隠蔽体質はトヨタ生産方式でしか克服できない|元トヨタマンの目
トヨタの生産工程は全ての工程を1個づつ製品が流れる(ただしプレス、鍛造、鋳造などはロット生産。しかし究極の目標は1個生産)。
そこを流れる全ての部品が流れる間隔が同じである。たとえば極端な例だが、8時間で8個使用される部品は、1時間に1個ずつ流れる。
部品メーカーからの納入も、たとえば8時間で4便あるとすると、2時間に1回納入されることになる。その4便とも、それに載せる部品の種類も荷量も同一となる。
このような不必要なものが何もない状態で、もし部品メーカーが納入指示された数量より少なく納入したらどうなるか。
たちどころにトヨタのラインがその部品の欠品により生産ができなくなり、ラインストップが発生する。
したがって部品メーカーは納入数量に関して絶対にウソはつけない。こうなるとトヨタとしても納入数量のチェックはしなくてよくなる(実際にしていない)。
もし部品メーカーが不良品を納入してきたとする。
トヨタは各工程ごとにポカヨケなどを工夫してなるべく工数をかけずに品質チェックする体制が確立されているため、どこかの工程で必ず発見される。
部品メーカーとしても絶対に不良品は納入できない。したがってトヨタも納入時の品質チェックをしなくてもよくなる(実際にしていない)。
また工場内の全ての事象について正常な状態を、目で見て誰にでも分かるようにしてある。
たとえば人の作業は全ての作業動作を秒単位にまで決めていて標準作業票としてその作業者の上に掲示してある(全て課長までの確認印がある)。
それらの動作には安全までも全て盛り込まれているため、その通り作業している限り絶対に、事故は起きないようになっている。
部下の安全は上司が確実に保障するのだ。ゆえに部下は上司を信頼する。
人の作業以外についても、物の置場、部品手持ち数量など全て決めて明示してある。
管理者は現場を歩きながら、標準と実際を見比べているだけでよい。もし両者に差異があれば、それが即「問題点の発見」なのだ。
このようなトヨタ生産方式の中ではウソは全て発見されてしまうため、ウソはつかなくなる。
本当のこと、本音だけを言っていれば、毎日が楽に過ごせる。したがってトヨタマンはウソを言わない。
世間から見れば『馬鹿正直』ぐらいに見えるかもしれない。しかし『馬鹿正直』ぐらいでなければ、お客様の命を乗せる工業製品を世に出すことはできないではないか。
お客様の命を乗せる工業製品を造っている企業が隠蔽体質で重大な事故を多発させた。
これはもう致命的だ。このような不良品が流失してしまった原因は、ズバリ言うと各工程ごとにきちっとポカヨケや作業標準などでチェックをして後工程へ流していく体制ができたいないためだ。
これをトヨタ生産方式では『品質の工程でのつくり込み』という。
なるべく工数をかけないでできるように知恵を出し合い工夫することがポイントだ。金がかかると結局やらなく(やれなく)なってしまう。
(なぜならトヨタはすでに金をかけずにできる体制を確立しているのだから、価格競争に勝てなくなる。テレビCMでは人が目視でチェック、チェック、チェックといった方向性のようだが、あれではコストも見逃しも発生してだめだ)
「いい加減な品質チェック体制」+「隠蔽体質」=「悲惨な結果」
このような企業は早急にトヨタ生産方式の地盤固め、石垣づくりから着手すべきだと思う。