遂に見つけたプロデューサー人材育成の本
ずいぶん長い期間ブログを書いていなかった。
それどころか、1年以上も自分の技術士事務所のホームページの更新をしていない。
これでビジネスをしていると言えるのか。
言えません。
実は、昨年より大学の特任教授となり、そちらの方が本業になってしまったのだ。
それでも本ぐらい読まないでどうする、と自分に言い聞かせてきたのだが、とにかく週10時間も講義をし、そのテキストを作りながらの自転車操業状態で、寝ても覚めても、休みの日も講義のことばかり考えていたので、全く余裕がなかった。
ようやく期末試験を終えて、久しぶりに書店に立ち寄った。
私を待っていたのがこの本である。
『プロデューサーシップ 創造する組織人の条件』(山下勝、日経BP社)
もう2年以上前になるが、2度目の定年退職をした会社で人材育成を担当していたとき、目指していたのがプロデューサー人材を育てることだった。
しかし、イメージはあるものの、プロデューサー人材とは何かが明確に定義できず、従って育成カリキュラムもできなかった。
その後、大型書店をいくつか回って「プロデューサー」に関する本を探したが、1,2冊、イメージに近いもの(例えばアグリゲーター)を見つけただけで、これは、というものに巡り合えなかった。
そして、大学で数学やデータベースや技術者倫理などを教えるのに四苦八苦しているうちに、プロデューサー人材はどこかにふっとんでしまった。
しかし、本来、これからの産業を担う人材の育成は大学からすべきである。
私が企業を定年退職して大学の教師に迎えられたのは、企業が求める人材について知っているということを期待されていたからではないか。
であれば、もう一度、これからの企業に本当に求められる人材について考えるのは、大学教師としての私の仕事のはずである。
本書は2014年11月に出ている。
私は出版されてすぐに手に取ったことになる。
これは偶然とは言えない巡り合わせではないか。
しかも、本書は構想から2年かけて出版されたとのことである。
やはり、専門の研究者も「プロデューサー人材」について長く考え続けてきたのか。
本書の特徴は、最初に映画のプロデューサーから話を始め、具体的なイメージがつかめるようにして、後半の組織論、キャリア論、リーダー論に入っていくことである。
学術的な議論もあるものの、理解がしやすく、読み進めるのが容易である。
日本企業の事情についてもよく認識されており、トップが「プロデューサー」を求めていても、実際は社内でその候補者を見つけて日の当たる場所に連れてくることすらできていない実態がよく書かれている。
私の経験からも納得できる。
さて、それでは、どうやってプロデューサーを育てるか。
まずすべきことは、プロデューサーを育て、活躍させられるサポーター人材を育てなければならない。
力のある(と周囲が認め、自分でもそう思っている)人は、自分が前に出ていきたがる傾向がある。
サポートは裏方の仕事で日の目を見ない、という考え方を改めなければなるまい。
同時に、サポートする人も評価する仕組みを企業も作るべきだろう。
これから、プロデューサー人材の育成に関する本がもっと出てくることを期待しよう。
※2015年1月に書かれた記事です。