管理者が自己分析をせずに、なぜ改善が進むか?

管理者が自己分析をせずに、なぜ改善が進むか?

一般に、日本における製造業の管理者は多忙です。

管理者の仕事は、ここぞ、という時には一時的に仕事に集中し、寝食を忘れて取り組む必要が多い状況ですが、そのようなことが年がら年中続くことは問題です。

もしそのような状況であれば、体制や仕事の中身の見直しが必要です。

 

人生は1度しかありません。となると「人として、価値ある人生を企業生活と共に送ることは重要ですし、ゆとりを生み出し、夢のある仕事を企画する時間が必ず必要である」と考えます。

このような考えが下に示した図であり「超・時間活用術」という表現で語られている内容です。

では管理職、特に中間管理職はどのように仕事を進行させているのだろうか? このような課題に対する対策をK企業の依頼で訪問〜指導に当たられたD氏の体験談を紹介することにします。

当初、D氏に対するご要求は「現場全体にやる気を起こして、提案活動と共に体質改善を進めたい」という内容でした。

このようなあいまいなご要求の場合は現場の本音を集めて対策を図ることが良策です。

そこでD氏は、無記名、ただし意味不明の内容ではなく、具体的な事例と共に現場の問題点を現場作業関係者全員からカードで挙げていただくことにしました。

 

テーマは「この会社で給与が上がって楽しい仕事をするには?」という内容であり「自分が担当すれば、すぐ効果が出ると思う対象」としました。

その結果、50名ほどの現場から集めたカードは200件程度になりました。

そこでこの内容を整理してグループ化していったわけでしたが、そのカードの多くは驚くことに、現場を直接管理する管理者に対する内容ばかりでした。

 

85%が「現場経験者なら私にできる」という内容だったわけです。

管理職としての訓練を受けていないためか? は判りませんが、K社の管理者の方々は「現場で何か問題があると、すぐに現場作業に手を出す」という具合でした。

このため一見、見た目には忙しく仕事をしているように見えました。しかし、現場作業者の意見は厳しいが実に的を得た見方で物事をとらえていました。

 

その事実を示す例として、例えば「現場の付帯作業を手伝ってくれてもうれしくない。そのようなことが起きている原因を対策すべきだ! 理由:課長が設備の不具合や新人教育をきちんとすれば生産性はあがり、余裕時間が生まれる」とか「付帯作業など我々でできる! それより課長本来の仕事である人材育成や機械の不具合をなくせ!」といった内容をはじめとして、現場管理者に対する要求は具体的、かつ、むしろ管理者が気づくべきテーマが提示されていたからでした。

当然のことですが、提示内容はもっと泥臭く、ここに書くのは問題になるほど熾烈な内容でした。

しかし、この種の内容は、その本質的な内容を把握しなければ改善の的を誤る例ができません。

 

そこでD氏は管理者に対し「管理者のあるべき姿」という資料を用いて紹介した後、この内容を工場のトップ以下、部課長の方々に紹介しました。

その結果、製造現場の方々は、K社・従業員の方々の意識の高さを理解し「現場で汗をかく前にやるべきことがある!」と、大いなる反省をされたわけでした。

現場の優秀さと共に、現場管理者本来の仕事に気づいたわけですが、トップ・マネジャーをはじめ、さらに中間管理者からもDさんに対して「現場管理の基本と責務を研修して欲しい!」という要求となりました。

 

そこでD氏は、時間分析を関係者に願い行いつつ、管理者の仕事の仕方と、改善・指導を開始しました。

同時に、研修で学んだ内容を実施に移してもらったそうです。

なお、その内容は、

 

①責任は免れない

②部下育成と権限委譲

③製造現場の未来像を示し、P−D−Cの輪を回して達成へ向ける努力を進める

 

