連載小説『改善提案名人に挑戦!』第4話トリカエ作戦(4)試行錯誤と実験の繰り返し
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第4話 トリカエ作戦
(4)試行錯誤と実験の繰り返し
ナガラ作戦で失敗した上杉君、新たに覚えたトリカエ作戦で汚名挽回をはかる。
机の上にノートを広げて、一人でブツブツいいながらなにやら書き込んでいる。
ときどき腕組みしては首をぐるりと回し、頭をかいてはノートに向かってふぅっと息を吐く。白い紙面をよく見たらフケが落ちているのだった。運動だけでなく、清潔にしてないと女の子にモテないぞ。
「……どうも、こういうデスクワークっていうのは苦手だなあ……」
と言いながら、またノートに向かってふぅっと息を吐く。
あのとき、セオリー通りに改善したのにうまく行かなかったのは、作業者それぞれの担当作業だけでナガラをやろうとしたことが原因だった。このため、それぞれの作業時間が大きくばらついてしまい、結果として仕掛品や手待ちというムダを生んだのである。
ここは、トリカエ作戦に基づいてまず全体を見通してみよう。
「まてよ、最後の工程で小さな包装箱を組み立てているけど、ここでやる必要はないかもしれないな……それに、A部品の外観検査も前の工程で行って問題はなさそうだぞ……」
いいぞいいぞ、いい着眼点だ。
「……ということはだ。作業時間が短くなりすぎた北条さんのところでやってもらったらどうだろう……うん、ちょうどうまい具合だな……それから……」
その調子その調子。
「……ありゃ、そうなると、最後のクロちゃんの作業が大箱入れだけになってしまった……まいったな……よし、もう一度やり直しだ」
そうそう、そうやって試行錯誤をくり返してみよう。
「ああ、やっぱしダメだあ」
ガバッと起き上がって背もたれに寄りかかった。また頭をかいてフケを飛ばす。
「うーん、どうしても一人中途半端になっちゃうんだよなぁ……」
そこへひょっこり出張から帰ってきた織田課長が顔を出す。
「おお、どうやらヒントの意味がわかったみたいだな、さすがさすが」
「あ、お帰りなさい。それがですね、うまく行かないんですよ」
ごちゃごちゃと書き込んだノートを見せて、これまでの検討経過を説明した。
「いい線行ってるじゃない、もうひと息だよ。机上で行き詰まったら試しに実験してみるのも必要だよ。その結果、なんというかその、新しいことがわかることがある」
(続く)
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出典:『改善提案名人に挑戦!-だれもがプロジェクトXだった-』面白狩り(おもしろがり)