誰にも聞けない「セル生産」:なぜ生産性向上が実現できたのですか?
誰にも聞けない「セル生産」
なぜ生産性向上が実現できたのですか?
多品種少量生産に適した「セル生産方式」が、なぜ生産性向上ができたのでしょうか?
大きく2つの要因があると、考えています。一つは「ムダの削減」、もうひとつは「モラール向上」です。
一つ目の「ムダの削減」は、「コンベアのムダ」が少なくできたということなのです。
コンベアラインには、改善の難しいムダが発生していました。コンベアの上にあるワークを取り出したり、コンベアに戻すムダな動作が発生するのです。
まれに、コンベア上でネジを絞めたり、はんだ付けする作業だけが、このムダが発生しないのです。
ほとんどの作業者で、この取り出しのムダが発生します。
取り出しと戻しの動作で、およそ1秒は必要になります。コンベア速度を上げてくると、この時間が大きな割合になってきます。
例えば、1個のワークを10秒で作業を行うとすると、その約10%が取り出しのムダになってしまいます。
間欠送りのコンベアだと、この送り時間が手待ちのムダになります。
「セル生産方式」だと、1個のワークを取ると、そのまま複数の作業を行っていきます。1個のワークを持ったまま、次々に作業を行っていくのです。
すると、取り出しムダの割合を小さくすることができます。
しかし、このムダだけでは、どんなに大きくても10%しか、生産性は向上しないのです。実際には、1.5倍や2倍になったセル生産ラインがありました。
さて、どんな要因だったのでしょうか?
これが、もう一つの要因である作業者の「モラール向上」なのです。モラールとは道徳ではなく、「やる気」のことです。近い言葉には、「モチベーション」があります。
コンベアラインの最大の欠点は、一人が頑張っても成果が出ないということです。
コンベアラインは大勢のメンバーで生産しますが、一人がいくら頑張っても、生産数は増えないのです。
しかし、「セル生産方式」だと一人が頑張ると、生産数を増やすことができるのです。他のメンバーに良い影響を与え、メンバー全員で工夫すると、もっと大きな成果を出すことができるのです。
「セル生産方式」をスタートして2週間程度経過すると作業は熟練してきます。すると、メンバー全員が、「頑張れば生産数が増える」ことに気が付きます。
生産数が増えると、工夫することが面白くなってきて、どんどん改善するようになります。
「気が付けば生産性が2倍になっていた」というラインが、あちこちでできたのです。
コンベアは、作業者が考えて工夫することを停めてしまったのです。「セル生産方式」は、この工夫することを思い出すことができたのです。
人が改善をする力は、素晴らしかったのです。
このようにして、「セル生産方式」は生産性が高いことを実証したのです。
参考書
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