という内容を基本に、現場の方々の知恵と努力を結集する場をつくり、③に関する現状分析〜改善に参画願うという方式です。

要は現場改善を進める内容ですが作業時間がかかり、そのカバーに現場管理者が現場へ入って作業をする要因は、次の図に示したように、作業上、ムリ、ムダ、ムラがあるか? 太陽に当たる技術に問題があるととらえ、例えば太陽という技術向上を図るには、故障させない設備に改善する。

より有効な技術手段を管理者が勉強して、または、しかるべき方に勉強してもらって自社の技術として生かし切る、という対策を進める方策の実践です。

 

また現場応援という問題も、そのもとになる問題を対策して、このような局面に管理者は時間を割くべき、とした取り組みです。

手法の導入で、現場の状態と現場管理者の仕事の内容〜活動は大きく変化しました。

K社では、半年で改善力強化の結果、現場管理者による現場応援は皆無となり、原価低減は大きく進展、さらに管理者本来の仕事である部門間にまたがる問題の調整~対策、新製品の受け入れ対策、故障・不良ゼロ生産促進から部下育成まで、本来的に管理者が手を下すべき仕事に集中がなされ、5名いた現場管理者も残業無しで、中から2名を新事業業務に専従させることができたからでした。

更に、この内容が顧客にも評価され、注文が増えるという状況になったからです。

 

当然、従業員の方々は、この変化を歓迎して仕事をする状況でした。

事実、その後に同様のアンケートを取りましたが、前回のような中間管理者の仕事の仕方に対する不満は激減し「個々人の仕事のスキル向上をいかに進めるか?」という内容になっていったからです。

組みをきっかけに、更なる現場レベルアップを目指すため、中期改善工場体質改善計画の策定プロジェクト活動がスタートした点も特記すべき内容だと考えます。

現場関係者に生まれた余力を改善班という形で集め、①現場提案の早期実施、②新製品の受け入れ準備、③改善班の活動期間終了後、この部門経験者がローテーションする形で他の職場に配属され、多能化という形で仕事を進める、という形態が制度として運営されました。

 

また、日常作業をする方々に対しては、アウトプットを中心とした目標管理・人事評価制度の導入・運用を取り入れました。

その結果、過去、ムード的な人事評価から脱却し、仕事のプロセスと努力の結果をもとにして、個々人が目標を持って努力した結果を評価する仕組みとなったことも、この社の士気高揚に大きく役立っていきました。

この段階でD氏の指導は終了したわけですが、今もこの企業では管理者の仕事のレベルアップ対策が進展していることは、D氏の支援に加えK社の潜在能力とご努力による内容です。

コメント

K社でD氏が行った内容は、時間分析と「中間管理者の仕事は何か?」「アウトプットは何か?」という業務の見直しです。

私をはじめ企業を支援する者は、いろいろな企業から度々「やる気を起こすには?」という相談を受けます。

やる気だけを起こす研修が、産業界では今もカリスマ先生という方を中心に行われているようです。

 

時々、テレビなどで朝から河川敷に集まり「やるぞー!」と大声を出して走ったり。3泊4日の研修で、朝から晩まで起立〜礼を1日やらせる。

更には、部屋で社長の席に見立てた椅子を奪い合う……トイレの便器をただひたすら雑巾を手に持って掃除する……等の研修があります。

あまりにも異種宗教的なため、テレビではニュース性という興味から取り上げるようです。

 

しかし、実施した企業のその後を調査すると「この種の所作は一時的興奮を管理者の心に生じさせても、本来、企業で解決すべき問題解決につながらない」ということです。

単なる刺激策はあっても業務効率とは無関係な対処に過ぎない状況です。

産業が世界に生まれた初期の頃から、職場のやる気が無いのは「管理者が取り上げて対処すべき問題が放置され、夢の感じにくい職場環境になっているため」とされてきました。

 

そうなると、この種の横道対策ではなく、まず職場のあるべき姿を明確にし、関係者の方々はいろいろな局面から仕事の見直し(棚卸し)をすべきことが、職場の活性化の基本となります。

