電流戦争が激化する - ワイヤレス充電の今後の動き

電流戦争が激化する – ワイヤレス充電の今後の動き

ワイヤレス送電という概念は最新のもので、しかも将来的な構想のように思えますが、その起源は古く「電流戦争」が繰り広げられた130年前に遡ります。

この競争は、1880年代後半にトーマス・エジソンとジョージ・ウェスティングハウスの間で行われたものです。

しかし、火に油を注ぐような行動でこの競争を激化させたのは、セルビア系米国人エンジニア/物理学者のニコラ・テスラ (1856-1943)でした。

 

テスラは、電力の発電、送電、応用に関する多数のブレークスルーを実現したことで有名になりました。

テスラは現在主流になっている交流(AC)電力系の設計に寄与したことでよく知られています。

テスラは、学生時代の1875年に、オーストリアのグラーツにあったオーストリア・ポリテクニックに入学しました。

 

その10年後にエジソンと一緒に働くために米国に移住したテスラは、エジソン社の直流(DC)発電機を全面的に再設計する業務に携わりました。

数ヶ月でその業務を終えましたが、エジソンが報酬支払いの約束を守らなかったため、見切りを付けて、すぐにエジソン社の強力なライバルであったウェスティングハウス社に新しい職を見つけました。

テスラが開発した製品の1つが、高電圧の長距離伝送に有利なため人気が高まっていた電力システム形式である、交流電流で動作する誘導モータです。

 

長年にわたって存続可能なACモータに関する特許の取得を試みていたウェスティングハウス社にとって、望むところでした。

ウェスティングハウス社による誘導モータのライセンス供与の開始に伴い、テスラは「電流戦争」で、以前の雇用主であり直流を支持するエジソンとは明確に反対の立場をとることになりました。

当初はライバル間の友好的な競争だったものが、1893年のシカゴ万国博覧会でテスラが考案した照明システムが賞を受賞したことで、全面的な衝突に発展しました。

 

「激しい競争」が加熱すると、特許とエンジニアに関連するコストが制御不能なほど高騰し、多額の費用がかかるようになりました。

この衝突は結局、エジソンが自分の会社の経営権を失うという代償をもたらし、エジソン社は複合企業であるジェネラル・エレクトリック(GE)に買収されました。

最終的にジョージ・ウェスティングハウスが、1893年にシカゴで開催された万国博覧会の照明システムに入札して契約を勝ち取りました。

 

この博覧会で注目を集めた出展の1つは、「テスラ多層システム」であり、高電圧・高周波交流電流を使用して部屋の反対側にある照明をワイヤレスで点灯させることによって、テスラ自身が驚嘆する多くの観客を魅了しました。

残念ながら、AC電力に関する特許を売却したにもかかわらず、テスラは困窮のうちに借金を抱えて亡くなりました。

テスラの親友であった作家のマーク・トウェインは、テスラが発明した誘導モータを「電話以来、最も価値のある特許」と表現しました。

 

それから1世紀以上が経過した現在も、ワイヤレス充電技術の優位性を巡る争いは継続しており、新たな電流戦争が始まったところです。

リモート充電が大規模に採用される場合、デバイスを相互運用可能にする必要があります。

すなわち、業界標準を確立することを意味します。

 

これまでに3つの消費者関連規格が登場しました。1つはQiです。これは最大5Wで動作し、共振技術と誘導技術を組み合わせたもので、携帯電話の充電に最適です。

Qiの主な競争相手はPower Matters Alliance (PMA)です。

PMAは最近、Alliance for Wireless Power (A4WP)によって策定された3番目の規格を統合し、より高い電力レベルに対応します。

 

PMAはこれまでファーストフード市場で大きな役割を果たしてきており、スターバックスやマクドナルドの店舗で急速に存在感を高めています。

ただし、A4WP規格はタブレットやラップトップ・コンピュータ業界で高い採用率を達成しているため、近いうちに主流になる可能性があります。

オン・セミコンダクターは2013年にA4WPに参加し、それ以来、この規格に積極的に貢献すると同時に、A4WPイベントを主催してきました。

 

詳細については、過去、現在、将来の技術トレンドを含むワイヤレス充電市場の概観を明らかにし、市場の規格について解説するオン・セミコンダクターのWebキャストを視聴してください。

出典:『電流戦争が激化する – ワイヤレス充電の今後の動き』オン・セミコンダクター


アペルザニュース編集部です。日本の製造業、ものづくり産業の活性化を目指し、日々がんばっています。