経営資源をフル活用して新サービスを提案する「きものやまなか」

経営資源をフル活用して新サービスを提案する「きものやまなか」

ママの振袖を仕立て直す「ママ振リメイク」

名古屋市錦にお店を構える創業1864年の老舗呉服店「きものやまなか」。

従来、呉服業界の売り上げの多くを占めてきたのが成人式の振袖購入です。

しかし、少子化に伴い振袖を購入する人口も同じように減っており苦しい時代に入ってきています。

 

そうした中で当社が開始したサービスが、母親の振袖をリメイクして提供するサービス「ママ振リメイク」です。

当社は、振袖を作ることはしておらず販売、しみ抜き、サイズ直し、小物の販売を中心に行う会社です。

しみ抜き、サイズ直し、小物の販売という従来から行っているサービスの経営資源を合わせて「ママ振リメイク」を開始しました。

 

従来から頻度は少ないながら母親の振袖を直して娘が着るということはありましたが、それを1つのサービスとして打ち出したのは東海地域では初めてでないかと山中邦彦専務は言います。

「ママ振リメイク」の特徴は、これまで行ってきた業務を合わせてサービスを作ったことで新たな投資が不要であったこと、大規模チェーン企業では小回りが利かないために参入が難しいことだそうです。

先行者として始めることで東海地域でのブランド力がアップし、継続的な関係性を作ることができたのです。

 

始めた当初は時々仕事があるくらいだったのが、WEBマーケティング・商標登録を行いブランドアップを図ることで今ではインターネットの検索で上位に表示されるようになり、年間200件以上の依頼が入る中心事業に育ってきたそうです。

もとからある1つ1つの経営資源では他社と差別化することが難しくても、それらを組み合わせて新しいサービスを作ることで他社と差別化できる1つの事例だと感じます。

時代の流れに合致することが大切

「ママ振リメイクが受け入れられた理由に、まだ使えるのにもったいない」という考えがあるといいます。

母親が成人式で着た大切な振袖は大事に保管されています。

大事に使われたものを再利用するという省資源化の時代の流れが合致しているのです。

 

しかし、時代の流れが合致しても晴れの舞台の成人の時に、おしゃれではなく古臭く感じられるようでは若い女性には受けることはありません。

そのため、当社では着物をコーディネートして、帯や小物などで新しく現代的でおしゃれな振袖にしています。

着物を直しておしゃれに着られて、費用も新品を購入するよりも安く抑えられる。母親も自分が着た振袖を娘に着てもらうことで喜んでもらえる。

 

お店としては、着物を新規に購入してもらうよりは売り上げは減ります。

しかし「ママ振リメイク」を通してコーディネート力や店の良さを知ってもらえることで関係性を築くことができ、結果としてファンとなるお客様が増える。

入口のサービスを工夫することでお客様を増やすことができるのだと感じます。

 

山中邦彦専務

「きものやまなか」
http://yamanaka-kimono.com/

 

出典:『経営資源をフル活用して新サービスを提案する「きものやまなか」』開発NEXT


弁理士。コスモス国際特許商標事務所パートナー。名古屋工業大学非常勤講師。1980年愛知県生まれ。名古屋工業大学大学院修了。知的財産権の取得業務だけでなく知的財産権を活用した製品作りの商品開発コンサルタントを行う。知財マッチングを展開し、ものづくり企業の地方創世の救世主として活躍している。著書に『社長、その商品名、危なすぎます!』(日本経済新聞出版社)、『理系のための特許法』(中央経済社)等がある。 特許・商標の活用を応援するWEBマガジン「発明plus Web」( https://hatsumei-plus.jp/ )を運営している。