製造部門のトップキーマンはどのような戦略を展開すべきか?

製造部門のトップキーマンはどのような戦略を展開すべきか?

グローバル化、少子高齢化、などの環境変化と共に、日本産業が大きく変化しなければならない現代、多くの企業で求められる要件は『経営戦略の在り方』と『トップキーマンのマネジメント力』、そして『次世代を担い社会にお役に立ちつつ、地球環境に優しい新製品』の創出ではないでしょうか?この3つの軸をしっかりした企業が進展して行くことは、今日まで産業が伸び、日本を支えてきた基本事項であり、これからも変わらないはずです。

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この中の『経営戦略の在り方』について、「製造部門の明日を担うトップキーマンがどのような戦略を展開すべきか?」について調査研究した結果を抜き出して、解説することにします。上の図がその要点ですが、「産業分野を限定すると、企業の選択肢は余り無い!」という事が判りました。では、簡単に、例を紹介することにします。

1999年に日産ゴーン社長が実現したリバイバルプランの快挙は、多くの皆様の記憶に残る快挙だと思います。自動車産業が持つ戦略における選択肢は?と見ると、このケースでは当時、緊急対策が必要となり、トップ交代が行われました。徹底的な原価低減対策を進めるためには、M&A、吸収合併や企業の転売~提携がありますが、この策は選択しませんでした。また大きな資金、または100分の1グラムの歯車製作で有名になった樹研工業のように、内部留保を駆使して、最先端分野への集中、または、リフレッシュという策が考えられますが、その手も日産自動車の選択肢では無かったわけです。

そうなると、売れない製品と赤字工場を切り、儲かる仕組みをつくる。次に、キーマンを選択して売れる製品に集中する。さらには、トップ自らが現場に行き、総ての責任を持つ形で、対策重点内容に対し直接指示し、スピード改善を図る、という策を展開する必要が生じます。ゴーン社長から学ぶべき大きな点は『セブン・イレブン』の名がつけられた行動と共に、経営改善の要点を、直接、現場のキーマンと話し、決め、進めた活動です。ちなみに、この名は朝 7時から夜 12:00 まで 3 ヵ月間実践したそうです。具体的な内容は、儲かる企画をすでに持ち、後に、100 名ものゴーン・チルドレン方々へ、革新の重点内容を直接委託していった例です。

このような「選択と集中」に代表される内容は、既に、赤字で苦しむ米沢藩を雇われ社長で来た上杉鷹山が『火種論』と共通する内容です。パナソニックの中村元社長、GEのウエルチ元会長、三共電機を1年で革新した日本電産の永守社長の行動も同じでした。

以上、緊急赤字脱出戦略の在り方の一例を紹介しましたが、ここには、トップを変えた革新策の展開(人事を尽くして天命を待つ)には戦略を具体化する戦術(具体的な展開手段)もある程度決まっています。そうなると、「トップの任についた方の行動力が成果創出までの時間と、定めた目標達成度を大きく左右することになる」という仕分けになります。

図の中央部にある経営再建の緊急対策に対し、右側は起業です。例えば、多くの戦略がありますが、レトルトの名の製品をブランド化して再復活する例があります。また特定顧客や市場を狙う策がありますが、昨今紹介された髪の毛の 1/6 の太さの布を織る、石川県・七尾の天地合繊『天女の羽衣』や、福井県・越前の龍泉刃物で、鍛造技術の利用で西洋料理用ナイフの切れ味を格段に向上させ、現在、世界的の料理専門家間では知らない者がいないほど有名になった取り組みなどは、衰退作業の中で『技を極めてダントツ製品化する』という中小企業が過去の技術や技能を極限まで追求して企業内で起業的な取り組みを成功させた例ということができます。

また、培った技能を新たな産業ニーズに活用して行く例もあります。
例えば、筆者の近隣の等々力という地では、下請けで生計を立ててきた例があります。親会社は海外へ移転、試作専用企業として何とか活動してきましたが、量産品は海外へ移行する一方であり、廃業となる企業が相次ぐ状況でした。そこで、企業が“チーム等々力”という連携を組み、技能展示会を開くと、昨今の地震対策上、仏像など高価な美術品を保護する免震テーブルの開発の依頼が大学から舞い込み、専門技術者支援も参画、見事に安価な免震テーブルを実現しました。以降、ビジネスは復調、若手が見学に来る地に変化したそうです。これに似た例は埼玉県の入間にもあり、チーム入間の名で活動しています。左側は日本で食えないのでグローバルという例ですが、グローバルに対応可能な戦略と技術を持つ企業が新たな発展になることが判ります。以上このように整理すると、企業における選択肢は少ない実情です。


昭和45年から平成2年まで、日立金属㈱にて、全社CIM構築、各工場レイアウト新設・改善プロジェクトリーダー、新製品開発パテントMAP手法開発に従事。うち3年は米国AAP St-Mary社に赴任する。平成2年、一般社団法人日本能率協会専任講師、TP賞審査委員を担当を歴任する。(有)QCD革新研究所を開設して活動(2016年有限会社はクローズ、業務はそのままQCD革新研究所へ移行)。 http://www.qcd.jp/