職人が一箇所で一人で組み立てることからライン化への検討事項|元トヨタマンの目
源流の設計から変えなければならない
設計者が何の制約もなく好きなように設計しても、職人がカンコツで神業のように組み立ててしまう。これでは誰でもがすぐに組み立てられることが前提のライン化はできない。
設計者は、例えば位置決めが即座にできるように、合体する一方に小穴をあけ、一方に突起をつけるなどの工夫をする。
いわゆる「プラモデル化」だ。
昔のプラモデルは接着面を接着剤でくっつけていたが、今のはカチャッカチャッと手で押さえれば嵌ってしまう、あのイメージだ。時間のかかるボルト締めなどはやめて、ピン打ちなどで同じ品質は維持出来ないか等、組付け時間が低減できる事項も設計者に提案したり検討させたりする。
こことトヨタのラインとはまったく同じ
ここの職人は4時間で1台組み立てる。
しかしトヨタは2分に1台大勢で組み立てる。全然違うよねえ。
いえいえ、トヨタだって4時間に1台造ればいいのなら、120工程(4時間×60分÷2分)を1人で作業させるよ。ここは120工程を1人で覚えてしまっているから、「職人」と呼ばれるわけだ。
このことでトヨタにみたいにライン化しなければ、増産できないということが分かるだろう。
進め方
標準作業票がすべて職人の頭の中に入っていてはどうしようもない。120工程分の標準作業票をこれからすべて作っていかなければならない。
その前に、工程順が一目で分かる工程表を作らなければならない。そこにはパーツカタログなどの絵や品番を入れて分かりやすくする。
そして実際の組付けラインを作っていかなければならない。この実際の組付けライン自体が、巨大なマニュアルにするといった考え方で進めたい。
部品供給は1台ずつ部品をセットする
部品トレーにはスポンジを敷いて、部品を1つずつ入れる部品姿の穴をあけ、その横にパーツカタログの絵を貼る。
またそこに入れる時、品質チャックや油塗りなどの作業がいる場合はその要領を書いて貼る。こうすれば、部品セットの作業者も間違えない。
空の部品トレーにはかんばんの機能を与え、次の作業に取り掛からせる。
歯医者さん方式
歯科医院では数名の患者を座らせておいて、看護士さんが歯型や道具やカルテなどをすべて準備しておく。
歯科医師はその場へ来るなり、すぐに治療行為を行なえる。そしてそこが終れば、すぐに次に待っている患者のところへ行く。
組付け作業者も歯医者さんと同じイメージだ。
ある工程の作業が終わり、次の工程に移っていけば、そこにはその工程の標準作業票(カルテ)があり、必要な部品がトレーにすべて置いてある。まさに歯医者さんと同じだ。