解析よもやま話「モヒカン」
※解析よもやま話はAltairの提供でお届けいたします。
アルテアの中川です。
皆さんはモヒカンと聞くと何を思い浮かべるでしょうか。
大抵の場合、北米先住民族のあの髪型だと思います。しかし、自動車の車体開発に携わったことがある人の中には、車体のルーフ構造の方を先に思い浮かべる人もいるかもしれません。
写真は私の車ですが、最近の乗用車はほぼ例外なくルーフの外側に前後方向のモールがついています。
自動車会社の人たちは、この構造をモヒカンと呼ぶのです。
車体のデザインは、できるだけ各パネル間の段差や継ぎ目が目に付かないように工夫されているものですが、なぜかここだけはモールをはめ込んで継ぎ目のある状態が普通とされているのが不思議です。
この部分の断面を模式的に描いたのが図1です。ルーフパネルをボディーサイドに溶接した後にモールをかぶせて隠してあるわけです。
この構造が主流になる前は、図2のようにルーフパネルをもっと外まで持ってきて溶接部が見えないようになっているのが普通でした。
ボディーサイドの断面を大きく取れること、ルーフパネルの左右スパンが短くなるので剛性や振動面で有利なこと等、モヒカン構造の方が優れていることは間違いありません。
ネットで調べたところ、この構造を日本で初めて採用したのは1960年代後半のホンダ1300クーペだったようです。
ホンダの場合、その後登場したシビックやアコードでもこの構造を採用しています。
しかし、他の自動車会社のデザイナーの人たちはこの継ぎ目がきらいだったのでしょう。
ずっと主流になることはありませんでした。転換のきっかけになったと個人的に思っているのは、1980年代前半に登場したメルセデスベンツの190Eです。
この車にモヒカン構造が採用され、その後、より上級のEクラスにも展開されていきました。この頃から国産車でも次第に増えてきて、今やモヒカン構造ではない車を探すほうが難しいくらいです。
個人的感想ですが、デザイン的には納得していないけれどベンツを始めどこもやっているから採用した、というのは何となく面白くない気がしています。
継ぎ目のないルーフで性能も優れている、という構造の車をどこかの会社が出してくれないかと密かに期待しています。