また、現場管理者の業務です。『迂を持って直となす』(一見迂回するように見えても、本道を進むこと)という内容が孫子の兵法にあります。

このような現場マネジメントの基本をベースに先の事例を見ると、D氏の例はまさにこの内容を実践した事例です。

 

現在、多くのトップ・マネジャーが発言するように「中間管理職の方々の仕事が企業を左右する時代である」とされます。

中間管理者の方々はトップ方針を受け、時代のトップの準備という責務も感じながら、持てる人、物、金、設備、情報を駆使し、限られた条件のもとでアウトプットの最大化を図るべきタスクを持っています。

各種の条件から、少数精鋭が企業の最大関心事となっている昨今、アウトプットを見て優良なアウトプット創出に直結したインプットを図る対策や、有効、かつ効率が高い問題解決・処理手段を中間管理者が自職場で追求すべきこと、また、このような実務を通して中間管理者自身のレベル向上を図るべきことは重要な対処です。

 

過去、勘と経験「ただ時間をかけて頑張っています! やがて成果が出るはずだ!」という取り組みは、時代が要求しない内容になっています。

また、この意味から中間管理者の方々には、まず自分の時間の使い方を見直し、効率化を図る一助として、D氏がK社で取り組んだ事例が参考になれば幸いです。

恐縮ですが、ここでもう一つ筆者体験談ですが、同種、自己時間分析法をもとに仕事の内容を革新された企業における、中間管理者の取り組みを紹介することにしたいと思います。

 

ある設備課長の方が仕事を分析した結果の発表より話を開始しますが、そのやり取りは次のような内容でした。

この企業はS社、300名ほどの従業員が働く企業ですが、1年ほど品質や設備故障〜作業性の改善支援を行う中で、第一線管理者の仕事が変化し将来へ向けた対策が必要になり、現場管理者の方々の全てが時間分析をすることになりました。

ここで、多忙な設備保全を担当するM氏の結果発表となったのですが、その発表はつぎのような内容でした。

 

「では、私の時間分析の結果を紹介します。時間分析を見ると、毎日、突発故障に追われていることがわかります。時間分析をして始めてわかりました。

毎日仕事をし、何か追われている状況でしたが、時間分析をしてみると意外な実態でした。

創造的な仕事のウエイトは低く、殆どが事後処理に追われている状況だったからです。

 

ついでに故障の対策内容を分析してみました。すると、解析が不十分なため、問題を繰り返す要素が多数含まれていました。

要は、追われる仕事のため、あまり深く故障の内容を解析しないで対策し、次の仕事へ移る。

そのようにして仕事を進めた結果、故障は真の原因を撲滅しないまま繰り返していたからでした。

 

日夜、故障に追われた会社生活を過ごしていただけだったのです! 研修で教えられた、忙しい=心+亡くす(忙しいという文字の意味)、心を亡くした状況で仕事がなされていたわけです。

これでは、私と部下の会社人生は、まさに追われっぱなし人生の連続です。予防保全などは夢のまた夢になりそうです。

そこで、私は方針を立てました。「再発故障ゼロ!」です。

 

この内容をベースに仕事の中身を見直し、部下を指導していこうと思います。そうしなければ、給与に見合った仕事になっていないからです。

時間分析で実態をつかむことは自分の仕事のやり方を見直す良い教訓になりました」拍手!

