繰り返し、繰り返し、繰り返し語り現場へ浸透させる

繰り返し、繰り返し、繰り返し語り現場へ浸透させる

経営理念と安全衛生は、両者をセットで、繰り返し、繰り返し、繰り返し、現場へ語って浸透させる、という話です。

1.「経営理念」にも仕事をしてもらうためには

非常時にこそ、その会社の本当の強さが発揮されます。

そして、その強さは現場に浸透している経営理念や経営者の想いから生まれます。

経営理念がどれだけ現場への浸透しているかその度合いこそが経営者の本気度を表します。

 

“他人を通じて、自分の想いを実現させる”という経営の本質に沿って、現場からやる気を引き出すために経営者が意図して働きかけた結果だからです。

逆に言うと、経営理念や経営者の想いが浸透していないモノづくり工場では、現場のやる気を引き出すのに苦労します。

そうした現場では「作業」は処理されていきますが、「知恵」は出てきません。

 

創業者の想いが詰まっている「経営理念」に仕事をしてもらうためにも、経営理念や経営者の想いを現場へ浸透させることは重要な課題です。

2.安全衛生管理を機能させるには

モノづくり工場での安全衛生管理は影の主役であり、生産活動に影響を与えずに安全意識の定着を図ることが必要です。

安全衛生の意識は強いるものではなく、浸透させるものです。

管理者として毎日枕を高くして眠りたかったら、そうした状況を目指すべきです。

 

そうでなければ、毎日ヒヤヒヤもので体が参ってしまいます。

経営理念の浸透度合いが非常時における会社の足腰の強さを示しているのと同じように、安全衛生の意識も同様に浸透させることが必要です。

頭で理解している水準では不十分です。

 

赤信号を見たら自然と足が止まると同じくらいに、意識に浸透し刷り込まれて初めて発揮されるものです。

煩雑な現場で自分の身を守る行動は“考えて”するものではなく、自然とそう動くことが求められるからです。

3.繰り返し、繰り返し、繰り返し

総計50名程度の現場を管理していた時代、繰り返し、繰り返し、繰り返し、現場へ話していたことが2つあります。

ひとつは、業績のこと。(当然のことですが)

会社の大きい小さいにかかわらず、どこの会社、工場でも収益目標を立てます。

 

ですから、それを達成させるための頑張りややる気を引き出すため、直近で達成すべき目標のこと、そして、その進捗度合いを、繰り返し現場へ話しました。

もうひとつは、安全衛生管理のことです。

どんなに生産活動が順調に進んでいても、現場で安全衛生上の問題が発生してしまうと、その成果を素直に喜べない状況に陥ります。

 

現場もイイ雰囲気とはならず、加えて、管理者自身もコントロールできない業務に忙殺されてしまします。

短時間で安全衛生対策を導入し、現場へ定着させたり、公の機関へ出向いたり、と。

安全衛生上の対策を進めている間、本業である“お金を稼ぐ”施策は全てストップ。

 

本業以外の自らコントロールできない業務にかなりのエネルギーが費やされ、管理者としてはとても辛い状況になります。

当然、トラブルの対象となった現場作業者やその家族も辛い状況になります。

ですから、安全衛生管理に関するトラブルは絶対に起こしてはならないのです。

 

そうした考えに至るので、結果として、安全衛生管理のことも繰り返し現場へ話すことになります。

「今月は目標は○○で、今のところ△△であり、もう一息、生産性を上げて全体で出来高を上げて欲しい。

だけど、ケガや病気には……」

 

かならず、業績と安全衛生をセットで伝えていました。

安全衛生管理上の問題を頻発させてしまった経験から、自然とそうなりました。

現場へしっかり伝えよう、定着させよう、浸透させようとするなら、ひたすらに、「繰り返し、繰り返し、繰り返し」です。

 

これしかなかったです。

4.経営理念と安全衛生

工場運営、工場経営に占める安全衛生管理の位置付けは小さくありません。

リスクの最小化を図る必要があります。

問題が発生した時のダメージが大きいからです。

 

とは言え、決して工場運営や工場経営での主役ではありません。

あくまで“お金を稼ぐこと”、またそのバックボーンとなる経営理念や経営者の想いが主役です。

ですから、工場経営者は常に経営理念と安全衛生の2つをセットで語ります。

 

経営者は常に現場へこれら両者をセットで繰り返し、繰り返し、繰り返し語ります。

繰り返し語ることで現場へ伝わり、浸透します。

そして、繰り返し語る際には、3つの方法を組み合わせると効果があります。

 

1)経営者が現場全員へ語る。

2)経営者が現場ひとりひとりへ語る。

3)チームオペレーションによって間接的に語る。

 

経営者が朝礼や業績報告会等で現場全員の前で語ったり、また、現場の作業者とface to faceで語る場を生かし、繰り返し、繰り返しです。

さらに経営者自身が語るのに加え、チームオペレーションも活用します。

現場リーダーや各工程キーパーソンが現場へ口伝えで語るのも効果的です。

 

マーケティング活動における“口コミ”のようなイメージです。

現場にしてみれば、経営者に加えて、自分たちの仲間も繰り返し、繰り返し語るのを耳にするわけです。

ジワジワ、染みるように意識の中に定着していきます。

 

経営理念と安全衛生は現場へ浸透していないと効果が出ないものです。

そのために、両者セットで、繰り返し、繰り返し、繰り返しです。

まとめ。

経営理念と安全衛生は、両者をセットで、繰り返し、繰り返し、繰り返し、現場へ語って浸透させる。

 

出典:株式会社 工場経営研究所 伊藤哉技術士事務所

 


製造業専門の工場経営コンサルタント。金属工学の専門家で製造/生産技術、生産管理、IEにも詳しい。エンジニアの視点で課題を設定して結果を出し、工場で儲ける仕組みを定着させることを得意とする。コア技術の見極めに重点を置いている。 大手特殊鋼メーカーで20年近く、一貫して工場勤務。その間、エンジニア、管理者としての腕を磨く。売上高数十億円規模の新規事業の柱となる新技術、新製品開発を主導し成功させる。技術開発の集大成として多数の特許を取得した。 その後、家族の事情で転職し、6年間にわたり複数の中小ものづくり現場の管理者を実地で経験した。 大手企業と中小現場の違いを肌で理解しているのが強み、人財育成の重要性も強調する技術系コンサルタントである。 技術立国日本と地域のために、前向きで活力ある中小製造企業を増やしたいとの一念で、中小製造業専門の指導機関・株式会社工場経営研究所を設立。現在、同社代表取締役社長。1964年生まれ、名古屋大学大学院工学研究科前期課程修了。技術士(金属部門)