海外赴任体験記①「新入社員、海外で働く」ーー1年10ヶ月を振り返る。
2015年8月17日(月)日本時間19:30頃
私は南国の地、フィリピン・セブ島に降り立った。
この日から私の海外赴任者生活が始まった。
私は海外経験があった訳でもなかったし、英語が得意ということでもなかった。
パスポートも再取得する必要があったくらいだ。
赴任開始直後の1ヶ月間、
現地スタッフとまともに目を合わせて話すこともできなかった。
一生懸命説明してくれているにも関わらず言葉の壁が距離を生み、何度も同じ説明を繰り返させてしまう申し訳なさから、分かったように首を縦に振り、日本人の先輩に同じ質問を繰り返すこともあった。
そんな中で最も勉強になったのはメールでのやりとりだった。
現地スタッフ間とのメールはもちろん英語を使う。
メールは自分のペースで文章を組み立てることができたし、分からない伝え方はすぐに調べたりすることもできた。
そして、送信ボタンを押す前に隣で作業をしている現地スタッフに読んでもらい、内容が理解できるかどうかを確認してもらうことも多々あった。
思い返しても笑えるくらいの効率が悪い仕事のやり方だったが、メールを送るごとに自分が伝えることの出来る範囲が広がり、徐々に会話の幅が広がっていった。
言葉の壁が崩れ始めた頃、立て続けに別の壁が立ちはだかった。
入社後、わずか4ヵ月で赴任した私はまだ駆け出しの新卒入社1年目。
しかし、海外工場という特殊な環境下では時に、新卒1年目であろうとマネージャーの様な役割をしなければならないこともある。
現地スタッフに仕事を依頼し、期日を設定、その進捗を確認するという作業。
返ってきた仕事の内容に間違いがないかどうかを確認し、間違いがあれば修正指示を出す。
簡単そうに見えるが、自分がやらなければならない仕事もあるので、人の仕事の進捗も気にしながら、自分の仕事も進めなければならない。
自分の仕事の進め方も満足ではない新入社員には難しいことだった。
これで依頼先が3人や4人になってくると、もうパンク状態。
気付いたら自分が指定した期日を過ぎていた、なんてことも多々あった。
これを解決したのは、とにかく会話をするということ。
会話の内容はとにかく何でも良かった。
家族の話、自分の話、美味しい食べ物の話、過去に赴任していた日本人の話など……
(個人的には過去に赴任していた日本人の話が一番面白かった)
他愛もない会話の中から「そういえば……」と現地スタッフが自ら、仕事の進捗を報告してくれるようになった。
こうして少しずつ、この特殊な環境下に馴染んでいった。
しかし、海外赴任は一筋縄ではいかない。
次から次へと新たな壁が立ちはだかる。