運動能力|元トヨタマンの目
女子ソフトの宇津木監督が、「運動能力は運動『脳』力でなければいけない」と言っていたそうだ。
確かにイチローとかも、身体能力や動体視力は抜きん出たものがあるが、それらに劣らず「脳」力が格段に優れていることが分かる。
また野球やソフトは特にルールが複雑で、分厚いルールブックがあるほどだ。
高校野球の愛知大会をみていても、県下でも優秀な進学校が準々決勝ぐらいまでは、毎年勝ち残ってくる。
中京や東邦は別格だが、それに続くレベルの私学の野球専門校とは互角に戦っている感じなのだ。
練習時間は格段に少ないだろうから、きっと頭を使って強くなっているのだろう。
工場の仕事も、決められた標準作業をただただこなしているだけでは向上はない。
トヨタの現場作業者は常に、
「もっと良いやり方はないか?」
「不良を出さないようにするにはどうしたらいいのだろうか?」
「このやり方はムダではないだろうか?」
などと、考えながら作業をしている。
逆に、そのように頭脳を使っていなければ、作業時間が長く感じられて仕方がないということもある。
しかし、ただ上司が「考えながら仕事をせよ」と命令すれだけではだめで、体制として現場に考えさせるようにしなければだめだ。
トヨタでは原価係から、素材費、補助材料費、エネルギー費などの細部費目の基準が出されるため、考えながら作業しなければ、すぐに使いすぎて赤字になってしまうようになっている。
この基準というのは、前半年間の平均ベースだ。
自らのやってきた実績が基準なのだから、仕事をしていても実感として分かる最も優れた指標だと思う。
一度行なった改善を維持することも非常に難しいことだ。
このような指標がないと、すぐもとに戻ってしまう。
トヨタの工場見学をされた方は、「単調な仕事でつまらないのではないか?」という感想を持たれることが多いかもしれない。
確かに作業者の体もすごく動いているかもしれないが、頭の中もグルグルに動いているのだ。
ラインの速さは毎月変更される。
そのたびに、何千人という作業者の標準作業を変更しなければならないし、部品の置場も移動しなければならない。
そのようなことは管理監督者だけではできず、全作業者の協力が不可欠だ。
だからトヨタの現場作業者は、肉体と頭脳の両方が備わったすごい人達なのだ。
「品質」「原価」「安全」「問題解決」等が常に頭の中にあって、初めてスムーズなものづくりができるのだ。