 

実は、筆者がこの設備課長のM氏の話を取り上げたのには、背景があります。彼が優秀な方であることは判っていました。

このような条件もあって、かつて時間分析を開始した時「設備課長の仕事は何か?」という本来機能の討論をM氏としたことがあります。

その時の討論はM氏が忙しいと言い、時間分析~管理業務改善指導会に出てこないので直接面接したわけですが、彼なりに時間分析はやっていました。

 

しかし、ほとんどが事後処理の繰り返しだったわけです。そこで、「これでは設備管理者としては給与返上だ!」と言ったわけですが「それなら中村さん、あなたなら設備管理・保全の仕事の比率をどうすべきか? 見本を示して下さい」とMさんは食って掛かるように筆者に言いました。

そこで、「設備課長の仕事が、もし50%が設備を改良したり、社内で固有の技術を駆使した設備の新作の努力、故障しない仕組みづくりに使われていれば仕事として認める! 後の50%の半分、25%が現場を廻り設備の点検やPMの指導とチェック、不具合箇所の発掘(事前予知、予防対策)の活動。

後の25%%がメンテの実務や部下指導、業者との折衝、1〜2%程度は突発故障の対策といった仕事をしていれば、給与に見合う仕事をしていると判断します!」と言ったところ、その設備のMさんは「市販の教科書に書いてある通りですね!」との応えが返って来た。

 

そこで私は「教科書に記載されている程度の事ができないで、他社との競争に勝てるわけがないでしょうが! 私はやってきたからこう言っているのです。

空理空論ではない! このままだとMさん、あなたの仕事は賽の河原積み状態であり、故障の再発の事後対策繰り返し人生ではありませんか? それであなたは満足ですか? 部下にお手本になりますか?」と言ったわけですが、「……」でした。

この2人だけの対話で、彼は仕事の進め方に思うところがあったようです。

 

私としては彼に気づきを持ってもらう最後の切り札という内容でした。

また、この会話には私の課長時代の実体験を話したことで、M設備課長の仕事への改善の理解が得られたようです。それでも、その時その時は、多少の不満はあった様子でした。

しかし、まずは彼の仕事の実態を再度見直し、先の発言をしたわけです。

 

Mさんの実力は目を見張るものがありました。

S社では、4ヶ月後には設備故障ゼロを達成、その後、12名いた部下の2名が協力会社へ出向して同種の対策を進めたからです。

さらに、10名の方々は自主保全の現場指導や設備改善業務へ移っていたからです。

 

今回、時間分析の結果を発表されたM設備課長、今回の発表の内容に止まらず、私の講義の中にあった「自己革新が必要!」「部下は上長の後ろ姿を見て育つ!」という指導内容にハッ! とされたそうです。

事後談ですが「このまま10年も、もしトラブル処理に追い回されていたら?」という指導内容と共に、今回のような業務改善に奮起されたわけでしたが、先に記載したように結果は見事な状況です。

なお、仕事の取り組みを変えたため、残業が一時的には増大したそうです。しかし、M氏には「再発ゼロが達成できれば、必ず減るという目算があった」と話されました。

 

さらに「信念を通すことが管理者の責務であり、その内容からは逃げられないと覚悟された行動が経営に貢献する結果を次々と生んだ」と話されましたが、今回の取り組みには「当然、趣味の会の活動も一時活動を中断され、設備故障の再発ゼロに集中した」ということでした。

筆者も「同じ方が考えと行動を変えると、結果と人がこうまで成長するものか?」と思ったわけです。

また、この例でわかることですが、中間管理者の仕事の仕方は正しい意識と共に、現状を冷静に見る目が大切であるように思います。

 

特に、中間管理者の場合、トップに優秀な方がつくと命令を実施するだけで、ことが進む例があります。

このケースの場合、この種の立場にいる方はあまりご自身の仕事の内容や評価に問題意識を持たず、命令を聞き、実施することで業務を全うしている気になってしまいます。管理仲介業者の役目だけでことが済むわけです。

しかし、この逆のケースがあります。

 

本人は力量がないが部下に優秀な方がいて、どのような課題も要求さえ出せば、文句を言わず右/左と裁く例です。

部下の努力で成果が出ているが。そのような管理者は、自分の管理技術が高いために成果が出ていると勘違いしてしまうケースです。

部下は「この上司は自分が支えていかなければ、お客様や仲間が困るので、仕方なく管理業務を請け負う!」としていて、上司が自分の仕事を進める障害にならないことだけを願い、まずい情報は一切流さないケースです。

