現場の自主性と主体性

現場の自主性と主体性

大手も現場活動で儲けているのを知っていますか?

1.ソニーの現場活動

弊社は生産性向上と人材育成の仕組みづくりのご支援をしています。

具体的な成果物は下記です。

“改善活動を現場へ定着させること”

 

高度化、複雑化するモノづくりの業界で儲かる工場経営に欠かせないのは、現場の自主性や主体性です。

これは昔も今も変わりません。

生産性を高める道具としてIOTをはじめ各種ICTが現場へ導入される今後の製造現場でも変わらない普遍的なことであると考えています。

 

伊藤には技術開発プロジェクトを主導した経験がありますが、あらゆる技術は、スタッフと現場間の連携、現場同士の連携から生まれた知恵で支えられていました。

ですから、技術イノベーションでも、現場改革でも、それをやりきるには、現場の自主性や主体性に基づく“やる気”が求められるのです。

これ抜きに“連携”はあり得ません。

そして、現場の自主性を具体化した活動が改善活動でした。

 

2018年8月22日付の日本経済新聞ではソニーの改善活動が取り上げられていました。

“ソニー、不良率減らし出荷拡大、「アイボ」生産現場も進化中”

 

ソニーは12年ぶりに犬型家庭用ロボット「アイボ」の販売を復活させました。

前年の2017年11月からサイトで予約を受け付けましたが、アクセスが殺到しつながりにく状況になるほどだったようです。

製造現場には増産体制の確立が求められました。

 

しかし、生産開始後、受注に生産が追い付かない状況が続きました。

品質検査で一定品品質をクリアできないアイボが多数はじかれ、修理に回ったからです。

 

直工率に問題がありました。

そのため、生産開始当初は、抽選販売を取らざるを得なかったようです。

 

しかし、地道に直工率を高める取り組みをした結果、数量確保に成功、7月下旬からは、希望者全員が購入できる予約販売へ切り替えました。

これを実現させたのは愛知県幸田町の工場の現場活動。

直工率を高めるのに幸田町の工場で何がおこなわれていたのか……。

 

通常の電気製品は試作段階で問題を解決するのが一般的。

だが、アイボの場合は担当者ら十数人でテーブルを囲み改善点を探す「工程会議」が量産が始まってから数か月たった春先まで続いた。

エクセルには数百にのぼる課題が書き込まれた。

歩留まり改善で重視した人のミスをどうなくすかという点。

量産開始時には熟練作業者をアイボの生産に配置した。(中略)

だが、「ミスで検査落ちするアイボもあった」

そこで、組み立て時に使う治具をいくつも自作し、ケーブルを巻き付ける工程などに採用。

ミスが発生しやすい作業を徹底して減らした。

組み立てにくい部品の場合、発売後でも形状を変えた。

(出展:2018年8月22日 日本経済新聞)

 

“改善活動”です。

問題を解決するのに、現場メンバーがPDCAを回し続けた“だけ”です。

奇をてらった特別なことでもなんでもなく、関係者が顔を突き合わせて議論しながら、問題をひとつずつつぶしていった“だけ”です。

 

さらに、次のような改善活動も展開しています。

工程自体の見直しも進めた。

アイボは間接部分などが26か所に液状の潤滑剤を塗る。

当時は組み立て工程でそれぞれの作業員が筆で塗り付けていたが、アイボの「く体」表面へ漏れが目立った。

作業を1人に集約し、塗ってから各工程に部品を渡すようにした。

(出展:2018年8月22日 日本経済新聞)

工程管理の手順計画のうちの工程設計の見直しです。

具体的には工程分割。

 

ソニーには組織的、継続的に問題を解決する現場がありました。

経営者の号令一下、現場が自主的に取り組まなければ、こうした成果を得ることはできません。

現場の細かい事情は現場にしかわからないからです。

大手の大手たる所以は、自主性、主体性の基づく改善活動が現場に定着していることにあります。

 

大手がすごいのは、規模が大きいからでもなんでもなく、現場が自主的に連携して、継続的に仕事を進める仕事のやり方を知っていることにあるのです。

さらに言うと、改善活動の原動力となる現場の自主性を生み出す組織風土、組織文化があることです。

 

“真面目なる技術者の技能を、最高度に発揮せしむべき自由闊達にして愉快なる理想工場の建設”

これは、1946年(昭和21年)1月、ソニーの創業者のひとり、井深 大が起草した「東京通信工業株式会社設立趣意書」の一節です。

改善活動を現場へ定着させるための自主性や主体性

繰り返し申し上げていますが、工場経営の本質は他人を通じて経営者の想いを実現することにあるので、“他人”に動いてもらわないと話が始まらないのが工場経営です。

それも、“自主的”、“主体的”にです。

言われてからでないと動かない現場では儲かりません。

 

しかしながら、多くの経営者は、改善活動を現場へ定着させることは決して簡単なテーマではないことを知っています。

なぜなら、前述したように、組織風土や組織文化にも通じるテーマだからです。

 

簡単ではないですが、こうした活動が定着してこそ、経営者は今を現場に任せて、将来の仕事に専念できます。

“改善活動を現場へ定着させる”ことの目的は、生産性を高めて現場からお金を生み出す仕組みをつくることであり、そうした活動を通じて人を、特に若手を育てる仕組みをつくることです。

ですから、この2つの仕組みを手にした経営者は5年先、10年先の見通しを具現化する武器を手にできます。

 

