に監視カメラが設置されはじめた時、誰かに見られていることに抵抗を感じたが、それとは比にならないくらいの嫌悪感だ。一方、データを集めて使う側、管理する側としては、人の言葉は宝の山だ。プライベートも絡むことなので線引きが難しく、扱いにくい問題だが、うまく解決できれば有効なことは間違いない。


1975年群馬県生まれ。明治大学院修了後、エレクトロニクス業界専門紙・電波新聞社入社。名古屋支局、北陸支局長を経て、2007年日本最大の製造業ポータルサイト「イプロス」で編集長を務める。2015年3月〜「オートメーション新聞」編集長(現職)。趣味は釣りとダーツ。