汎用旋盤では職人さんの特徴が現れる加工

汎用旋盤では職人さんの特徴が現れる加工

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写真の品物は、S45C磨き、外形φ26全長200。2個。公差は全て±0.1mmです。

片側に、外径φ20長さ25、もう片側は、内径φ14.5有効深さ16(内径底面はキリの先端残り可)と、ここまでは、何のことはない形状です。

写真では見づらいですが、外形φ19で、1mmストレートがあり、そこから60°のテーパーが付いています。

 

汎用旋盤使われている方なら、もうピンときていると思いますが、ストレートとテーパーの継ぎ目が泣き所です。

NC旋盤なら全く継ぎ目なしできれいに加工出来ますが、汎用旋盤はそうはいきません。若干の継ぎ目が出てしまいます。

テーパー部の仕上げ加工は、φ19長さ1mmの際ぎりぎりにバイトを持って行き、テーパーを仕上げます。上スボールを30°傾けてますので、見た目以上にコツが必要です。

 

ストレートとテーパーの継ぎ方には、いろいろな方法があり、このあたりがノウハウとなってきます。職人さんそれぞれに特徴が現れるところです。

この品物の場合は、それほど問題にはなりませんので、それほど気を使わなくていいのですが、品物によって、或いは、検査の方によってWWは、やっかいな部分となります。

それともう一つ、汎用旋盤の場合、テーパーは別工程になりますので、掴み変えた時の振りも、きちんと出さなければすごく目立ちます。

 

品物の公差や仕上げ記号が緩くても、このような場合、すごく手間のかかる加工となってしまいます。

このあたりことを、理解頂ける発注権限者さんが、すごく少なくなってしまいました。

 

(追伸)

NC旋盤でこの品物2個加工すると、どの位の時間掛かるのでしょうか?

外径は特別な工具は要りませんが、内径はキリとバイトは、この径用のを付けなければいけないでしょうし、全長200mmだと、チャックの後ろの当たりも、それに合う爪持ってる所は良いですが、なければ作らなければいけませんし、それなりに時間掛かると思うのですが。

これ、見積もり出したとき、「うちに材料在庫ありますよ」と言うと、「ちょっと高いけど」と言われながらも、すぐに掛かってもらえるなら納期優先とのことで、即注文頂きました。

~基本を大切にした技術伝承~汎用旋盤職人養成


1963年大阪生まれ。西尾鉄工所代表。旋盤師、伝統技術継承者◎祖父の代から80年続く大阪八尾市の町工場の三代目。「職人道」を極めた先代のもとで、13才から弟子入りし、昔ながらの職人技を叩き込まれ、家業を一人前にこなした。工業高校卒業後、中堅工作機械メーカーに就職。工作機械(機械部品を産み出す母なる機械。マザーマシンとも呼ばれる)の構造を隈なく学び、23才で独立。最先端コンピュータで制御された「NC旋盤」に対し、職人の「技」と「勘」が頼りの「汎用旋盤」(職人の手で動かす旋盤)をこよなく愛し、現在に至るまで、その加工にこだわり続けてきた。数少ない伝統技術継承者の一人。◎若い世代の人材不足、技術伝承に危機感を持ち、2016年「汎用旋盤職人養成講座」をスタート。教材用に独自開発した「汎用フライス盤」は、設計、加工、組立・調整をすべてひとりでやり遂げ、自身の総合技術力の賜物となった。最近、営業下手な職人の殻を破り、SNSを駆使して「基礎の手技」の重要性を次世代へと訴える。また、異業種の職人を対象に、「いぶし銀の会」を立ち上げ、オリジナル製品の企画、開発など「未来の職人像」を探っている。コンピューター依存が加速する製造業の未来を受け入れつつも、「機械の前に人間ありき」と、代々受け継がれてきた職人の技と精神性の伝承に力を注いでいる。◎2014年「八尾市ものづくり達人懸賞」受賞、2015年日刊工業新聞「マイスターに聞く」掲載、「なにわの名工」受賞◎西尾鉄工所ホームページhttps://nishio-tekkousho.jimdo.com/ 西尾鉄工所技術伝承 https://nishio-tekkousyo.jimdo.com/