材料と刃物の相性

材料と刃物の相性

今回は「材料の切削性」についてです。

特別ではなく、ポピュラーな材質でもその時によって切削性が非常に悪い場合があります。

その時とは入ってきた材料によってという意味です。原因は不明ですが確かにあります。

 

当社は汎用屋ですのでNC屋さんが断わった加工ものをよく請けます。

そのため珍加工や細工ものが多いです。この時、ハイスで加工することがほとんどです。

ハイスをうまく使うと超硬ではできないような加工やその方法を行うことができます。当然ですが超硬よりも硬度は低いので欠けにくいです。

 

この性質をうまく利用します。例えば刃先を超硬よりも鋭くすることができます。

超硬では欠けてしまいますのでハイスほど鋭く研いで削ることはできません。また、少し位のビビリや衝撃では欠けませんので、断続切削や硬度の高いものなど欠けず(欠け込まず)に加工できます。

欠け込んだ超硬を取るのはなかなか面倒です。みなさん経験があることと思います。

 

材料に文句を言ってるのではありません。いろいろな理由で多少のことは仕方ないと思います。

そのあたりは、加工者の工夫で乗り越えていかなければいけないと思います。

私が嫌う材料の一つは、超硬は問題なく削れますが、ハイスでは削りにくいといった材料です。当社は先ほど書きました通り珍加工や細工ものが多いので、ハイスをよく使います。

 

NC旋盤ではあまり使わないことと思います。キリ(いわゆる黒ドリル)で穴をあけていてもキリが振れやすいです。

溝加工の時もハンドルに力を序所に入れて行くのですが、ある程度力を入れなければ始めの喰いつきが悪く削れてくれず、あるところでいきなり喰い込むように入っていきます。なので泣かされます。

はじめの喰いつきが悪いと言うことは、切り込みが小さな加工はうまく削れません。

 

たぶんこのことが「超硬は問題なく削れるがハイスは削りにくい」の一番の原因だと思っています。

このことへの対応方法はいくつかありますが、その一つが、「砥石の合わせ」です。うまく削れてくれるようにさまざまな方法で砥石を工夫します。

砥石の銘柄・荒さ・硬さもそうですがその他ちょっとした工夫があります。

 

バイトの砥ぎ方も大切ですが、この砥石の合わせも重要です。一度いろいろな砥石でバイトを砥ぎ比べてください。切れ味が違うのを実感できると思います。

実感できれば次に自分流の工夫を考え砥石の種類などとの組み合わせで一番適切なものを選択していきます。

良い勉強になります。バイトとはすごく微妙なもので難しい加工になればなるほど重要となってくると思います。面白いですよ。

~基本を大切にした技術伝承~汎用旋盤職人養成


1963年大阪生まれ。西尾鉄工所代表。旋盤師、伝統技術継承者◎祖父の代から80年続く大阪八尾市の町工場の三代目。「職人道」を極めた先代のもとで、13才から弟子入りし、昔ながらの職人技を叩き込まれ、家業を一人前にこなした。工業高校卒業後、中堅工作機械メーカーに就職。工作機械(機械部品を産み出す母なる機械。マザーマシンとも呼ばれる)の構造を隈なく学び、23才で独立。最先端コンピュータで制御された「NC旋盤」に対し、職人の「技」と「勘」が頼りの「汎用旋盤」(職人の手で動かす旋盤)をこよなく愛し、現在に至るまで、その加工にこだわり続けてきた。数少ない伝統技術継承者の一人。◎若い世代の人材不足、技術伝承に危機感を持ち、2016年「汎用旋盤職人養成講座」をスタート。教材用に独自開発した「汎用フライス盤」は、設計、加工、組立・調整をすべてひとりでやり遂げ、自身の総合技術力の賜物となった。最近、営業下手な職人の殻を破り、SNSを駆使して「基礎の手技」の重要性を次世代へと訴える。また、異業種の職人を対象に、「いぶし銀の会」を立ち上げ、オリジナル製品の企画、開発など「未来の職人像」を探っている。コンピューター依存が加速する製造業の未来を受け入れつつも、「機械の前に人間ありき」と、代々受け継がれてきた職人の技と精神性の伝承に力を注いでいる。◎2014年「八尾市ものづくり達人懸賞」受賞、2015年日刊工業新聞「マイスターに聞く」掲載、「なにわの名工」受賞◎西尾鉄工所ホームページhttps://nishio-tekkousho.jimdo.com/ 西尾鉄工所技術伝承 https://nishio-tekkousyo.jimdo.com/