方針管理で工場経営の品質をコントロールする

方針管理で工場経営の品質をコントロールする

生産活動を生産管理で、工場経営を方針管理でコントロールして、質を高める、という話です。

 

工場経営の品質をコントロールしていますか?

1.生産管理で生産活動を管理する

生産活動の基本はQCDです。納期に関して、作るべき数量と期限を各工程へ提示します。

生産活動を管理するのが生産管理です。

各工程が計画どおりに仕事を進めれば、納期は守られます。

 

期限を順守できない工程が出てくれば、それは計画全体へ影響を及ぼします。

顧客が要望する納期通りに製品を届けられません。

生産ラインの出口となる出荷場、発送場で、納期遅れという形で問題が顕在化するのです。

 

また、製品を造り過ぎれば、やはり生産ラインの出口となる出荷場、発送場にしわ寄せがきます。

製品在庫が山のように積まれ、工場スペースはそれらに埋め尽くされます。

置かれた完成品を先入れ先出しする手間も無視できません。

こうして、慢性的なムダが生じるのです。

 

2.上流の影響が下流に現れる

生産ライン上流側の活動の影響が全て出荷場や発送場に現れます。

製品在庫の倉庫を見れば、その工場の生産管理の実力が知られます。

出口となる出荷場、発送場が常に正常に機能していること、見た目も整然としていること。

これらが生産管理の目的です。

単に生産指示を出すことが生産管理ではありません。

逆に言うと、出口側を見ればその工場の生産管理の実力も読めるということです。

 

そのために生産管理では各工程の見える化を図ります。生産管理に必要な項目の定量化を進めます。

生産能力、生産実績、生産リードタイム、生産タクト、投入材料等々。

こうした数値によって各工程の判断基準が出来上がります。

管理には比較対象となる数値が必要です。それらと比べながら現場は自律的に日々の生産活動を進めます。

異常があるとわかります。比べることで異常を感知できます。異常があったら、それを感知して、即、対応します。

 

これが、生産管理の仕組みなのです。

これらが不完全だと、すべての問題は生産ラインの出口側、つまり出荷場や発送場、製品在庫の倉庫に現れます。

 

3.問題は未然に防ぐ

上流の管理の結果が下流へ影響する。これはモノづくり現場の原理原則です。

工程の後半で認識された「失敗」ほど、現状復帰させるのにコストがかかります。

これは、品質原価の失敗コストで説明できます。

ですから予期されるトラブルへは事前に手を打って、損失の最小化を図ります。問題は未然に防ぐのです。

上流での取り組みが重要になってきます。

 

生産管理は納期問題を未然に防ぐためにやっているわけです。

単なる生産指示では、問題が発生してから事後的に対応することになります。

知らず知らずに損をしているというわけです。

管理の仕組みがあれば、ダメージを最小化できます。

 

4.工場経営の品質を管理する

工場経営も同じです。

工場経営の下流は何でしょうか。

生産現場です。工場です。モノづくりをしているところ、そのものです。

 

工場の在り様は、工場経営の結果を表しています。

現場の状況を嘆いている経営者がいたら、それは自ら、工場経営の品質を嘆いていることに他なりません。

 

どうして製品在庫が倉庫に山積みされているのか?

販売計画と生産計画の不整合のためかもしれない……。

どうして不良率は低いのに製造コストが高止まりしているのか?

経営者の知らないところで現場が地道に不良品を手直ししていたからかもしれない……。

どうして工程間に仕掛品が山積みされているのか?

ボトルネック工程を把握しないで生産量を設定しているからかもしれない……。

どうして通路に試作品が大量に置かれているのか?

設計部門から試作指示だけ出て、その後のフォローが全くしていないからかもしれない……。

などなど。

 

これらは全て、モノの滞留という形で現場で見つけられます。

工場経営に問題があれば、それは全て、現場に現れるのです。

工場経営の出口が「現場」だからです。

 

ですから、現場の問題の多くは、経営上の問題につながります。

逆に言うと、現場をチェックすれば工場経営の品質をチェックできるというわけです。

工場経営の品質をチェックするためのポイントを経営者自身が現場で見つけるべきです。

経営者にとってアラームの役割をしてくれるからです。

 

現場の日々の生産活動を管理するために生産管理があります。

同様に工場経営を管理するための考え方もあるのです。それが方針管理です。

 

自社工場に合った、独自の方針管理のやり方を考えませんか?

 

まとめ。

生産活動を生産管理で、工場経営を方針管理でコントロールして、質を高める。

 

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出典:株式会社 工場経営研究所 伊藤哉技術士事務所


製造業専門の工場経営コンサルタント。金属工学の専門家で製造/生産技術、生産管理、IEにも詳しい。エンジニアの視点で課題を設定して結果を出し、工場で儲ける仕組みを定着させることを得意とする。コア技術の見極めに重点を置いている。 大手特殊鋼メーカーで20年近く、一貫して工場勤務。その間、エンジニア、管理者としての腕を磨く。売上高数十億円規模の新規事業の柱となる新技術、新製品開発を主導し成功させる。技術開発の集大成として多数の特許を取得した。 その後、家族の事情で転職し、6年間にわたり複数の中小ものづくり現場の管理者を実地で経験した。 大手企業と中小現場の違いを肌で理解しているのが強み、人財育成の重要性も強調する技術系コンサルタントである。 技術立国日本と地域のために、前向きで活力ある中小製造企業を増やしたいとの一念で、中小製造業専門の指導機関・株式会社工場経営研究所を設立。現在、同社代表取締役社長。1964年生まれ、名古屋大学大学院工学研究科前期課程修了。技術士(金属部門)