 

このような場合、全ての仕事はスムーズに進むわけですから、中間管理者は不要! お飾りにすぎないということも気がつかないわけで
す。

この種の内容も時間分析をして、管理職のアウトプットとインプットの内容を分析すれば明確になるはずです。

ではここで、管理者の仕事をどのように評価するか? という内容にも簡単に触れることにします。

 

今、日本に求められる中間管理職の機能はプレイング・マネージャーです。

一般に中間管理者は6大能力(表現力、傾聴力、説得力、企画力、管理力、改善力)を駆使して、限られた範囲の中で、人、設備、金、時間、情報を駆使する仕事が要求される。

その対象は、Q(品質)、C(コスト)、D・T(納期、時間)、S(安全)、M(モラル)の価値を高効率で改善することとされています。

 

業種の差異はあっても、対象製品の状況が変わっても、この対象は動かない状況です。せいぜい相互のバランスが変化する程度です。

要は、少ないインプットで最大の効果(アウトプット)をあげることが中間管理者の実務ですが、マネジメント展開の差が出るわけです。

下図はある企業で行った管理者の仕事の仕方を例示したものです。ここでは「ゆとりを持つ行動」タイプの方をない方の職場へ配転
した結果、3倍以上も職場のアウトプットが変化したそうです。

管理の仕事のアウトプット向上には、6大能力を実務的に活用する視点を加える必要が追加されます。

この点については、日本にマンデル博士の視点が必要になります。博士は1970年の末、日本にIEを教えただけでなく、現場動と共に大きな視点を与えてくれた方です。

製造現場の生産性向上にあたる技術スタッフの方々を前に、優良大手企業の現場見学、特に「ここの生産性は私がお話した欧米一流企業の生産性とどの程度違うと思いますか?」という問いに対し、研修を受けた技術者達は「1.2倍~1.5倍程度では?」という応えに「4倍の生産性!」という内容をお話されました。

 

「その内容は4つの要素に関与します。

①方法改善面、②レイティングという国際ペース面、③稼働率面、③平準化生産の局面があります」と言い、事例をあげて解説されましたが、①の作業手順に対しては、WF法を使って現状時間と、現状のムダを示し75%、レイティングも事例を示し70%程度……と、JITと共に有名になった月末集中生産の回避必要性65%を示し、このかけ算で24%、すなわち、当時一流欧米企業といわれた企業との差を示し、今日見た日本の一流企業:欧米一流企業の差を1/4の生産性で示しました。

その後、日本の多くの関係者が努力した結果もあって、1980年後半には欧米をしのぐ生産性の達成に至ったことは有名な逸話です。

 

このように管理・間接部門の方々が、現状の問題に追い立てられるだけで日を過ごすのではなく、正しい物の見方を探査、研究して、技術や知恵の進歩にリンクする形で現場革新を図ることが大切であることが判ります。

では、今度は局面を管理・間接業務に移すことにします。ITが進む中で管理間接部門自体の仕事も効率化の対象となりました。

この点に関して1980年末に日本を訪れたマンデル博士の講演会で筆者が質問する機会を得ましたが、博士は、名古屋大学の熊谷教授と共に下に示した図のような解説をされました。

 

現在も、日本の間接部門の生産性がまだまだ低いデータが各所で紹介されています<例:2006年の(財)社会経済生産性本部発表データではOECD平均より低く30ヶ国の中で19位など、今も、このような視点からの改善が求められる現状です>。

上図には、事後処理業務ではなく、事前検討段階で問題を軽減することも重要な業務内容となるわけですが、同じようなテーマや仕事を担当しても、中間管理者の力量、程度の差により、アウトプットに差異が生じる点が力量の差になることがわかります。

また、このようなことに気づくならば、工場における中間管理者の責務を負う者は、特に自分自身を自己管理し、磨きをかけなければならないことになるはずです。

同じ業務をこなすのであれば、仕事の内容(アウトプット=質)と、それを得るまでの時間に注視することが重要になってきます。

 

