製造業のウマミ|元トヨタマンの目
高校の同級生で、京都大学経済学部を卒業し、三菱商事に入社したK君が、若い頃言っていた。
「三菱商事だからカッコいいと思って入ったが、商社なんて実に厳しい。仕入れる場合はメーカーさんに頭を下げてなるべく安く仕入れさせてもらい。売る時も当然頭を下げてお客様に買ってもらう。頭は下げっぱなしなんだ」
自らものづくりをする製造業はその点、実に有利だ。
例えば自動車の場合、販売価格には世間相場がある。
各自動車メーカーから販売される同じようなグレードの車は、大体同じような販売価格になる。
しかしその原価はといったら、各車によってまちまちであろう。
ということは原価は下げようと思えばどこまでも下げることができるのだ。
商社の場合は、頭を物理的に下げて仕入原価を下げるしかないが、メーカーの場合は頭の中身の脳ミソを使って原価を下げることができる。
どれだけ原価を下げているかは、自動車各社の企業利益や株価で判断できる。また原価低減で儲けたお金は、研究開発などへ積極的に投資されさらに企業間格差が大きくなる。