森友問題より大切な事がある。。。日独ハノーバー宣言 第4次産業革命の行...

森友問題より大切な事がある。。。日独ハノーバー宣言 第4次産業革命の行方

いまテレビや新聞は森友学園の問題でもちきりです。その是非について言及するつもりはありませんが、こんなことをしている間にも世界は着々と動いています。特にビジネスは日々大きく変化していて、ちょっと目を離した隙に日本だけが置いていかれてしまう恐れがあります。

では実際、製造業関連では森友問題で騒がれる影で何があったのかというと、、、

一番大きなニュースとしては、

日本とドイツ、第4次産業革命で共同声明・ハノーバー宣言を締結

3月20日から24日に、ドイツ・ハノーバーで世界最大のIT見本市CeBITが行なわれました。今回は日本がパートナーカントリーとなり、会場に日本の特別コーナーが設けられ、数多くの日本企業が出展しました。会期中、安倍首相もドイツを訪問し、CeBITの前夜祭でスピーチをし、メルケル首相とも会場を一緒に視察するなど、情報交換を行いました。

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そして、両国が表題の「ハノーバー宣言」を締結し、第4次産業革命で連携をもっと深めていくことが決まりました。昨年、日本とドイツの経産省の次官級で共同声明を締結しましたが、今回は世耕経産大臣と高市総務大臣が署名し、閣僚級の共同声明に格上げ。より具体的な活動が今後行われていきます。

第4次産業革命への対応が先行し、システム的なアプローチが得意で、寡占企業による展開が進んでいるドイツと、高い要素技術と、現場における臨機応変な課題解決力や継続的なカイゼン活動など現場力に強みを持ち、多数企業が競争状態にある日本。この異なる強みを持つ両国が協力することによって、第4次産業革命をリードしていくとのこと。

ハノーバー宣言で決まった協力内容は9項目

  • (1)IoT・インダストリー4.0に関するサイバーセキュリティ
  • サイバーセキュリティ関連の国際標準化に向けた議論を加速。
    ICT分野のセキュリティ知見を共有。

  • (2)国際標準化
  • IoT・インダストリー4.0に関する横断的モデルを2017年1月に日本からIECに提案。
    ISO、IEC等において、日独でこの分野の標準づくりの議論を先導。

  • (3)規制改革
  • データ自由流通原則(G7)の推進、OECDを活用した同原則の効果測定に関する協力

  • (4)中小企業支援
  • 日独のIoT活用に秀でた中小企業の相互訪問・知見の共有を継続(2月に独8社、3月に日本10社が相手国を訪問)。
    独の中小IoT企業連携を両国政府が資金面で支援。オンラインマップで先進事例の見える化・共有・連携促進。

  • (5)研究開発
  • 産総研や情報通信研究機構と、独・人工知能研究所(DFKI)のMoU。NEDOコファンド等で企業連携支援。

  • (6)プラットフォーム(民間推進団体間の協力)
  • (7)デジタル人材育成
  • ものづくりを中心とした既存従業員のデジタルスキルの習得・スキル転換に向けた政策連携

  • (8)自動車産業
  • 自動車産業政策に関する協議の実施(他省庁・企業も随時参加)。
    充電インフラ協力に加え、自動運転・コネクテッドカー等の議論を開始。

  • (9)情報通信分野の協力

 第1次産業革命でイギリスは大きく飛躍し、第2次産業革命の電力、第3次産業革命のコンピュータの中心地となったアメリカは20〜21世紀の世界経済の主役に躍り出ました。産業の転換期にどれだけ中心に居続けられることができるかが、今後の経済を大きく左右します。

 日本はいま、少子高齢化、労働力不足によって国内市場の拡大は難しく、激しい国際競争のなかで世界での影響力も小さくなっています。そんななか、その構造が大きく変わる第4次産業革命は大きなチャンス。これを成功させ、大きな企業はより大きく、中小企業も利益を出せる形に変えていくことこそが今の日本に必要なこと。

 日本の産業や経済をどうしていくか、全員が真剣に考えなければいけない時期に来ています。

最後に、安倍首相のCeBIT前夜祭でのスピーチを全文転載します
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※転載元:首相官邸、国際情報通信技術見本市(CeBIT)ウェルカムナイト 安倍総理スピーチ

 昨年の5月のことであります。メーゼベルク城で、アンゲラ・メルケル首相にお会いしました。その時、首相から、今度のCeBITでは、日本がパートナー国になりませんか。そしてあなたも、是非おいでなさいと誘われました。
 アンゲラ、お誘いに感謝します。私も、こうして参りました。そして、パートナー国となった日本から企業が大挙、参加しました。その数、前年比10倍以上、実に118社であります。

 皆様、本日はこのすぐ後で画期的文書が世に出ます。署名するのは、ブリギッテ・ツィプリス経済エネルギー大臣。そして日本側は、会場におります世耕弘成経済産業大臣と、それからこの場におりませんが、高市早苗総務大臣であります。
 「ハノーバー宣言」と、私たちは名づけました。
 中身の詳細は、すぐ明らかになりますから、私はむしろ、宣言が立脚する土台について思うところをお話をさせていただきたいと思います。

 第一に、今やマシーンに対して新たな定義が必要となりました。
 AIを身にまとい、あるいはロボットとなるマシーンは、もはや狭い単一機能だけを満たすものではありません。
 人の一生につきまとう問題、例えば健康。地球規模で生じるチャレンジ、例えばエネルギーの供給。これからのマシーンは、それらの問題を解く使命を担います。
 製造業が変わります。問題を解くインダストリーになる。
 一個の機械でできず、一社の技術でもできません。一つの国だけで、できないことばかりであります。

