連載小説『改善提案名人に挑戦!』第5話ヤサシク作戦(3)ヒントはあちこちに
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第5話ヤサシク作戦
(3)ヒントはあちこちに
上杉君とにらめっこしていた武田課長、思いついたように
「よし、じゃ、今までの上杉の改善提案を振り返ってみよう。ナクス作戦は何がヒントだった?」
そういえば、ナクス作戦はグラウンドの脇の物置小屋から思いついた作戦だった。
ナガラ作戦は遅刻ギリギリ間一髪セーフから、トリカエ作戦は野球のトレードからのヒントだった。
いずれも職場の改善とは関係ないところからの発想だった。
「それそれ、ヤサシク作戦も、ヤサシクするためのヒントはどこにでもあるということなんだ。
つまり、作戦遂行の手順みたいなものがないというか……いや、ヒントを得るための手法はいろいろとあるんだが、すべてにそれが使えるというわけでもないんだ。
「うーん、これは難しいなぁ」
「要するに発想を豊かにすることと、アイデアをバカにしないことが必要なんだ。そうだな……上杉は改善を面白いと思うか?」
「……正直言って、最初は改善提案なんて重荷でした。仕事をこなすのが最優先で考えるヒマもなかったし、なにかやってもほとんど効果なかったですから」
「今はどう?」
「今は面白いです。あれこれ試行錯誤して、ふっとアイデアが浮かんだときの快感と、それが実際にできて、みんなが喜んだときの達成感は最高ですね。特に、なんでこんなことに今まで気付かなかったんだろうっていうときは、なんとも言えないですね」
「ヤサシク作戦の一番のポイントはそこんところなんだよ」
ヤサシク作戦のポイントをあえて並べるなら、まず第一に直面する問題にじっくり取り組むこと。
悩んで悩み抜いてどうにも解決策が出ないようなら、全く違うことをやって脳ミソを休ませる。本気で取り組んでいるなら、そんなときでも潜在意識の中に問題が残っているものだ。
そうすると、ひょんなきっかけで解決のヒントをつかむことがある。
パァっと目の前が開けていくようなハッピィな感じ、そんな経験をしたことが誰にでもあるのではないか。
(続く)
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出典:『改善提案名人に挑戦!-だれもがプロジェクトXだった-』面白狩り(おもしろがり)