開放特許を活用し新しい畳を開発【タバタ株式会社】
タバタ株式会社×株式会社神戸製鋼所
神戸製鋼所の特許技術である高機能抗菌メッキ技術「ケニファイン」を活用し、タバタ株式会社が高度な抗菌性を有した柔道畳を開発・商品化。
開放特許との出会い
タバタ株式会社は、まもなく60周年を迎える大阪府堺市にある畳の製造を行う企業です。
畳屋は従来から地域密着型の会社で行っているところがほとんどでしたが、和室が減っていることからも地域密着型でやっていくというモデルは崩れかかっています。
そうした中で、当社は、地域密着型から脱するべく今までにない畳を提供したい、誰もいないフィールドを自分で作って勝負したいという考えから、固定概念を捨てて機能的な畳を製造することに取り組み始めました。
今までにない機能的な畳を製造したいが自社の技術だけでは限界があると感じていた時に「開放特許を利用してはどうか」ということを地域の振興センターから紹介されたのが、開放特許との出会いだったそうです。
そして、開放特許の公開イベントに参加し、複数の大企業がさまざまな開放特許を紹介していく中で、株式会社神戸製鋼所の高機能抗菌めっき技術「ケニファイン」に目をつけ、柔道畳に応用することを考えたそうです。
新製品開発の苦労そして効果
柔道畳は、畳上に裸足で運動するため水虫菌が問題となります。
従来から抗菌作用のある柔道畳は存在しましたが、ケニファインの粉末を畳表面の塩化ビニールに練りこんだものは当然ありません。
しかも、実際に抗菌性能の実験をしてみても、今までの抗菌作用をうたった柔道畳のものと比べて、ケニファインの抗菌作用は格段に優れていたそうです。
ただ、開放特許を活用した商品を出すまでには多くの苦労があったそうです。「ケニファイン」は優れた技術であるものの、そのまま使うことは当然できないため本技術を自社の技術に取り込む必要があります。
粉末の素材で提供されたものを畳表面の塩化ビニール素材と混ぜ合わせるのに、表面の何mmが最適なのか、めっきであることから裸足の選手に影響がないかなど、実験や検証を繰り返したそうです。
その結果、めっきが選手への影響がないことや、適した厚みが0.2mmであることなどがわかったそうです。
当社の田端雅司社長は「開放特許の活用には、苦労もあるがそれ以上の効果がある。
今ではどこにも負けない抗菌性を持った今までにない柔道畳ができた」といいます。
また、特許技術を有するからこそ胸を張って販売でき、本商品を世の中に出していかなければならないという使命感も感じる商品となったと話します。
この開放特許を使った柔道畳の名前は昔の柔道少年ならば誰もが読んだマンガにちなんだ「柔道部物語」。
作者に許可をもらい名前を付けたそうです。今では抗菌の効果が認められ学校などに採用されているそうです。今後の目標は東京オリンピックに採用されるような柔道畳にしていきたいとのことです。
当社は開放特許を使うことで他にない商品を作ることができました。開放特許の活用という一つの商品開発の可能性を感じました。
▲柔道畳から応用展開して開発された福祉用たたみ「楽介」
知的財産権の考え方
新商品の「柔道部物語」は、単に株式会社神戸製鋼所の特許を使うだけではありません。
当社の独自の技術として柔道畳に穴をあけています。
柔道畳に穴をあけることにより、畳にかかる衝撃を軽減することができる技術です。
柔道は、投げられた衝撃などで事故がどうしても起きてしまうそうです。投げられた衝撃を減らすことができればと考えて技術を開発したそうです。
そして本技術については、同社から特許出願を行っているそうです。
これも田端社長が以前柔道選手であり柔道を愛しているから生まれたアイデアともいえます。
田端雅司社長の知的財産への考えは、新しいアイデアで権利として財産を作ることができるのであれば財産を作っていきたいというものです。
次世代に残すのはお金などではなく知的財産や新しい商材などを残していくことが大切だと話します。知的財産権は、財産といういわれ方をするとおり、財産としての価値を持ちます。
アイデアを作り知的財産を増やしていくということはまさしく会社の財産を増やしていくことなのです。
アイデアマンであるからこそ新商品を作り出すことができる。
さらに、その新商品に含まれるアイデアを知的財産として守っていく。
アイデア→商品→知的財産というサイクルが出来上がり、会社に財産が形成されていくのだと感じました。
▲代表取締役 田端雅司社長
タバタ株式会社
〒593-8312 大阪府堺市西区草部692番地
http://www.tabata-ya.com/
出典:『開放特許を活用し新しい畳を開発【タバタ株式会社】』開発NEXT