連載小説『改善提案名人に挑戦!』第4話トリカエ作戦(5)「合わせ技」と「連続技」
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第4話 トリカエ作戦
(5)「合わせ技」と「連続技」
実験は作業者に協力してもらうのもいいし、自分でやってみるのもいい。とにかく頭の中だけで改善を進めてはいけない。
上杉君はさっそく自分で組み合わせた作業を試してみた。織田課長も出張でアドバイスできなかったお詫びに付き合ってくれるという。
「なるほど、やりやすいかどうか、うまくできるかどうかは実際にやってみないとわからないもんだな」
こうして、一つ一つ改善案をチェックしていった。
そして、ある事実に気が付いた。
「おかしいな、計算だと10秒になるはずなのに8秒しかかかってないぞ?」
「ふっふっふ、それがそのなんというか、机上計算と実際との違いだ。改善は頭でやるのでなく体でやるものなんだ」
そう、よく「改善は頭が良くないとできない」なんて言う人がいるが、大間違いだ。改善は「より良くしたい」という意欲さえあれば、誰にでもできる。もしそんなことを口にする人がいたら、「改善なんてやりたくない」と宣言していると思ってよろしい。
それはともかく。
「上杉君、武田課長からなにかアドバイスがあったんじゃない?」
「……そういえばナガラと併用すると思わぬ効果があるって……」
「その通り。ナガラは別名合わせ技とも言う。これとトリカエを上手に使い分けていくと、連続技というのもできるんだ」
「なんだか、柔道みたいですね」
「そうだよ、スポーツにはいろいろ改善の参考になることが多いんだな」
「へぇ、面白いなぁ。それで、連続技っていうのはどういうことなんですか?」
たとえば、こんな場合はどうか。2つの工程があって、どちらも同じ工具を使う組立て作業が含まれているとしよう。
このとき、1工程の中の作業でナガラが可能なら、まずそれをチェックする。
もしうまく行かないなら、トリカエによって作業内容を交換し、工具作業を1つの工程にまとめてしまう。そうすると、すくなくとも工具のトリオキ(いちいち取ったり置いたりする動作)がなくなって、その分時間短縮につながるわけだ。
つまり、連続動作による改善。
「なるへそ、しかもトリオキのナクスにもなってますね!」
「はっはっは、結局ナクスが基本の基本なんだけどね」
(続く)
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出典:『改善提案名人に挑戦!-だれもがプロジェクトXだった-』面白狩り(おもしろがり)