映画から考える知財戦略

映画から考える知財戦略

アイデア発明が大成功する映画「逆転のメソッド」

「逆転のメソッド」は実話を基にした映画です。

世界で4番目に売れたアイデア商品といわれる「おしゃべり栓抜き」の物語です。

世界で売れたアイデア商品は、

1.フラフープ
2.水鉄砲
3.フリスビー
4.おしゃべり栓抜き

らしいです。

おしゃべり栓抜きは他の商品と比べると実用性や遊戯性が足りないようにも思いますが、ジョークとしては群を抜いているのではないでしょうか。

主人公の2人はギャンブル依存症の社長と従業員。その2人が商品を開発して一山当てるようなストーリーです。

アイデア商品のヒットは、ある種のギャンブルのように描かれていたかもしれません。

自分で売れると予想して作っても、売れなければ結局はギャンブルに負けたのと同じ。

商品開発はある意味ではギャンブルのような側面があるのかもしれません。

しかしながら、ギャンブルとは異なる部分もあると私は考えます。

確かにひらめきや流行には運の要素もあるかもしれませんが、それらも自分の知恵と努力で当たる確率を引き上げることができます。

アイデアを更にブラッシュアップすることもできますし、戦略的に宣伝することもできます。

良いアイデアを思い付いたときには「当たった!」と思ってしまうこともありますが、そこからいかにヒットにもっていくかが重要です。

自分の知恵と努力で結果が変わってくる点では、ギャンブルではないのです。

商品開発をギャンブルにしないためにも、知恵と努力を惜しまないことが大切だと思います。

1歩進んだ戦略 – 規格化

映画繋がりでは、ブルーレイディスクの話題も挙げておきましょう。

今ではブルーレイディスクが記録メディアとして普及していますが、2009年頃まで、DVDに次ぐ記録メディアとしてソニー中心のブルーレイ陣営と東芝中心のHD DVD陣営の規格争いがありました。

それぞれの開発企業はそれぞれの記録方式について特許を取得しています。

従って、自分の方の記録方式が規格として採用されれば、それを製造販売する他の企業から特許収入を得られます。

このような背景から、標準規格に採用されるということは、商品開発をする企業にとって、大きな意義があります。

また、特許を持っていますので、その後の市場や技術を主導できるというメリットがあります。

自身の商品を確実にヒットさせる戦略として、規格化はとても有効なメソッドなのです。

映画の話題からは離れますが、例えば、トヨタ自動車が約5,680件の燃料電池関連の特許技術について2020年末までの期限付きで無償開放し、水素ステーションの特許については無期限で無償開放すると発表したことがありました。

このポイントは、トヨタ自動車は技術を開放はしましたが、特許権は放棄していないということです。

自身の技術を開放することで技術を普及させる一方で、特許権によって市場動向や技術動向をある程度はコントロールできる途を残しています。

アイデアや特許は持っているだけでは利益も生まれません。

多くの人に行きわたるような戦略がときに必要なのだと感じます。

映画から考える知財戦略

出典:『映画から考える知財戦略』(発明plus〔旧:開発NEXT〕)


弁理士。コスモス国際特許商標事務所パートナー。名古屋工業大学非常勤講師。1980年愛知県生まれ。名古屋工業大学大学院修了。知的財産権の取得業務だけでなく知的財産権を活用した製品作りの商品開発コンサルタントを行う。知財マッチングを展開し、ものづくり企業の地方創世の救世主として活躍している。著書に『社長、その商品名、危なすぎます!』(日本経済新聞出版社)、『理系のための特許法』(中央経済社)等がある。 特許・商標の活用を応援するWEBマガジン「発明plus Web」( https://hatsumei-plus.jp/ )を運営している。