研究開発現場マネジメントの羅針盤「仕事の質を見極めて、仕事をしていますか?」
今回は、受託型の開発、技術者の派遣、専門技術のサービス、技術コンサルティングなどの売上げ責任のある(プロフィットセンターの位置づけにある)職場のマネジメントを取り上げます。
明確にプロフィットセンターと位置づけられ、一人月単価(一人当たり1ヵ月の価格)が100万とか300万円とか設定されている職場を想定しています。
このような職場は、R&D投資として捉えられる研究開発職場とは異なり、しかるべき売上げを上げる責任があります。
売上げ達成責任がマネジャーにも個人にもあるので、人を遊ばせておくわけにはいかず、何か売上げにつながる仕事があれば、少々経験量が少なくても人をアサインすることがあります。
難しい局面に投入されることで人が伸びるものです。
経験知が少ないからといって、チャレンジさせずにいると、なかなか人が育ちません。
周りがサポートしつつ、本人が主体的に、より高い売上げの仕事にチャレンジするのはとても重要なことだと考えます。自分の働きで直接的に売上げが上がるので、事業貢献を実感できる構図です。
このような組織で見られる問題のひとつとして、売上げ以外の要素が考慮されにくくなるということがあります。
本コラムの第4回(マネジャーは人工管理でなく人材育成を意識すべき)でも書きましたが、このような職場では人工管理をすることがマネジャーの仕事だと勘違いする人が出てきます。
稼ぎの量(売上高)と稼ぎの質(仕事の質)はいつも比例するとは限らない
売上げは、金額という非常にわかりやすい物差しで見ることができるので、良し悪しの判断が誰にでもつきます。
もっと言えば、機械的に判断できます。
ただ、仕事は売上げの高低の軸だけで、良し悪しを判断できるものではありません。
何をもって仕事の質(Quality of Earning)の良し悪しを判断するかの判断基準はそれぞれだと思いますが、ただ売上げ高とは異なる質の側面があることは理解いただけると思います。
この仕事の質の側面は、機械的に判断はできません。仕事を担う人間およびマネジャーが判断するべきことです。
仕事の中には、売上げが高いものの、自部門のミッションやその個人の成長や職務満足度などの“質”の側面では高くないものがあったりします。
「あまり魅力的な仕事ではないけど、売上げになるから、やってよ」という感じで依頼されるタイプの仕事です。
現実にはそういう仕事をしなければいけないときもありますが、問題はそういった仕事が多くなってしまうことです。
仕事の判断基準が、売上高という計りやすい側面に偏重してしまい、仕事の質の良し悪しをどう判断すればいいかが、わからなくなってしまっている人がいたりします。
売上げが高くなくても(場合によっては売上げにならなくても)、今後に向けて重要な仕事があるはずです。
そういう判断をして、売上げ高の側面では劣る仕事でも、質がよければ積極的に取り組むように促すことがマネジャーの重要な役割です。
「仕事の質の良し悪しをどう見ていいのかわからない」シンドローム
ところが実際には、この質の判断を放棄して(あるいは判断ができず)、売上げ高の側面だけで仕事のアサインを決め、人事評価するマネジャーがいたりします。
「もっと売上げの大きい仕事をしてよ」ということしか言えないマネジャーです。
そんなことは、言わなくも皆わかっています。
プロフィットセンターには、偏西風のようにいつも「売上げを上げよう」という風が吹いているものです(風の強弱はいろいろでしょうが……)。
マネジャーはその偏西風と同じ方向の風を吹かせるのが役割ではありません。偏西風とは異なる軸の風を吹かせるのがマネジャーの仕事です。
「売上げは低いかもしれないが、将来に向けて重要な仕事だから、これをやろう」ということを諭していくことこそが、判断力あるマネジャーの責務です。「今さえよければいい」「当面、食いはぐれなければいい」という発想ではダメなのです。
今後減らしたい仕事は何か、増やしたい仕事は何か、その方針を議論すること
マネジメントの重要な仕事のひとつが、日々の仕事に追われるまま流されるままに、ふってきた仕事をこなすのではなく、あらためてどういう仕事を重視していくべきかの議論をする場を持つことです。
自分たちに仕事の選択権はあるということを自覚すること、文字どおり”自律”することが大切です。そのために、ときどき自分たちの仕事についてのビジョンを語り合うような場を持つように”しかける”ことがマネジャーのなすべきことだと思います。
あなたの職場は、そのような場・機会がありますか?