本のタイトルは商標?
私は以前『社長、その商品名、危なすぎます!』という本を出しました。その本には、帯がついています。帯には内容がわかりやすく伝わるキャッチコピー、出版元である日本経済新聞出版社の名前、さらには収録シリーズの名前である「日経プレミアシリーズ」の文字など、さまざまなことが記載されています。
これら書籍やその帯に記載された情報は、商標と商標でないものに分けることができます。
例えば「日本経済新聞出版社」「日経プレミアシリーズ」は、商標です。一方で、書籍名(タイトル)やキャッチコピーは商標ではありません。
この違いは、取引の目印であるかどうかが基準となります。
日本には、日本経済新聞出版社以外にも書籍を刊行・販売している企業は多数あります。新聞社系の出版社だけをとっても、「朝日新聞出版」「毎日新聞出版社」などがあります。また他にも、「講談社」「小学館」「新潮社」といったさまざまな会社があります。
こうした多くの出版社がある中で、特定の出版社を示す目印として「日本経済新聞出版社」という文字、すなわち、商標が表されています。
また、さまざまに出版される書籍の中で、手軽に読める新書サイズで刊行されるシリーズを示す目印として「日経プレミアシリーズ」が表されています。「日経プレミアシリーズ」は実際に商標登録もされています。
本のタイトル「社長、その商品名、危なすぎます!」は、取引の目印といえるのでしょうか。これは、少しややこしくなるので、違う例でご説明してみましょう。
「ゆずの素」「ゆずえん」……。この文字を見て何を意味するかお分かりでしょうか?もう少しヒントを出すと、「ゆず一家」「ゆずマン」。これをお分かりになる方は、アーティストの「ゆず」を知っている方でしょう。これらの言葉はすべて「ゆず」のアルバム名です。CDのアルバム名は、アーティストがさまざまな想いを込めています。そのため、それぞれのアーティストがいろいろなタイトルをつけます。ファンの方はそれを見て、アーティストの思想を感じ取るわけです。
ところが「ゆず」を知らない方ですと、「ゆずの素」や「ゆずえん」だけを見ても、「入浴剤か何か?」「観光施設なのか?」など、それが何を表しているのか、さっぱり分からないと思います。
このように、CDや書籍のタイトルは、それだけでは提供者などを区別する目印にはならないので、商標ではないとされています。私の本のタイトル「社長、その商品名、危なすぎます!」も商標ではないということですね。
出典:『本のタイトルは商標?』(発明plus〔旧:開発NEXT〕)