現場の“意欲”を管理する前にやるべきことがある

現場の“意欲”を管理する前にやるべきことがある

現場管理で「意欲」を管理したいのなら、その前に評価とフォローの体制をつくる、という話です。

 

現場管理の7つの項目をご存知ですか?

そのなかのひとつである「意欲」の管理をどのようにやっていますか?

1.生産管理の役割

生産管理の目標は最小コストで生産することです。

変動費を最小化して付加価値を最大化する。そうして利益を積み上げるのです。

 

生産管理は次のように定義されています。

 

「所定の品質(Q)・原価(C)・数量(D)および納期で生産するために、又Q・C・Cに関する最適化を図るため、人、物、金、情報を駆使して需要予測、生産計画、生産実施、生産統制をおこなう手続き及びその活動」

(社団法人日本経営工学会編 生産管理用語辞典)

 

ここでも、同様な趣旨が説明されています。QCDに関する最適化を図るために……。つまり最低コストです。

ですから生産管理は儲かる工場経営を実践する手段です。付加価値を生み出して利益を積み上げます。

 

さらに、「所定」のQCDのための活動であるとも説明されています。

ですから事前に目指すべきQCDが設定されていなければなりません。

 

実績と比較する数値が必要なのです。実績と比較する数値、基準があってこそ異常状態を発見できます。

異常状態を放置したままでは、最低コストは実現できません。

ですから、付加価値を生み出す意識が乏しい生産管理は役割を果たしません。

そうした場合、単に生産指示を現場へ伝達しているにすぎないのです。

 

2.PQCDSM

人、物、金、情報(方法)は通常4Mと呼ばれています。

ですから4Mをインプットして、QCDをアウトプットするのが工場です。

生産管理では最小のインプットで、最適なアウトプットを目指します。現場では種々の管理が必要です。

 

取り上げるべき6つの管理項目があります。PQCDSMです。

  • 生産性(productivity)
  • 品質(quality)
  • 原価(cost)
  • 納期(delivery)
  • 安全(safety)
  • 意欲(morale)

これらの頭文字を取って並べています。

 

これら6つにもうひとつ、

環境(environment)

を加えることもあります。

 

最初の4つは説明するまでもないです。指標を設定し目で見る管理を実践します。

 

5つめの安全は当然です。安全・衛生活動で現場の環境を継続的に向上させることは重要課題です。

 

かって、ある中小製造現場の部門管理者を担っていたときのことです。

安全・衛生上の問題が約半年に渡って毎月、発生した時期がありました。

負のスパイラル、悪いスパイラルだったのでしょう。手を打っても、別の職場で問題が発生する。

今でも思い出しますが、部門責任者としてかなりのストレスを感じていました。

作業者もつらいですし、ご家族も心配になる。この手の問題は関係全員を辛くします。

問題を起こす前に手を打っておきたい管理項目です。

 

7つめの「環境」は環境に対して負荷の少ない製品やサービスを提供すること。現場でも目指します。

昨今は環境対策と経営効率の向上の両立に取り組む企業が評価されています。

環境経営度は中小製造業の経営者にとっても無視のできない評価項目になってきます。

こうした視点も今後は経営者に求められるのです。

 

6つめは意欲(morale)です。

意欲の管理です。現場の意欲の多寡をなんらかの手段で測ります。

改善提案一人当たりの提案件数。研修への参加回数。資格取得数。等々、経営者側から考える管理手段がいろいろと思い浮かびます。

 

しかしながら、現場側から考えるとどうでしょうか?

こうした管理が始まった時点で自律性がなくなります。

ですから、6つめの意欲(morale)では管理の前にやるべきことがあります。

 

3.意欲(morale)の管理の前にやるべきこと

経営者は現場の意欲の最大化を図りたいです。

そのためのいくつかの案が考えられます。

福利厚生を充実させる。昇給、一時金の実現させる。

ただし、こうした処遇の効果は一時的です。

効果的ではありますが、一般的にその効果は継続しないとされています。

 

経営者は現場のやる気を継続的に引き出せる手段を選択すべきです。

それは、「評価とフォロー」を実践することです。

 

現場のメンバーは生活の糧を得るために職場へ足を運びます。

家族のため人生をかけて頑張っています。したがって、その仕事で評価されることが最も心に響くのです。

トップから仕事ぶりをフォローされると嬉しいのです。的を射た評価とフォロー以上のうれしい褒美はありません。

 

意欲の管理を考えるなら、その前に「評価とフォロー」です。

現場から継続的にやる気を引き出せます。

「評価とフォロー」を継続的に実行できるしくみをいっしょにつくりませんか?

 

まとめ:現場管理で「意欲」を管理したいのなら、その前に評価とフォローの体制をつくる。

 

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出典:株式会社 工場経営研究所 伊藤哉技術士事務所


製造業専門の工場経営コンサルタント。金属工学の専門家で製造/生産技術、生産管理、IEにも詳しい。エンジニアの視点で課題を設定して結果を出し、工場で儲ける仕組みを定着させることを得意とする。コア技術の見極めに重点を置いている。 大手特殊鋼メーカーで20年近く、一貫して工場勤務。その間、エンジニア、管理者としての腕を磨く。売上高数十億円規模の新規事業の柱となる新技術、新製品開発を主導し成功させる。技術開発の集大成として多数の特許を取得した。 その後、家族の事情で転職し、6年間にわたり複数の中小ものづくり現場の管理者を実地で経験した。 大手企業と中小現場の違いを肌で理解しているのが強み、人財育成の重要性も強調する技術系コンサルタントである。 技術立国日本と地域のために、前向きで活力ある中小製造企業を増やしたいとの一念で、中小製造業専門の指導機関・株式会社工場経営研究所を設立。現在、同社代表取締役社長。1964年生まれ、名古屋大学大学院工学研究科前期課程修了。技術士(金属部門)