連載小説『改善提案名人に挑戦!』第4話トリカエ作戦(3)3つ目の基本は『トリカエ』
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第4話 トリカエ作戦
(3)3つ目の基本は『トリカエ』
「痛っ、いててて」
普段、運動していないと翌日は筋肉が突っ張っている。少々足を引きずりながら、上杉君は出社してきた。
「先輩、おはよぉっス。先輩も歳ですねぇ」
「ばかいえ、木下より二つ上なだけじゃないか。あいててて」
痛いけど、心地良い痛みだ。ほんとに汗はかくもんだ。
「上杉さん、おはようございまーす。大丈夫ですかぁ?」
黒田さんと前田さんがキャッキャッ笑いながら朝のご挨拶。
「やあ、心配してくれてありがとう。やっぱり運動不足がたたってるよ、腹も出てきたしなぁ」
「今度、バスケットの練習にも来ませんか?」
「じょ、冗談はやめてくれ。体が持たないよ」
と言いつつも、悪い気ははしない上杉君。前田さんの顔を見ながらニンマリ。
(織田課長、わかりましたよ、ヒントってやつが)
要するにこうだ。
交換することによって効果を出すという作戦。竹中さんと前田さんが交換することによって問題解決をはかる。蜂須賀君がトレードされることによってチーム力が補強される。これらのヒントから、問題解決だけでなく、それ以上の効果を発揮させようというねらいであることがわかる。
これを「トリカエ作戦」と言う。そして、これが改善の基本その3である。
「ふーむ、さて、何と何をトリカエるかだ」
トリカエ作戦では、目の前の作業だけにとらわれるのではなくて、バランス感覚で全体を見ることから始めるのが大切だ。
なぜなら、トリカエの前にナクスべき作業やナガラで解決できる問題があるかもしれないからだ。もしそういうものがあれば、そちらを優先して手をつけなければならない。改善可能な問題を残したままトリカエにかかってはならないのである。
次に、全体の中で動かせるものと動かせないものとを見極める。
たとえば、そこでなければできない作業と自由に移動できる作業はどれか?
つまり、前の工程で後ろにもっていける作業はないか、その逆はないだろうか?
あるいは、ラインから独立して行われているような作業はないだろうか?
作業だけでなく、人・装置・工具についても同じように調べてみよう。
こうして列挙された変動要素を机上で移動させてみよう。このとき、時間がかかりすぎるとか、手待ちが多いとか、不良手直しが多いといった問題のある工程を中心に考えながら移動させてみると良い。
(続く)
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出典:『改善提案名人に挑戦!-だれもがプロジェクトXだった-』面白狩り(おもしろがり)