時間を仕事の評価、レベルアップ評価のための道具として活用することにより、同じアウトプットを得るのであれば、効率をあげる勉強と努力をする必要があるわけです。

そして、スピードをあげて得た余力を活用して、さらに力量向上に努力するという取り組みが望まれます。

以上、ここまで示したように、中間管理職の方々は日常の仕事の評価を感覚的にするのではなく、ここまでに記載した内容を題材に、時間という、簡単だが効果的な道具を活用して実力を評価検討し、腕を磨くことが管理力強化には必要な要件となります。

 

また、その具体策の一例として参考になる取り組みですが、現場の方々は実力を評価する際、日報を書いています。

この地道な対処は、仕事の報告と同時に、仕事の内容・良否を判断しています。中間管理者も、これと似かよる方法を理想−現実=改善ギャップとして明示し、未来から現在を見下ろしながら力量向上に利用することは、日々の目標管理上、重要な対策のひとつです。

他に仕事の実力を計る手段がない限り、時間分析による仕事の評価・反省・検討方式は中間管理者の方々の力量とアウトプット評価に有効な手段です。

 

ここでA先生ご提案のゲームをやってみたいと思います。「アウトプットとなる中間管理者の仕事自体の実態は何であろうか?」というクイズです。

当て字拾いですが、これには管理の形を辞書で調べ“カンリ”なる文字を拾うと面白いことがわかります。

“カン+リ”に分けて文字を拾う方式を採ると次のようになるからです。

 

勘、感、缶、官、閑、患、肝、甘……100余程度の用語がある。

離、利、裏、狸……と16個ある。

これは一種の、全て『当て字ゲーム』です。

 

しかし、A先生によると「もし、勘+理屈の理を組み合わせると勘に頼り、理論ばかりを吐く“勘理者”となる。官+裏は“官僚的”な仕事の仕方をして、裏工作で体制を振り回す目的で動く官裏者である。

空き缶の缶+狸は、内容がない中身が空っぽだが形式は何とか保つタイプ、この種の方の特徴は、課題に対しノラリ、クラリと行動する。だから“缶狸者”という組み合わせとなる。

患者の肝+痢(赤痢)=“肝痢者”は管理能力がなく、問題を抱えて肝を毎日冷やしながら会社へ出勤して、病的に悩み暮らし問題解決ができないタイプです」とおっしゃったが、管理者の性格判断をイメージさせる局面が、このクイズの解になりそうです。

 

しかし、中間管理業務を担当する方々には、注意を払うべきご示唆だと思います。

更にA先生の説明は「このクイズは、一種のブラック・ユーモアです。しかし、注意すべきことは、陥ってはいけない管理者の形態を表している点にあります。

本来、管理者は利益を生むことに注力すべきです。人を育て、やる気+やる場+やる力をつけることが人を管理し、Q、C、D、S、Mを高めるというアウトプットが要求されています。

 

このように考えると、一つの管理者の見方として正しい観察力の観+利益創造の利に結びつく“観利者”としての行動が求められます。

あるいは、信念を貫(かん)き、正しい理論を実践に移して効果をあげる“貫理者”でも良い。

要は、アウトプットが管理者には期待されるわけであるから、同じような管理者が世の中にいたとしたら、絶対に負けない! 仕事の仕方をする。

 

そして、短期間にアウトプットを出す力量と努力、困難に立ち向かい自信と責任を持って仕事を進め、明日を開き、トップになったら部下にお手本を示すと同時に、信頼と尊敬に値する一流の仕事ができる人材になっていくことが、中間管理職には期待されているわけです」これはA先生の雑談から出たお話ですが参考になる見方だと思います。

脱線談が長くなり恐縮です。では、本論に戻します。

 

