設計変更|元トヨタマンの目
トヨタの工場の生産管理の仕事をしていると、「設計変更依頼書」なる書類が設計部からどんどん送られてくる。部品の共通化や使用素材の変更など設計変更の理由はさまざまだ。その書類は社内の関係部署をすべて通って最後に工場の生産管理に届く。
生産管理の担当者はその書類からその設計変更に関するすべてを読み取って、最終的にかんばんを作り変えなければならない。そして旧部品のかんばんと新部品のかんばんをすごいテクニックで入れ替えをする。それが自分の担当する製造部でも毎日に1点や2点は変更されているほど、非常に高い頻度で日常的に変更が行われているのだ。
これはトヨタは「いいことはどんどん取り入れて常に変革させていく」という思想の元に車づくりを行っている証拠だ。
普通、この設計変更ということは非常に大変で煩雑なことであると思う。それがトヨタの場合、この「設計変更依頼書」を起こして関係部署に流していくだけで、あとはシステマティックにすべてことが運んでいってしまう。
この設計変更を完全な日常業務に取り込んでしまっているのだ。
トヨタを辞めていろいろな会社を見せてもらっていると、ある工業製品が発売されてから、ほとんど設計変更などがなされないままになっているものをよく見かける。そのような会社は結局、工場がすべて自分の判断でうまく帳尻を合わせてしまっているのだ。言い換えれば、工場のベテラン作業者のカンコツが問題点を隠してしまっているともいえる。
トヨタにいたころは、当たり前だと思っていたことが、世間に出てみると、「実はそれってすごいことなんだ」ということがあまりにも多いことに驚く。偉そうに聞こえるかもしれないが、本当にトヨタとはすごい会社だ。
元トヨタマンの目
トヨタ生産コンサルティング株式会社