現場の連携力と自律性を高める
現場の自律性や連携力を高めていますか?
1.「YATAI方式」
三菱重工グループの三菱重工サーマルシステムズ(本社東京)は、タイにある合弁企業で、既存2工場の設備を補強し、第3工場および電装工場を新設しました。
その合弁企業では家庭用・工業用エアコンの生産・販売を手掛けています。
近年、エアコンは世界的に省エネ機の需要が高まっていますが、新興国メーカーが低価格を武器に市場へ攻勢をかけている状況です。
加えて複雑化する環境規制への対応によって機種の多様性が拡大しつつあります。
同社のタイにある合弁企業(MACO社)も例外ではありません。
2007年対比で、生産台数が1.8倍、機種数が2.4倍に拡大しており、多品種少量生産が求められています。
MACO社では多品種少量化が進む中で価格競争に勝たねばなりません。
コスト競争力を高める必要に迫られています。
同社ではいろいろな手を打っているようです。
(出典:日経ものづくり2018年3月号)
同社では、「YATAI方式」と呼ばれる生産方式を活用しています。
キーワードは2つです。
最寄化と見える化。
2.最寄化
最寄化とは、前工程を、1人が担当している最終組立工程に隣接させて配置することです。
運搬作業と仕掛品の最小化、生産リードタイム短縮に貢献できます。
物理的な距離を縮めることは、現場の連携を促す上でも欠かせない論点です。
トヨタ生産方式では、「離れ小島をつくるな」と言われますが、あらゆる工程を接近させ、隣接させてつなげばムダはなくなります。
儲かる工場経営の要諦は「生産の流れ」をつくることにあり、理想形は一気通貫のモノづくりです。
単品ならイメージしやすい、この一気通貫を、多品種少量生産で展開するところに、経営者の腕の見せ所があり、現場の知恵が欠かせません。
多品種だけれども、製品はスムーズに、ドンドン流す…………、では、どうすればいいか?
離れ小島をつくらない、工程と工程を隣接させる、接近させる、“一衣帯水”の発想です。
工程統合をすれば、工程分析4要素のうちの価値を生まない「運搬」と「停滞」の工程が減ります。
“一衣帯水”の発想は工程統合の発想に基づきます。
住居でも、「お隣さん」は気になるものです。
できれば良い付き合いをして、快適な生活を送りたいと考えるのは、自然なことではないでしょうか?
「一衣帯水」では、工程と工程が物理的に「近い」こと自体に意味があるのです。
現場のチームオペレーションを促し、連携力を高めます。
3.見える化
さらに、同社の見える化では、仕掛品の状況、生産の計画数と実績数、品質の推移、従業員のスキルなどの最新状況がすぐに把握できるようになっています。
情報を現場へ知らせることで、自律性が確実に高まります。
自分たちの仕事を数値で評価され、目標が設定させると頑張りたくなるのが現場です。
判断の術を持でば、創造性が刺激されます。
同社の競争力は内製化率の高さにも表れています。
同社で製造する熱交換器や制御ユニットなどの主要部品の内製化率は50%以上とのこと。
同社は内製化にこだわっています。
内製化すれば倉庫に保管している部品のピックアップから中間組立、最終組立までを同期させやすくなるからです。
生産の流れをコントロールすべき対象部品を少しでも多く手の内に置けばそれができます。
外製部品が多いと、外部業者との擦り合わせが必要となり、余分が工数を掛けなければなりません。
そして、その内製部品を活用した工程間の同期化を可能にしているのが、見える化なのです。
現場の状況がすぐに把握できるから同期させられます。
見える化で現場に届く各種情報は運動会の綱引き競技における旗振り役を担っているのです。
情報という“旗”を合図に、自律性をもって、的確に仕事を進める同社の現場の様子が目に浮かびます。
4.現場を見渡す
最寄化と見える化。
中小製造現場でも大いに展開すべき項目です。
やろうと思えば、大きなお金をかけず、知恵を生かして検証できます。
現場を見渡してください。
離れて設置されている加工機のレイアウトを変更し、一方の加工機を他方へ接近させ、並べて稼働させてみませんか。
同期化の工夫は必要ですが、製品の流れがスムーズになることを実感できないでしょうか。
現場の作業者が集まる休憩所に小さなホワイトボードを設置して、日々の生産目標値と実績値を記入し続けてみませんか。
その数値を気にし始める作業者が1人、2人と出てこないでしょうか。
そこへ、経営者としての皆さんのコメントを合わせて記入するとより効果的です。
MACO社が実践している2つのキーワード。
・最寄化
・見える化
小さく始められます。
皆さんの現場でも小さく始めて下さい。
最寄化、見える化を進める仕組みをつくりませんか?
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