異質な価値観を生かせるコミュニケーション力を磨く

異質な価値観を生かせるコミュニケーション力を磨く

異質な文化や価値観を自社工場へ生かすことが今後、確実に求められ、これを前提としてコミュニケーション力を磨く、という話です。

1.外国人から見た日本の働き方、ここがNO

『日本経済新聞』2016年3月22日に、日本で働く外国人の日本の働き方への意見が掲載されていました。

外国人の目から見て日本の働き方で良いと思うこと、悪いと思うことを尋ねています。

国籍も年齢も職種もバラバラの4名の外国人の方が登場していますが、大変興味深いことに、“ここがYESと感じているトコロ”は同じようなことを指摘していました。

 

チームワークに優れていること、パートナーの立場を考えていること。

日本人の気質に加えて、経営者の方が現場の力を引き出そうとする仕組みづくりを意識している結果です。外国人から見て、日本の働き方で良いと思うことは分かりました。

では、悪いと思うことは?

 

日本精工経営企画本部ディラン・シード氏(32歳 ニュージーランド)

「英語力以前にコミュニケーションに問題あり。

日本では部下へ指示すれば通るが、海外の人は納得しない。」

 

NECクラウドシステム研究所チャキ・プラカシュ氏(28歳 インド)

「外国人の同僚ともっと積極的にコミュニケーションを取ってもらえるとうれしい。」

 

日本マイクロソフト業務執行役員ショーン・チュウ氏(49歳 台湾)

「“仕事のやり方はこうあるべきだ”という価値観を部下に押し付けがち。

性的小数者(LGBT)への理解もすくない。」

 

すかいらーくグループ・ガスト厨房担当劉夢達氏(24歳 中国)

「サラリーマンが真夏でも毎日スーツを着て電車で通勤するところ。

中国では真夏にスーツを着る人はほとんどいない。」

 

(出典:『日本経済新聞』2016年3月22日)

2.コミュニケーション能力を磨く方向性

中国出身の劉さんのお仕事の関係もあってか、他の方とは少々異なる視点です。

クールビズがかなり定着したような気はしますが……。

それでも外国の方から見れば異様なのでしょう。

 

自分がどのように外部から見られているかは絶対に自分ではわかりません。

さりげない指摘ですが、そんなことを改めて思い起こします。

さて他の3名の方の意見をみると……。これまた、共通点が見られます。

 

業務を進める上で基本となるコミュニケーションに課題があります。

日常での業務を通じて強く感じるていることと推測できます。

上司と部下とのコミュニケーション。同僚同士とのコミュニケーション。この2つです。

 

前者では主に上司から部下への業務上の指示の仕方。

これは、外国の方に指摘を受ける以前に、日本人同士であっても同様な問題は多々指摘されています。

同僚同士のコミュニケーションでは、互いの壁は時間が解決してくれるところもあります。基本的に現場の仲間同士です。

 

ここで問題視したいのは、外国の方から指摘されるまでもなく、上司と部下とのコミュニケーション、特に上司から部下への指示です。

なぜ、ニュージーランドのシード氏や台湾のチュウ氏のような指摘が出るのでしょう?

このような状態に至ってしまう原因を特定することで、コミュニケーション能力を磨く方向性が見えてきます。

 

20年近く大手企業の工場で仕事をする経験を積んだ後、事情で中小製造業へ数回転職する機会を得ました。

どこの現場も一生懸命で、モノづくりに携わる現場の気質は会社の規模に関係ないなぁ、と感じていました。

その一方で、上司からの指示には企業ごとに大きな違い、特徴がありました。

 

突き詰めると指示をする上司には対照的な2つのタイプに整理されます。

・部下(つまり、ここでは私)は、自分(つまり上司)と同じことを知っており、価値観も同じである、と考えているタイプ

・部下は、自分よりも知らないことが多く、価値観も異なる、と考えているタイプ

 

後者のタイプの上司は、転職してきたこの男はどんな考え方を持っているのだろう、と探ろうとする雰囲気を感じました。

一方で、前者のタイプでは、異なる価値観の存在自体に全く気が付かない風でした。

“自分の経験”によれば部下はかくあるべきと考える。判断基準が、“自らの経験”です。

 

前者のタイプの場合、その組織と異なる経験を積んできた人財は力を発揮し難い。

いきおい、その組織のやり方に合わさざるを得ない。

逆に言うと、その組織は外部からの異質な価値観を生かす機会を失っています。

4.部下は自分とは異なる他人であると考える

管理者や上司は、まず、部下は自分とは異なる他人であると考える。

当たり前すぎますが、頭で分かっていても、指示のやり方がそうなっていない方も多い。そのために外国人の方からも指摘を受ける。

異なるっていることを踏まえれば、コミュニケーションのやり方が変わります。

 

そして、異なることに注目して、それを生かす姿勢(余裕)も生まれる。

部下は異なる、あるいは同僚でも他人は異なる、という認識を持つこと。これがコミュニケーション能力を磨く方向性です。

コミュニケーションの目的は相手の能力を引き出す(生かす)ことにあるからです。

 

少子化、人口減少で新卒のみでは必要な人財を確保できないケースが今後増えます。

ですから、中途採用者や場合によっては外国人技術者を採用する必要があります。

異質な文化や価値観を自社工場へ生かすことが、今後、確実に求められます。対応できるよう、組織としての訓練が必要です。

まとめ

異質な文化や価値観を自社工場へ生かすことが今後、確実に求められ、これを前提としてコミュニケーション力を磨く。

出典:株式会社 工場経営研究所 伊藤哉技術士事務所

 


製造業専門の工場経営コンサルタント。金属工学の専門家で製造/生産技術、生産管理、IEにも詳しい。エンジニアの視点で課題を設定して結果を出し、工場で儲ける仕組みを定着させることを得意とする。コア技術の見極めに重点を置いている。 大手特殊鋼メーカーで20年近く、一貫して工場勤務。その間、エンジニア、管理者としての腕を磨く。売上高数十億円規模の新規事業の柱となる新技術、新製品開発を主導し成功させる。技術開発の集大成として多数の特許を取得した。 その後、家族の事情で転職し、6年間にわたり複数の中小ものづくり現場の管理者を実地で経験した。 大手企業と中小現場の違いを肌で理解しているのが強み、人財育成の重要性も強調する技術系コンサルタントである。 技術立国日本と地域のために、前向きで活力ある中小製造企業を増やしたいとの一念で、中小製造業専門の指導機関・株式会社工場経営研究所を設立。現在、同社代表取締役社長。1964年生まれ、名古屋大学大学院工学研究科前期課程修了。技術士(金属部門)