自動化設備の故障予防
自動化設備は、計画段階での仕様検討が重要です。けれどもそれと同じくらいに重要なことに、設備の使用段階における故障予防があります。
自動化設備の生産性向上を考えたときに、大切なことは設備を止めないことです。設備を止めないために、故障予防はかかせません。
今回は、この故障予防の内容について説明します。
1.自主保全と専門保全
故障予防とは、その名のとおり故障して所定の機能を失ったり満足しなくなったり、所定の品質レベルを維持できなくなったりする前に、それを予防して設備を止めないための活動です。
その中には、製造部門のオペレータが行う自主保全と、保全部門の保全員が行う専門保全があります。
点検は、チェックシートを作成して行うと点検漏れを防げます。
チェックシートにない異常や故障が発見されたら、その都度新たに項目を追加してください。
その他に、危険表示ラベルや配管への流れ方向や流体の種類ごとに色分けをしたり、油量のレベルゲージにMAX・MINの表示や給油口に油名や油種を表示したりするなど、だれが見てもすぐにわかるようにすることも大切です。
2.オペレータが行う保全内容
オペレータが行う保全内容を、表1に示します。
内容に応じて、毎日始業終業時・毎週・毎月などと日にちを決めて実施します。内容を決めるときに、オペレータが行う内容と保全員が行う内容とで抜けや重複がないか、よく確認する必要があります。
点検をする場合は、単に見て回るだけでなく、いつもと異なる箇所や変な音や動きがないかといった目的意識を持って点検するようにしてください。次の点検まで異常が発生しないようにするつもりで、しっかり点検をしてください。
▼表1:オペレータが行う保全内容
No. | 項目 | 内容 |
1 | 日常点検 | 異音、振動、ベルト・チェーンのゆるみ、スライド面の摩耗等を点検する |
2 | エア漏れ | エア漏れがないか確認し、あればパッキンやシールを交換する |
3 | 油漏れ | 油漏れがないか確認し、あればパッキンやシールを交換する |
4 | 給油 | 潤滑油、作動油、切削油等の不足がないか確認し、不足の場合は補給する |
5 | 増し締め | ボルトのゆるみ、ガタはないかを確認して、あれば増し締めする |
6 | 消耗品の補充 | 消耗品に不足がないか確認し、不足の場合は補充する |
7 | 清掃 | ごみ、汚れはないないか確認し、ある場合は清掃する |
3.保全員が行う保全内容
保全員が行う保全内容を、表2に示します。
故障修理の中には、日常点検で発見された異常やエア漏れや油漏れ箇所の部品や機器の交換も含まれます。
▼表2:保全員が行う保全内容
No. | 項目 | 内容 |
1 | 定期点検 | 異音、振動、ベルト・チェーンのゆるみ、スライド面の摩耗等を点検する |
2 | 故障修理 | エア漏れがないか確認し、あればパッキンやシールを交換する |
3 | 予防保全 | 油漏れがないか確認し、あればパッキンやシールを交換する |
4 | 予知保全 | 潤滑油、作動油、切削油等の不足がないか確認し、不足の場合は補給する |
4.停止時間を減らすことで無人運転へ
故障予防の実施は当然として、実施後の点検記録や保全記録も大変重要です。
この内容が、予防保全や予知保全のもとになります。そのつもりで、後に役立つ項目・内容を記録してください。
設備故障履歴の例を表3に示します。
備考欄には、修理後に修理部品の費用などを記載しておくのもよいと思います。
▼表3:設備故障履歴の例
発生日 | 故障内容 | 応急修理内容 | 恒久対策内容 | 停止時間 | 記入者 | 確認者 | 備考 |
こうして設備の停止時間を減らすことで、その後の休憩時間や昼休みの無人運転につながってきます。
そしてこの停止時間を長時間なくすことができれば、残業時間や夜間の無人運転に、最終的には24時間運転にとつながってきます。
故障予防を行って、ぜひ自動化設備の生産性を向上してください。
5.故障予防からIoTへ
これまで、故障予防について説明しましたが、次のステップでは、工場の各自動化設備すべてのこれらの保全内容をデータ化することを検討してみてください。
その時に、保全データに加えて加工データや生産数などもデータ化して作業実績も合わせて共有すれば、材料、加工条件、作業手順などの条件を、どのようにすれば高品質で低コストに製造できるかの分析ができます。
これにより、設備稼働率の平準化、多品種少量生産、異常の早期発見なども可能になります。製品にその加工データを対応づけて蓄積することで、歩留まりの向上や品質の確保、予防保全・予知保全などの検討もできます。
IoTとは、すべてのものがインターネットでつながるという概念であり、製品も設備も現在の状況がリアルタイムで把握できます。
また、工場内での生産状況、さらには受注や在庫、物流といった状況が一度に把握できるようにもなり、これらの情報を分析することにより、どこに無駄がありどこを改善すればよいのかといった現状分析と、課題の解決方法の発見ができるようにもなります。
次のステップで、故障予防の保全内容をデータ化するだけでなく、加工データや生産数などもデータ化して作業実績も合わせて共有して、更なる生産性の向上を試みてはいかがでしょうか。