大変であっても定着させたいのです。

弊社が“改善活動を現場へ定着させること”を重視するゆえんです。

 

弊社のプログラムでは、3つのステップで改善活動を現場へ定着させていきます。

一体化→見える化→収益化。

生産管理の手法で論理的にアプローチしながら、経営者といっしょに現場を動かす仕組みを構築します。

 

活動の主役は現場(人)であり、その現場のやる気を引き出さない限り、現場の行動が自主的、主体的になることは決してありません。

ですから、一筋縄ではいかないものです。

段階を踏み、手順を踏み、3歩進んで2歩下がりながら、地道に取り組み、現場改革の一歩目を踏み出します。

 

改善活動はいわゆる小集団活動であり、現場が自らの意思で展開する活動です。

「やらされ感」があっては成果は得られません。

 

現場の納得感もなければ、活動自体が形骸化するのは火を見るより明らかです。

継続的、組織的であることが改善活動の基本ですから、自主性や主体性は欠かせない要因となります。

3.現場の自主性や主体性を醸成する環境整備

ですから、経営者がやるべきことは、現場の自主性や主体性を醸成する環境整備です。

これは経営者にしかできない仕事であり、これ抜きに、“さぁ、改善活動を始めよう!”と現場へ宣言したところで、現場は余計な仕事が増えたとしか考えません。

 

ですから、現場自身が、「このままではまずい、仕事のやり方や仕組みを変えないとダメだ」と思い、行動する環境を整備することです。

そのためには……。

1)自分の会社は将来、何を目指しているのか?

2)自分の職場は現状どうなっているのか?

3)目指している状態と現状のギャップはどれくらいあるのか?

4)そのギャップを埋めるために自分は何をすべきか?

これらの観点を持たせる環境の整備がキモのひとつに挙げられます。

 

詳しくはセミナーでご説明していますが、現場に活気があるかどうかは、現場リーダー次第です。

そして、活気がある現場のリーダー役は総じて上記の重要性を理解しています。

あるいは、そうしたことを知りたいと!!いつも考えています。

なぜなら、そうした現場のリーダーは自分の役割を理解しているからです。

 

逆に言うと、活気がない現場のリーダーは上記を理解できていないですし、そもそも知ろうとしません。

関心の的が“納期遵守”のみだからです。

さらに会社の将来に希望を見いだせないからです。

見えすぎても、見えなくても、現場のやる気は引き出せません。

 

現場をどうのこういう前に、そういう状況に至る環境が整備されていなかったということです。

現場に自主性や主体性がないと嘆いている経営者に振り返っていただきたいのは、現場の自主性や主体性を醸成する環境整備の有無です。

 

具体的には、上記4つの観点を持たせる仕組みがあるかどうかです。

現場リーダー役の仕事ぶりを確認して下さい。

 

工場診断の着目点のひとつに現場リーダーの仕事ぶりがあります。

ご相談を受けるクライアント企業様の現場の多くのリーダー役の皆さんは意欲的です。

 

現場に多くの問題を抱えていても、やる気のやるリーダーはさすがに経営者の右腕役の役回りをするだけの熱意を持った人材であり、機会があれば、なんでも挑戦してみようという方が多いです。

そもそも、外部に相談してでも問題を解決したいと考える経営者あるいは経営幹部は、問題点をしっかり問題点として受け止めて、挑戦しようという方が多いわけですから、そうした上層部の姿を見て育つ現場リーダーも多くの場合、同じに育つのではないでしょうか?

門前の小僧、習わぬ経を読む。

 

大手がすごいのはその規模ではなく、現場の自主性、主体性が組織風土や組織文化として浸透しており、仕事のやり方として改善活動ができることにあるのです。

先の事例であげたソニーも創業時点では20人程度からのスタートでした。

今は大手であっても、創業当時は中小であり、何もないところから始まったのは皆同じです。

 

そこから長年の仕事のやり方を積み重ねてきた結果、今に至ったわけです。

現在は過去の結果であり、将来はこれからの取り組み次第です。

 

本来製造現場にあるべき活動が無いことに気が付いた、その時から経営者の挑戦が始まります。

現場の自主性や主体性を醸成する環境整備からです。

 

現場改革に着手し、5年先、10年先を見据えて改善活動を定着させませんか?

 

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製造業専門の工場経営コンサルタント。金属工学の専門家で製造/生産技術、生産管理、IEにも詳しい。エンジニアの視点で課題を設定して結果を出し、工場で儲ける仕組みを定着させることを得意とする。コア技術の見極めに重点を置いている。 大手特殊鋼メーカーで20年近く、一貫して工場勤務。その間、エンジニア、管理者としての腕を磨く。売上高数十億円規模の新規事業の柱となる新技術、新製品開発を主導し成功させる。技術開発の集大成として多数の特許を取得した。 その後、家族の事情で転職し、6年間にわたり複数の中小ものづくり現場の管理者を実地で経験した。 大手企業と中小現場の違いを肌で理解しているのが強み、人財育成の重要性も強調する技術系コンサルタントである。 技術立国日本と地域のために、前向きで活力ある中小製造企業を増やしたいとの一念で、中小製造業専門の指導機関・株式会社工場経営研究所を設立。現在、同社代表取締役社長。1964年生まれ、名古屋大学大学院工学研究科前期課程修了。技術士(金属部門)