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連載小説『改善提案名人に挑戦!』第1話チリツモ作戦(4)となりの迷惑も考えてくれ

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第1話 チリツモ作戦

(4)となりの迷惑も考えてくれ

kaizen04
上杉君は武田課長に友達の斎藤君からもらったヒントのことを話した。

 

「なぜ、斎藤君の提案は取り上げられて、うちのラインではダメなんですか?」

「うむ、斎藤君のところのように作業者がそれぞれ別個の仕事をしているところでは、確かに400万のコストダウンになるんだが、きみのところは5~6人で流れ生産をしているだろう。そういう職場では1つの工程だけを改善して、いくら時間短縮しても意味がないんだ。……わかる?」

 

 そう言って上杉君のラインの方に歩きはじめた。

 

上杉君のいる組立ラインは5人の作業者が流れ作業で製品を仕上げている。バランスが取れていてムダな動きがないように見える。

 

そのラインを目の前にして、

 

「何秒に1個仕上がっているのかな?」

「大体、12秒くらいですかね、今」

「ということは、5人の作業時間はそれぞれ12秒で平均しているということだね」

「そうです」

「そこで、きみの提案のように改善して最初の作業者の時間を、たとえば11秒に短縮したとする。しかし、あとの工程は12秒でしか作れないから、結局、物ができるサイクルは12秒で同じだ。

「しかも先頭が早いから、2番目の人は追い着こうとして忙しくなるし、間に合わなくなると物がたまってしまうことになる。これはまずいね」

「そうか、改善のつもりが改悪になっているんだ……」
 成程、自分の提案がボツになったのはそういうことだったのか。要するに5人の作業全部を改善しなければ効果は出て来ないんだな。

「……面倒臭いなぁ、改善って」

「待て待て、そう気を落とすことはない。それじゃ、1つばかり上杉君のところに効果的な改善の方法を教えてやろう」

「どんなふうにやればよいのですか?」

(続く)

 

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出典:『改善提案名人に挑戦!-だれもがプロジェクトXだった-』面白狩り(おもしろがり)


アペルザニュース編集部です。日本の製造業、ものづくり産業の活性化を目指し、日々がんばっています。