 だとすると第二に、私たちはつながりを、殊の外、大切にしなくてはなりません。
 機械と機械、システムとシステムをまとめる、そのまたシステムとの連携。それらと人間の世代をまたがる関係。そしてもちろん、国や企業という人間の集団同士。
 そこにどんなつながりを作るのか。そのデザインにおいて、政府、ビジネス、学界が、知恵を絞り競い合っていく時代であります。
 協力と協働が、付加価値を作り成長を促す時代であります。

 そこで第三に、そして最後に強調したいのが、教育の大切さ、規格の重要性です。
 メルケル首相に訊(き)いてみましょう。幼いころ鉱石ラジオを作りませんでしたか。
 ドイツでメルケル首相が見たラジオの回路図は、日本で私が見たものと同じだったはずです。回路図とは偉大な共通語でした。
 複雑な問題をシステムとして考え解かなければならない時代、ものは皆、そして人は皆、つながる時代には、新しい記述法、モデルの書き方、共通の規格が必要になります。
 これを日本とドイツ、一緒に考えましょう。教育の方法を、共通の規格を、共に開発しましょう。
 それができるのは、誰よりも私たち、ドイツと日本だと思います。
 どうしてか。それは、ドイツ人も日本人もものを作ることに誇りを託し無上の喜びを感じる人間たちだからです。会場の皆様も強く御賛同いただけるのではないでしょうか。

 皆様、ドイツの、欧州の、そして日本の未来に大切なものは、たったの三つしかありません。
 第一、イノベーション。第二、イノベーション。そして第三が、イノベーションであります。
 思い出してください。ドイツと日本は、国土は狭い、天然資源は貧弱、それでもめざましい成長ができる、ということを証明した人類史上初の実例だったのではないでしょうか。
 不利な条件をむしろ逆手にとって私たちは成長しました。イノベーションがそれを可能にしたのであります。
 これから先の問題も、イノベーションが必ずや解決する。チャレンジが大きいなら、むしろそれだけイノベーションが花開く。私は、信じて疑いません。
 ですから日本は、AIを恐れません。機械が職を奪うのではないか。そんな不安は日本には無縁であります。
 人口が仮に減っても、イノベーションによって成長できるのだという第一号の証拠に、日本はなりたいものだと思っています。

 日本とドイツには共通の要素があります。
 イノベーションの担い手が、ドイツでも、日本でも、小さな会社にいるということであります。特筆すべきことだと思います。
 そこでメルケル首相と私は、会うたびに中堅・中小企業をお互い交流させようと話し合ってきました。
 2月には、ドイツから最先端の中小企業が日本にやってきました。「フランカ」というロボットは、優しい手つきで新しいフランカを、つまり自分の分身を、なんと自分で組み立てて見ている人を驚かせました。
 今回CeBITに来た宝石のような日本の中堅・中小企業も、同じように驚きの輪を広げてくれるに違いない。私は信じております。

 皆様、日本とドイツにはもう一つ共通性があります。貿易と投資の恩恵を受けてこそ、ここまで来たということであります。
 IoTとは、全てをつなぐものだといいます。それはつまり、ネットワークが秘めた自乗、自乗で拡大する、その爆発的な力を言っているわけです。
 国の経済も同じです。再び強調しますが、つながってこそ伸びていきます。
 自由な貿易と投資の恩恵をふんだんに受け伸びた日本は、ドイツとともに開かれた体制を守るチャンピオンでありたい。私はそう強く念じています。
 もちろんそこには、公正で民主主義の評価に耐えるルールが必要です。
 一部の人だけに富が集まる、あるいは無法者が得をする状態を作ってはなりません。
 だからこそ、自由と人権を尊び民主主義のルールを重んじる日本とドイツ、さらに、日本と欧州は、連携しないといけないと信じています。
 だからこそ、そこを高らかに示すため、日本とEUのEPAを早く結ばなければなりません。
 心からの私の訴えであります。
 私たちをここまでにしてくれた自由で開かれたルールに基づく体制を守り強くしていくため、メルケル首相とともに歩んでいこうではありませんか。

 人類の歴史に大きな節目が訪れました。
 森に出て狩りをした大昔。そこを人類史の第一章とすると、米や小麦で安定した熱量を手にしたのが第二章。産業化の波が来て近代という名の第三章が幕を開け、通信とコンピューターの融合が、また新たな扉を開いて、これが第四章。
 今私たちは、解決できなかった問題を解けるようになる第五章の開幕を目撃しています。もの皆つながり、全ての技術が融合する時代、ソサエティ5.0の開幕であります。ソサエティ5.0の物語をドイツと日本、一から一緒に書いていこうではありませんか。

 メルケル首相、オープンでルールを尊び、自由で公正な世界を保つのです。そして強靭にするのです。
 その上で若者たちにイノベーションの広野へと、思うさま駆けていってもらおうではありませんか。
 人類史の第五章は、きっと、光明降り注ぐ明るい世界になります。私たちの力を信じて、前に前に、もっと前に進んでいこうではありませんか。

参考:首相官邸、首相の1日 ドイツ訪問1日目 ハノーバー

参考:世耕経済産業大臣が「ハノーバー宣言」に署名しました~第四次産業革命に関する日独協力の枠組みを構築~


1975年群馬県生まれ。明治大学院修了後、エレクトロニクス業界専門紙・電波新聞社入社。名古屋支局、北陸支局長を経て、2007年日本最大の製造業ポータルサイト「イプロス」で編集長を務める。2015年3月〜「オートメーション新聞」編集長(現職)。趣味は釣りとダーツ。