給与の「見える化」は究極の「比較」を可能にする

給与の「見える化」は究極の「比較」を可能にする

会社に所属している人が最大も関心をもつことは何でしょうか?

1.同僚の給与を「見える化」したら、社内はどうなるか?

会社に所属している人の最大の関心ごとは、「人事」ではないでしょうか。

給与のことも含めた人事案件。自分がどう評価され、将来的に給料がどうなるのか……。

仕事のやりがいや達成感も大切です。

ただし、やはり自分の給料のことも気になるというのが、正直なところでしょう。

 

Forbes JAPAN 2017/5/17(水) 7:30配信

「同僚の給与を「見える化」したら、社内はどうなるか?」の記事があります。

GMOインターネットの「給料の透明化」の取り組みが紹介されていました。

正確に言うと人事評価の「等級ランクの公開」の話です。

 

GMOインターネットは、上場9社を含めグループ107社、スタッフ5156名の規模を有しています。

昨年、あおぞら銀行と資本業務提携を行い、ネット銀行業にも乗り出そうという成長企業です。

 

同社の人事評価は、6段階の等級です。1つの等級は複数のランクで構成されています。

等級とランクごとに給与額の枠が定められ、自己目標の達成度に応じて給与が決定するという仕組みです。

そして、各人の等級ランクを決めるのが、「360度評価」。

他部署を含め、業務に関わる人たちが匿名評価しています。

 

GMOインターネットのグループ人事部、山田大作氏は次のように語っています。

「この制度によって、当社の成長はあると思う」

 

給与額の見える化をしました。その結果、

 

「等級に値する仕事をしているかどうか、自分の立場に責任をもちながら仕事に取り組むようになりました。

自己目標も保身的な低い目標が減り、次に自分は何をすべきかを考えて目標を立て、それに合わせて行動するようになったのです」

Forbes JAPAN 2017/5/17(水)

 

360度評価を導入して公正さ、評価の見える化をしました。その結果、

 

「360度、周りから見られることで意識が変わります。

また、役職者になる場合、チームの部下の9割以上の支持がないと昇格できません。

公平な制度により、みんなが納得感をもって働けるのです。」

Forbes JAPAN 2017/5/17(水)

 

この結果、下記の2つの効果がありました。

  • 仕事に責任を持つようになる。
  • 「なぜ、あんな人が上司なんだ」という不満や愚痴が消える。

 

同僚の給与を「見える化」することによるデメリットも、当然、あったようです。

しかし、全体としてメリットの方が大きかったとしています。

かなりインパクトのある仕組みです。現場に混乱があったであろうことは想像に難くないです。

 

2.給与の「見える化」は究極の「比較」

貴社の現場の給与体系はいかがですか?

他人の給料のことも含め、そもそも給与体系の話自体、タブー視する傾向にありませんか?

大手と中小の現場を経験して概ねそうでした。

ただ、これは特別なことではありません。日本人の特性上、そうした風土が一般的です。

GMOインターネットのグループの仕組みは、そうしたことへの挑戦でもあったと考えられます。

山田氏は「この制度によって、当社の成長はあると思う」と語っています。

 

見える化で責任感や納得感が高まりました。

この制度は、同社独自の仕組みとして、同社の現場からやる気を、確実に引き出しているのです。

 

儲かる工場経営の仕組みづくりの柱のひとつは「見える化」です。

部分最適、全体最適を判断するためには、客観的な指標が必要だからです。

現場のあらゆる活動を数値化し、定量化すれば、「今」を把握できます。

現在の立ち位置を把握できなければ、目標を設定することはできません。

「見える化」で今と目標のギャップを認識できるのです。いい仕事するには、常に「比べる」姿勢が欠かせません。

 

つまり、GMOインターネットの「同僚の給与を『見える化』」は比べることを可能にしました。

会社に所属する人ならば誰でも最も関心のある「人事」「給与」を比べられるようにしたわけです。

 

GMOインターネットの従業員は、ある意味、迷いなく、仕事に打ち込んでいるのではないかと推察されます。

会社に所属している人にとって、これ以上の気になる「比較」はないからです。

 

3.痛みを伴う新たな仕組みへの挑戦

注目したいのは、問題もあったが、メリットの方が大きかった、という考え方です。

経営革新を進めるうえで、極めて重要な判断基準です。

 

不確実性が高まる昨今、人の考え方も変化し、働き方自体も大きく変わろうとしています。

変化に対応して、会社の仕組みも積極的に変えようとする挑戦は欠かせません。

革新的なことに取り組めば痛みも伴います。

そして、新しいことに挑戦するとき、100%問題がないということはあり得ません。

 

しかし、新たな活力を生み出すためには、組織へインパクトを与える必要もあります。

先を見通して、変えねばならないことを試行錯誤しながら変える。

痛みも伴うが、将来を見通して効果があると判断できるなら実行する。

トップの決断次第です。

 

現状維持の方がらくです。今の仕事の延長線上で考える方が、現場も苦労はしません。

しかし、5年先、10年先を見通したらどうでしょうか?若手人財が力一杯働ける環境が維持されているでしょうか?

変動の時代で、現状維持は、相対的に後退です。

 

GMOインターネットは、この制度を2011年に導入しました。

先を見通しているトップは、早々に手を打っています。

あらゆる業務で「見える化」は、現場から持続するやる気を引き出すキーワードです。

 

見える化をキーワードにした、貴社にとっての革新的な仕組みをつくりませんか?

 

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出典:株式会社 工場経営研究所 伊藤哉技術士事務所


製造業専門の工場経営コンサルタント。金属工学の専門家で製造/生産技術、生産管理、IEにも詳しい。エンジニアの視点で課題を設定して結果を出し、工場で儲ける仕組みを定着させることを得意とする。コア技術の見極めに重点を置いている。 大手特殊鋼メーカーで20年近く、一貫して工場勤務。その間、エンジニア、管理者としての腕を磨く。売上高数十億円規模の新規事業の柱となる新技術、新製品開発を主導し成功させる。技術開発の集大成として多数の特許を取得した。 その後、家族の事情で転職し、6年間にわたり複数の中小ものづくり現場の管理者を実地で経験した。 大手企業と中小現場の違いを肌で理解しているのが強み、人財育成の重要性も強調する技術系コンサルタントである。 技術立国日本と地域のために、前向きで活力ある中小製造企業を増やしたいとの一念で、中小製造業専門の指導機関・株式会社工場経営研究所を設立。現在、同社代表取締役社長。1964年生まれ、名古屋大学大学院工学研究科前期課程修了。技術士(金属部門)