特許終了後は商品を商標登録で守る
マジックテープの特許
面と面を重ね合わせるだけで様々なものを留めることのできる面ファスナーは、1949年にスイス人のジョルジュ・デ・メストラルが犬の毛や服に付着したごぼうのループ状のイガに着想を得て発明したものです。世界的には「ベロクロ」という名称で利用されています。日本ではマジックテープなどの名称で知られています。
日本ではクラレが1964年から事業に乗り出し、1967年に日本シール社から「マジック」の登録商標を譲り受けたことからマジックテープとして商品展開を行っています。
特許権の期限
特許権の期限は永遠ではありません。マジックテープの基本特許は1975年に期限満了により消滅しています。その特許が消滅した後は、大手も含む他社が市場に参入したことで競争が激しくなりました。
特許権が存在している間は、技術の面からその商品を独占することができます。その特許権が消滅すると、市場参入をしようとする他社を排除することができなくなり、競争が発生するようになります。
商標登録や市場形成が大切
特許権が有効な間にすべきこと、それは自身に有利な市場を形成することです。自身に有利とは、その市場で自身のブランドが大きな力を持っているとうことです。
面ファスナーの場合には、前述した特許権の存続期間が終わる頃には国内市場の60パーセント以上のシェアをクラレの「マジックテープ」が占め、圧倒的な存在感をもっていました。知名度の面でも、面ファスナーの商品名として多くの消費者に認知され、強力なブランドを築いていました。
確固たるブランドができあがっている場合、特許権が消滅したとしても他社の市場参入に対して強い力を発揮します。特許の事情をあまり知らない消費者は、新しいメーカーの商品があったとしても、よく見知った「ブランド」の商品を選ぶことが多いからです。
特許権とバンテージがあるうちにブランドを確立し、特許権消滅後にはそのブランドで事業を守るというプロセスです。
ブランドを保護するのは商標登録(商標権)。商標登録は特許権とは異なり10年ごとに半永久の更新が可能です。特許権から商標権へのバトンタッチを上手く進めて、長期事業を戦略的に展開できます。
出典:『特許終了後は商品を商標登録で守る』(発明plus〔旧:開発NEXT〕)