異業種の工場見学の有効性|元トヨタマンの目

異業種の工場見学の有効性|元トヨタマンの目

世間には、他の会社を見学して、新しい合理化された方法を見学して、それを自分の工場の似たような仕事に応用して成果を上げると、大いに満足するものである。

だたし、この場合は、表面的な、know howのみをつかんだのであるため、まったく同じか、または同じような仕事にしか適用できないことになる。

ところが、もし、業種が違ったり、全然仕事の内容がちがうときには、まったく適用できないであろう。

ところが、表面的に違っていても、その改善の本質的な意義がよく理解されていて、いわゆるknow why?が分かっていれば、やり方の外見は違っていても改善に結び付けることができる。

 

ある木工工場の工場長は、従来は、何としても同業種の工場を見学しようと努力していたが、そういう会社は見学を拒否してなかなか見学をさせてくれないので困っていた。

ある人が彼に次のようにアドバイスした。

「それは、あなたが簡単にまねられるknow howのみにこだわっているからいけないんですよ。むしろ異なった業種の工場に行ってknow why?をつかんでくればいいのですよ」

このアドバイスを受け、木工工場の工場長は、方向を転換して、金属関係の工場を見学するようにしたところ、予想以上に改善のヒントがあって、従来の木工業界にはなかったような画期的な改善ができた。

 

世の中の生産というものは、外見的に見れば千差万別である。

しかし、外見的な成品の外観ではなく「作り方」という面から観察すれば、極めて限定された少種の要素作業から成り立っている。

ゆえに、この立場から見れば高い類似性が存在しており、この立場で適用すれば、多くの応用ができるものである。

– 新郷重夫「生産管理の革命と工程機能の改善」日本能率協会刊、より抜粋

 

P.S.

私もトヨタという自動車工場の、鋳物、鍛造、プレス、溶接、機械加工、プラスチック成形、塗装、ユニット組付、自動車組立などの工程を勉強した。

そのすべての工程にトヨタ生産方式が適用されているのを目の当たりにした。

ゆえに、トヨタ生産方式こそknow why?の集積ではないかと考えている。

このトヨタ生産方式があるからこそ、私はどんなクライアントの工場にも入っていける。

世界のトヨタの評価は地に落ちてしまったが、トヨタ生産方式を知れば知るほど、私の中では燦然とその輝きが増している。


豊田生産コンサルティング株式会社代表取締役社長◎略歴 昭和30年(1955) 愛知県豊橋市生まれ 昭和53年(1978) 早稲田大学商学部卒業トヨタ自動車工業株式会社(現トヨタ自動車)入社 平成16年(2004) トヨタの基幹職チャレンジ・キャリヤ制度(他社への転出支援制度)によりトヨタを退職(退職時資格は課長級) オーエスジー株式会社オーエスジープロダクションシステム推進本部副本部長就任 消耗性工具(ドリル・タップ・エンドミル)専門メーカーで自動車関連以外の業種の現場改善活動に従事。 平成19年(2007) 豊田生産コンサルティング株式会社設立◎トヨタでの職歴(26年)人事部人事課海外関係人事 3年/財務部経理課輸出入経理、国内債権債務管理 3年/本社工場工務部原価グループ鍛造工場能率・製造予算管理、工場棚卸総括 3年/本社工場工務部生産管理室車体・塗装・組立工場生産管理 4年/米州事業部原価企画グループ北米事業体原価管理、北米生産車原価企画 3年/田原工場工務部原価グループ成形工場能率・製造予算管理、トヨタ生産方式部課長自主研 2年/田原工場工務部生産管理室エンジン・鋳物工場生産管理、トヨタ生産方式部課長自主研 8年◎本社部門(人事・財務・原価企画)9年、工場部門(本社工場・田原工場)17年と本社機能、工場機能のそれぞれを幅広く経験。特に工場では生産管理と原価管理という「石垣」づくりとトヨタ生産方式自主研メンバーとして「天守閣」づくりの両方に長年従事。