連載小説『改善提案名人に挑戦!』第3話ナガラ作戦(1)夏の初めの間一髪
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第3話 ナガラ作戦
(1)夏の初めの間一髪
もそもそ動く布団の中からにゅーっと手が伸びてきて、目覚し時計をつかみ、再び布団の中へ……。
ガバッと起き上がったのはわれらが上杉君である。
「あちゃー。寝過ごしたー」
急いで支度してアパートを飛び出た。
小さな缶コーヒーを手にしながら駅への道を走る走る。腕時計をちらっと確認して
「まいったなぁ」
誰もが一度は経験するお馴染みの光景だ。
どんなに厳しい状況でも努力はしてみるもの。なんとか始業の時刻には間に合った。
息を整えて職場に入る。ちょうど朝礼が始まるところだ。
「……というわけで、季節も良くなって気持ちがゆるみがちになりますから、くれぐれもけがをしないよう気を付けて下さい。では、今日も一日がんばりましょう」
ふぅ、ほんと、今日はもう少しで大けがをするところだったよ。それにしても本当にいい季節になってきたよなぁ。
今日生産予定の部品配膳を済ませて、窓の外を眺める上杉君。
初夏の明るい陽光の中で、グラウンドにところどころ咲いているタンポポの黄色がまぶしい。モンシロチョウが2匹ヒラヒラとくっついては離れ離れてはくっつき、あーのどかだなぁ……っと、いかんいかん仕事仕事!
「おい、今朝は間一髪だったなぁ」
織田課長がニヤニヤしながら声をかけてきた。
「あ、おはようございます。見てたんですかぁ、まいったなぁ」
「はっはっは・・・ところで、どうしたんだ、最近そのなんというか、あんまり提案が出てこないじゃないか」
「ええ・・・天候と同じで少々気がゆるみがちで・・・」
「そこでだ、そろそろ改善の基本その2を教えてあげよう」
「はあ、お願いします」
「うん、そのヒントは今朝の上杉君の行動にある」
「・・・・・・?」
(続く)
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出典:『改善提案名人に挑戦!-だれもがプロジェクトXだった-』面白狩り(おもしろがり)