以上の事例と解析から判るように、管理者の仕事というものは目に見にくい内容という特質があります。

このため良否判定や改善の切り口を入れることが難しい対象です。したがって、この種のテーマに正面から立ち向かった問題解決手法を知って使うことは極めて重要です。

では具体的な例として、会議の効率化対策に関する手法を例示することにします。KT法です、この手法は、NASAが着手した意志決定の効率化対策に関する内容です。

 

NASではアポロ計画時に、ペンタゴンで意見がもめ、旧ソ連の宇宙開発に阻害となる事態が多かったそうです。

この課題に対し、故・ケネディ大統領は2名の学者をつけ、専門的に意志決定の効率化を研究する要請をしました。

社会学者と心理学者2名、ケプナー氏とトレゴー氏が選ばれ、任に当たったわけですが、いろいろ調べても判らない。

 

そこで、よく起きる課題を定めて著名人に判断願った結果、次に示すような意志決定プロセスと共に4つの意志決定方式が標準化されました。

このため、手法も開発者の両氏の氏名をとりKT法という名称がつけられたわけですが、この手法の応用でスムーズな決定がなされ、アポロ計画の促進が図れたことは有名な歴史です。

1990年代、KT法は日本でも盛んに活用されました。

 

また、間接効率向上に貢献した事例を創出しました。筆者もある職場で適用しましたが、その結果、100名いる開発・設計部門の人員を30名新分野へ移し、なおかつ、残りの方々がほとんど残業無しで仕事が進むようになった例が多数報告されました。

要は、仕事の中身と革新要件を解析していなかったため、この種の分析手法投入でこの効果が出たわけですが、この種の手法活用に驚異を感じました。

現在、ITの分野で目を見張る改善発表がなされます。

 

しかし、その要件を見ると、筆者が取り組んだ内容と似た解析がなされています。世の中には、開発や製造技術の面では仕事のプロですが『仕事の進め方』のプロ的な技術を併せ持った方はまだ少ない状況です。

この意味で、図の下に記載した内容も参考にしていただくことを願う次第です。

【意志決定の効率化に関与する項目の例】

(1)ごちゃごちゃした状況を上位の立場から見下ろし、ウエイトづけして対策を整理する方法

(2)要求を満たすために、アウトプット/インプット/処理/制約条件/処理手順といった用件と構成要素、必要な情報を収集分析し、企画書として提示する対処

(3)なにを、どこまで、どの程度進めるか? 実力と要求のレベルのギャップを明確にして、目標達成のための用件を分析、評価して、達成へ効率よく持ち込むストーリーを関係者の意見・参画条件と共に示す方式

(4)不良、故障の問題解決に当たって、勘と経験も大切ではあるが、プロと同等の問題解決手順を駆使して原因究明から対策実践を現場指導する方式。ここには、統計的な死亡診断書解析や机上の空論にならない方式の適用が必要なことは言うまでもない。想定原因が問題解決に多くのムダを作って行くことは読者の方々の嫌な経験談と共に、ご理解いただける方式の提出である

(5)事を進める上で、予想されるリスクを想定し、予防策と緊急時用の対策を策定し、問題を発生させない。発生しても極小の被害でくい止める解析、管理資料の提出

(6)ある課題に対して、企業内外の情報を集め、新規、的確、最妥当性のある案を提示する方式

(7)多くの案件を評価基準と差異を理論的に評価し、抽出案に対しては予想されるリスクを公開し、検討対策が図られている内容表現をする方式


昭和45年から平成2年まで、日立金属㈱にて、全社CIM構築、各工場レイアウト新設・改善プロジェクトリーダー、新製品開発パテントMAP手法開発に従事。うち3年は米国AAP St-Mary社に赴任する。平成2年、一般社団法人日本能率協会専任講師、TP賞審査委員を担当を歴任する。(有)QCD革新研究所を開設して活動(2016年有限会社はクローズ、業務はそのままQCD革新研究所へ移行)。 http://www.qcd.jp/