【最終話】連載小説『改善提案名人に挑戦!』第5話ヤサシク作戦(6)そして自働化へ
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第5話ヤサシク作戦
(6)そして自働化へ
上杉君のライン改善は艱難辛苦をきわめた。
なにしろ、1個の注文でも1000個の注文でも全部同じように流すというのだ。
当然、周囲から反発の声が上がったのもムリはない。
しかし、上杉君は良くがんばった。
自らはナクス・ナガラ・トリカエ・ヤサシクの4作戦を駆使して、またラインのメンバーはチリツモ作戦で細かい改善をくり返す。
ようやく、10個以上の注文なら流せるメドがついてきた。立派なものである。
作業は目立って簡略化され、誰でもできるラインとなった。
人が交代しても1個当たり7秒というサイクルタイムは変わらない。
「次は、単純作業のロボット化や自働化ラインの設計だな」
と武田課長。
「まさか。まだまだですよ」
「いや、もうかなりその可能性があるぞ。よく、ラインの生産性を高めるために、最初から機械化を考える奴がいるが、本当の機械化はこんなふうにまず人の作業のムダをなくしてからやるべきなんだ」
「お金をかけて機械化しなくても結構効率は上がるもんなんですね」
「そう、そしてこれだけ改善すると機械化も楽なんだよ。作業がシンプルになっているからね」
「なるほど。よぉし、次は自働化か……」
……そして再びQCサークル活動発表大会の時季がやってきた。
残念ながら上杉君のラインの改善事例発表はできなかったが、改善提案件数で上杉君は見事第二位となり、グループ提案件数では堂々第一位となって表彰を受けたのである。
一年前はまさか自分が表彰台に立つとは思いもよらなかった。
賞を手にした上杉君に、武田課長と織田課長がかけ寄る。
「やったなぁ、上杉。おめでとう……どうした浮かない顔して」
「くやしいです。こんなに頑張ったのに、やっぱり斎藤には負けちゃった。あいつは本当に改善提案の名人ですよ」
「元気を出せよ。改善というのはいつもチャレンジじゃないか。なぁに、いつかきっと斎藤君に勝つ日も来るさ。改善提案名人に挑戦だよ」
「……そうですね。頑張ります!」
そう言って、名人に握手を求めに行った上杉君の後にさわやかな風が残った。
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出典:『改善提案名人に挑戦!-だれもがプロジェクトXだった-』面白狩り(おもしろがり)