連載小説『改善提案名人に挑戦!』第3話ナガラ作戦(3)体が知っている
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第3話 ナガラ作戦
(3)体が知っている
寝坊した朝に、すでに学んだ改善の2作戦が隠れていたので、上杉君はビックリだ。こうなると、3番目の理由というのが気になる。
「今朝のケースでは、なんというか、もう一度チェックする必要があるんだがね。確かに改善の基本の一つではあるんだ」
「んもう、課長、もったいぶらないで早く教えて下さいよ」
織田課長、ニヤリと笑って、
「いいかい、着替えをしナガラ食事をし、食事をしナガラ天気予報を聞き、用足しナガラ歯を磨き……」
「わかった、ナガラ作戦だあ!」
「ふっふっふ、その通り。別名合わせ技とも言う」
「なるほどぉ、走りながらコーヒーを飲んだり、満員電車に揺れながら新聞を読んだり……、でも……」
でも、これはちっとも楽じゃないぞ、これでは改善にならないのではないか。
「待った待った、なんでもかんでもナガラで良いとは限らないよ。だから、今朝のケースだって見直しが必要と言ったんだ」
「ふむう、ちょっと面倒臭い作戦ですね」
「ところがね、ちょっと見てごらん。なんというか、作業者はみんな大したもんなんだよ」
と、上杉君のラインの作業者を指さした。
クロちゃんが相変わらず竹中さんに何か質問しているな。竹中さんも最近はあきらめたのか辛抱強く応対している。でも、手を休めてはいない。
(手を休めていないだって!……つまり話をしナガラ手を動かしている!)
そういえば、北条さんは手を動かしナガラ確認している。伊達さんは確認しナガラ組み立てている。今川さんは組み立てナガラ検査している……」
「そう、難しく考える必要はない。どんな仕事がナガラでできるかは、体が知っているんだよ。まず、自分でいろいろ試してみることだな……おっと、今日は会議があるのだった。いやほんとに申し訳ない。この続きはきっとまたあとでするよ、ほんと申し訳ない」
このおっさん、話が終わるときはいつもこの調子だな。でも、ナガラ作戦か。これは考えてみる価値がありそうだぞ。
(続く)
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出典:『改善提案名人に挑戦!-だれもがプロジェクトXだった-』面白狩り(おもしろがり)