管理レベル

管理レベル

トヨタ生産方式の基本コンセプトは「徹底的なムダの排除」だ。

ムダとは最終的に在庫という形で、人の目に入ってくる。

この在庫があると、極論すると管理ができない。

アネーボーコントロールということだ。

 

現場の作業者任せになり、管理者は「管理」を行えない。

しかし現場作業者は、万能機能をもった人間なので、いろいろな判断を行ってモノづくりをやってくれる。

 

このような現場の管理者ほどみじめなものはない。

現場作業者のご機嫌をとるのが仕事であり、みずからには管理ツールがないのだ。

給料ドロボーとも言える。

 

ところがTPS理論に沿って、現場改善を進めていくと製品に流れが出来てくる。

そして生産リードタイムが最短になると、現場に不要な仕掛品在庫がなくなる。

こうなって初めて「管理」ができるようになる。

 

生産計画

適正要員配置

品質管理

 

現場に在庫が多くあると、生産計画すら立案出来ないのだ。

結局、この在庫は品質や安全にまで悪影響を及ぼす。

 

トヨタ本社工場OBとして、アジアやヨーロッパの企業に入り込んでみると、考えられないほどの在庫がある企業が多い。

そのような会社はトヨタでの改善手法がまったく入っていない。

 

ドイツの有名自動車会社も例外ではない。

このようなつくりでドイツ車がなぜこんなにも日本で高級イメージがあるのか理解に苦しむ。

よっぽど設計がいいのだろう。

しかし在庫がいっぱいあると、特に品質、原価に大きく影響し、それはすべて消費者が負担しなければならない。

 

ものづくりの改善の遅れは、いろいろなものの管理にも関連すると思う。

例えば、原子力発電所の管理なんか大丈夫だろうかと心配になる。

また多くの国が、核ミサイルを仮想敵国に向けて配備しているが、その管理も本当に心配になる。

もしムダな部分が多くて、きちっと管理者が管理していなくて、誤ってボタンを押しちゃった、では済まされない。

 

軍や原発の管理も、一度トヨタに見てもらった方がいいのではないだろうか。

冗談のようだが、ドイツ車でさえこの程度の管理レベルかと考えると、まんざら冗談でもなくなる。

 

例えば、もし軍の管理(弾薬・食料等の輸送など)にムダがあったら、敵と戦っても勝てないだろう。

弾薬や食料がスムーズに運搬出来なければ、負けちゃうよねえ。


豊田生産コンサルティング株式会社代表取締役社長◎略歴 昭和30年(1955) 愛知県豊橋市生まれ 昭和53年(1978) 早稲田大学商学部卒業トヨタ自動車工業株式会社(現トヨタ自動車)入社 平成16年(2004) トヨタの基幹職チャレンジ・キャリヤ制度(他社への転出支援制度)によりトヨタを退職(退職時資格は課長級) オーエスジー株式会社オーエスジープロダクションシステム推進本部副本部長就任 消耗性工具(ドリル・タップ・エンドミル)専門メーカーで自動車関連以外の業種の現場改善活動に従事。 平成19年(2007) 豊田生産コンサルティング株式会社設立◎トヨタでの職歴(26年)人事部人事課海外関係人事 3年/財務部経理課輸出入経理、国内債権債務管理 3年/本社工場工務部原価グループ鍛造工場能率・製造予算管理、工場棚卸総括 3年/本社工場工務部生産管理室車体・塗装・組立工場生産管理 4年/米州事業部原価企画グループ北米事業体原価管理、北米生産車原価企画 3年/田原工場工務部原価グループ成形工場能率・製造予算管理、トヨタ生産方式部課長自主研 2年/田原工場工務部生産管理室エンジン・鋳物工場生産管理、トヨタ生産方式部課長自主研 8年◎本社部門(人事・財務・原価企画)9年、工場部門(本社工場・田原工場)17年と本社機能、工場機能のそれぞれを幅広く経験。特に工場では生産管理と原価管理という「石垣」づくりとトヨタ生産方式自主研メンバーとして「天守閣」づくりの両方に長年従事。