東芝の半導体事業どうなる?どうする?識者の意見
揺れる東芝。
4月1日には半導体事業が分社化して東芝メモリとなりましたが、2兆円とも言われるその売却先がどこになるのか、世界中が注目しています。
日本政府が救う?
中国や台湾系企業が狙っている?
売却先ならアメリカ企業?
などなど、いろいろな予測が出ています。
技術流出による産業競争力の低下、
今後の半導体の研究開発への影響懸念、
今いる社員の雇用とこれからの技術者育成など、
さまざまな方面に影響を及ぼしそうなこの問題。
どんな方向性が良いのか?識者の意見を見てみましょう。
東芝の半導体を是が非でも守らなくてはならない理由
ダイヤモンドオンライン 長内 厚
筆者は、早稲田大学商学学術院大学院経営管理研究科教授/早稲田大学台湾研究所研究員・同IT戦略研究所研究員/ハーバード大学GSAS客員研究員の長内厚氏。
優良企業の切り売りには反対の考えですが、ここまで来ては仕方がないとのこと。
半導体事業単体で考えるのであれば、多額の設備投資を迅速に行える鴻海が最有力候補と見ていますが、東芝の今後との兼ね合いや国内の雇用、技術を考慮に入れるとそれも最良ではないと。
東芝の救済は、産業育成や雇用確保、将来のためには公益性は高く、もし国内や政府系ファンドが出資するならば、それだけの覚悟が必要と指摘しています。
東芝のフラッシュメモリ事業はアメリカ企業に買ってもらい「日米連合」という幻想
竹内健
こちらは東芝OBで現在、中央大学理工学部教授の竹内健氏。記事は3月17日ですので、2週間ほど前ですね。
東芝メモリの発足について、以前から半導体事業の独立の話はあり、早めにIPOすべきであった。買収される側には主導権は残らないと指摘し、同業他社の買収には反対の姿勢を取っています。
それが中国・台湾であろうが、アメリカであろうが国籍は関係ない。もし政府系のファンドが出資するのであれば、全株式の51%以上を保有して欲しいとしています。
東芝「潰すか救うか」メガバンクのトップが本音を明かした 【大人の事情】内幕ドキュメント
週刊現代
こちらは現代編集部が銀行関連から切り込んだ記事です。
ビルや交通インフラ、防衛産業などで東芝の製品が多く使われていて、東芝が潰れるなんてことがあったら、私たちの生活自体に大きな影響が出てくるので、潰すことはできないだろうという銀行関係者のヒアリングから指摘しています。
また、東芝には中小企業など多くの取引先があり、こうした企業の連鎖倒産も防がなければならない。社員と取引先の家族を救うためにも支援は必要であり、銀行はその方向性で動いていると示しています。
日本政府は本当に「東芝メモリ」を救うべきなのだろうか?
田中博文 現代ビジネス
これはジェイ・キャピタル・パートナーズ代表取締役の田中氏による記事。
東芝の半導体事業は競争力があり、技術流出を防ぐための取引の変更や中止等の命令については、かつてのエルピーダが売却されたのに対し、今回もし適用するのであればなぜ可能なのかを説明すべき。
また、救うべきは企業でなくて個人。政府がやるべきことは、優秀な人材が有望産業にシフトできるように、その社会保障制度を整備することと指摘しています。
週刊現代の記事にある通り、これだけの大企業になると、従業員や取引先はもちろん、私たちの生活インフラの多くの部分を支えています。それがいきなり吹き飛んでしまったら大混乱を生じかねません。その意味では、公益性が高いというのは否定できません。
その一方で、ある企業は救済するが、別の企業は救済しないという公平性に対する疑問、中国や台湾はダメでアメリカは良い理由など、曖昧な部分が多くあり、どんな結果になるにせよ、キチンとした説明責任と明確な基準を示す必要があります。
どこがいくらで買う?といった話題が中心となっていますが、田中氏の言う通り「救うべきは個人」の視点も忘れてはいけません。大切な労働力であり、実際に技術やノウハウを持ち、運用しているのは、そこに働いている技術者の方々です。
東芝の今後はじっくり見ていかなければなりませんね。
※出典ならびに参考:
『東芝の半導体を是が非でも守らなくてはならない理由』ダイヤモンドオンライン、長内 厚
『東芝のフラッシュメモリ事業はアメリカ企業に買ってもらい「日米連合」という幻想』竹内健
『東芝「潰すか救うか」メガバンクのトップが本音を明かした 【大人の事情】内幕ドキュメント』週刊現代
『日本政府は本当に「東芝メモリ」を救うべきなのだろうか?』田中博文、現代ビジネス