計画生産とかんばん方式の比較
プレスラインでのかんばんによる仕掛けは、一つのラインで多くの部品をロットで生産するにもかかわらず、ラインの組長が信号かんばんのみを唯一の拠り所として、信号かんばんによって知らされる仕掛けの優先順位に従い、生産数量その他信号かんばんによって指示された内容通りの生産を行うところにその特長がある。
これは仕掛け事務係により立てられる、積上げ式仕掛け順序計画を不要とし、従来の仕掛け計画の持つ多くの問題点を解決している。
「精度」「計画変更への即応性」「仕掛け上の責任」の3点につき、「計画生産」と「かんばん方式」について比較すると、次の通りとなる。
1.精度
<計画生産>
(1)計算ミスが時々発生する。
(2)基礎計算と実際との誤差が避けられない。
・在庫消費速度の推定誤差
・段取時間の誤差
・生産スピードの誤差
<かんばん方式(信号かんばん)>
(1)すべて事実に基づくので、凡ミスや誤差がない。
(2)かんばんでの引かれ方にムラが生じた場合の可動率への影響も、事実に基づく生産調整により対処できる。
2.計画変更への即応性
<計画生産>
一度計画を組んだら変更は困難であり硬直的である。
<かんばん方式(信号かんばん)>
消費速度の変化に即応できる。
引取り量が増えれば、信号かんばんが速く外れ、減ればその逆である。
3.仕掛け上の責任
<計画生産>
仕掛け事務係が毎月、時期・数量を決定。
現場は指示通り作っていれば、欠品になっても、直接の責任はない。
<かんばん方式(信号かんばん)>
(1)かんばんの信号により、現場組長が仕掛け順序を決定する。
(2)生産数量は、あらかじめ設定された基準ロットによる。
管理部門の要員は少ない方がよい、ということは誰しも思うのではないだろうか。
私も、トヨタの工場で生産「管理」の仕事をした。
ミスなく出来て当り前。
もしミスでも起こそうものなら、現場から怒鳴りつけられた。
結局、「管理」をしている以上、責任はすべて私にくるのだから仕方がない。
私がその仕事をした時期は、すでにかんばん方式が確立されていたので、計画生産の経験はない。
しかし、もし、私があの現場で、計画生産の仕事をさせられていて、万が一ミスを起こした場合の現場からの叱責の場面は、想像しただけでも死んだ方がましだ。
この仕掛順序の決定は、現場にいる作業者や監督者がやることがよいに決まっていることは、計画生産の当時も分かっていたはずだが、よい方法が見つからなかったのだ。
それをかんばん方式が見事に解決した。
計画生産の事務担当者……どんな緻密な生産計画をたてても、流動する生産の事情で欠品が起き、それを自分の責任にされるのだからたんまらない。
だから解放されてハッピー!
現場作業者……現場も見ていない事務担当者にミスを起こされて右往左往されられるのはたまらない。
かんばんなら工数をかけずに自分達でできるからハッピー!
「管理部門要員を削減せよ!」と世の経営者は声高に言う。
ただ言うだけではだめで、その具体的な手法を示さなければならない。
そうしなければ、すぐ労働強化になってしまうか、管理不行き届きで会社が傾く。