機械加工工程にもいろいろある|元トヨタマンの目
多種少量品を機械加工しなければならない場合、手動加工機でいろいろな製品を加工する。
当然、1台に1人がついて手動加工する。この状態で減産になれば、作業者は遊んでしまう。
そのうち「すごい機械」が登場した。
データをインプットしておけば、多種類の加工を連続してやってしまう。
ワーク自体は動かず、刃具の方がいろいろな方向から削りをかける(これにはワーク自体が回転してそれを刃具が削るという旋盤の機能はない)。
この機械の導入により、1台に1人必要な手動加工機と比べれば、人件費が飛躍的に低減された。
しかしこの機械の欠点は1回でいろいろな加工をするため、加工時間が非常に長くなることだ。
1台に1人の手動機なら、1台の加工が終れば、次の機械に送る。そのペースで完成品もアウトプットされる。
しかしこの「すごい機械」では、このような増産がきかない。
さらに機械自体の値段が思いっきり高いため、たくさんは購入できない。段取り替え時間も長時間かかる。
多くの中小企業はこのような状態にあると思う。すなわち、手動加工機械と「すごい機械」が混在している状態だ。
このような企業では、手動加工機械の段取り改善を徹底的に進める前に、「すごい機械」が出現してしまった。
そこでまず、手動加工機械の段取り改善を徹底的に進める。
そのようなノウハウは本屋へ行けばいっぱい本が出版されているので徹底的に勉強して、早急に導入する。
次に、1つの部品については、すべての工程の機械が同時に段取り替えして、1個加工したら次の工程の機械へ持っていく。そうすればリードタイムは最短になる。
トヨタの機械加工ラインはすべて自動専用機(自動で1つの加工しかしないという意味。データは事前にインプット済み)である。
たとえば、A部品・B部品・C部品と3種類の部品を加工しているラインがあるとする。
3つを同じ加工をする機械には、3つの部品が流れる(汎用ライン部分)。3種類別々加工をする機械には、該当する種類しか流れない(専用ライン部分)。
このようにしていれば段取りをする必要はなくなる。
しかし、切削刃具の交換や定期品質チェックやパーツフィーダーへの部品補充や設備トラブルには人が来て対応するしかない。
人が必要な場合は、すべて機械がその必要性を感知するようにしてあり、黄色のあんどんを点灯して人を呼ぶ。
決められたタイミングまでに人が来なければ、機械は自動的に停止して、赤のあんどんに変わる。
このようにすれば必要最小限の人間でラインを運営できる。
トヨタを出てから、いろいろな工場をみせてもらったが、それぞれの工場にいろいろな事情がある。
本当に面白く勉強になる。トヨタを止めて本当によかった。