連載小説『改善提案名人に挑戦!』第2話ナクス作戦(6)プラスとマイナスはゼロ
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第2話 ナクス作戦
(6)プラスとマイナスはゼロ
「……というわけで、少しは黙って仕事してね」
「はーい」
と、クロちゃんもあっさり引き下がったようですが・・・
「あのう、上杉さん、1つだけいいですかぁ」
「うん、いいよ」
「なぜ、PTボックスに物を入れるんですかぁ?」
「そりゃ、物をまとめて運べるし、保管する場合はそのまま置いておけるからさ」
「ほーんとにぃ?物を運ぶときには不便ですよぉ」
「え、なんで?」
いかん! またクロちゃんのペースにはまってしまった。
「だって、1箱に入り切らないときは何回も行ったり来たりするしぃ、数が少ないときはPTボックスなんて使わなくてもいいしぃ、それから……」
「いいんだよ、2箱以上になるときはパレットで運べば良いし、少なければ手で持っていっても構わないんだ。必ずPTボックスを使わなくちゃいけないというルールはないんだ」
「やったぁ!それじゃPTボックスなんてなくしちゃいましょうよ」
「えっ、ええ?」
これは意表を突いた発言だ。
「だからぁ、検査と仕上げの場所を近づければ、いちいちPTボックスに入れたり出したりすること、いらないですぅ」
「……そ、そうだよな……前に作業台をなくす改善をしたとき、なんで気が付かなかったんだろ……」
そう、ナクス作戦はいろいろなところに応用できる定石みたいなものである。1つの改善で満足せずにどんどん広げていこう。
定石その1
まず目的をはっきりさせること。仕事の中で使っている物や自分の行動が本当になくてはならないものなのかどうか確認すること。
そのとき、しつこく「なぜ」と「ほんと」をくり返すのがコツだ。
たとえば、なぜその動作が必要か、なぜその作業台が必要か、なぜその伝票が必要か等々。
定石その2
プラスとマイナスを探すこと。
これは、仕事の中で「わざわざ」やっていることを探すことだ。
たとえば、わざわざ箱に入れて出している、わざわざ並べて崩している、わざわざ転記して記入している、わざわざ往復している等々。
定石その3
現状にこだわらないこと。
今やっていることの中には、目的不明なのにルール化されているように見えることが意外に多い。
初心に帰って、当たり前と思っていることに疑問を投げかけてみよう。この際、先輩なんていうプライドなんか捨てて、ずぶの素人の意見を聞いてみるのも良い。先入観のない彼らの方がものの本質が見えているものなのだ。
(続く)
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出典:『改善提案名人に挑戦!-だれもがプロジェクトXだった-』面白狩り(おもしろがり)