検査の進化|元トヨタマンの目
<第1期>分別検査
工程の中の「検査」というのは、「標準との比較」をする行為であり、もっぱら「不良品を除く」ことである、と考えられていた。
言い換えれば、出来上がった製品をチェックして、不良品を排除することだけが、検査の機能だと考えられていた。
そして全数検査は工数が非常にかかるので完全にやることは難しいので、適当な抜き取り検査を採用していた。
<第2期>情報検査
検査は不良を排除するだけの単純な機能でしかないという概念を打ち破り、
不良を発見したら、それをフィードバックしてアクションを行なって、不良の発生を減らす、ということが行なわれるようになった。
しかも「推測統計学的品質管理方式」が、従来、勘に頼っていた抜き取り検査を、推測統計学の裏づけによって設定できるようにしたため、検査にかかる工数も、発生する不良も大きく減少した。
しかし、これは抜き取り検査という手段の改善であって、品質保証そのものに対する改善ではなかった。
なぜなら、どうやっても抜き取り検査である以上、不良ゼロというわけにはいかなかったからだ。
<第3期>ポカヨケによる全数検査
ポカヨケが工夫され、工数をかけずに全数検査が可能になった。
またポカヨケにより、不良が発生したすぐのタイミングでそれを発見することができるようになったため、不良発生の原因を突き止めることも可能になった。
そしてこれにより、不良ゼロが可能になった。
自動車の場合、たった1つの不良でもそれがお客様の命を奪うことになるかもしれない。
したがってこの段階で、トヨタは初めて、社会に対して「自動車」を供給する「資格」ができたといえよう。
<第4期>自主点検・順次点検
ラインの最後に検査員がいて、そこで不良を発見しても、すでに大量の不良をラインは作っている。
発見のタイミングが遅すぎるのだ。
そこで、自分の作業が終った段階で、検査員がチェックしていたことと、同じことを自分でやる(自主点検)。
しかし自分が検査するとなると、どうしても「これくらいはいいだろう」と妥協しがちになったり、ついウッカリ見逃してしまうという欠点がある。
やはり検査は独立性が保証される必要があり、絶対に第三者がやらなければならないという考え方もある。
そこで「一番近くにいる他人」である、次の工程の加工作業者が検査をすればいいことに気づいた(順次検査)。
結局、自主検査・順次検査・ポカヨケを徹底的にラインに導入し、ついに松下電器、洗濯機事業部、静岡工場で昭和52年、日本で初めて、1ヶ月間連続して不良=ゼロを達成した(23人の受筒ラインの組立て作業)。
またその後ここでは6ヶ月以上、不良=ゼロを継続したそうだ。
しかしながら、この検査の進化は、1個流し・ライン化が実現できていることが大前提だ。
まだまだ世間には、ロット生産のままの会社が多くある。
こんなところでは、「フィードバックだ、アクションだ」などといってみても、仕掛在庫だらけで、不良の発生源を特定することなど不可能に近い。
このような状態だと、「行動を起そう」という気すらおきてこない。
トヨタ式のコンサルタントとして活動しているが、トヨタ式に取り付く前の地盤がゆるゆるの企業が多いため、大変苦労している。
気合を入れてやらないと、何年たってもトヨタ式に取り付くことすらできない。
クライアントの皆さん、頑張りましょう!!!!