新たな付加価値を創出するために〇〇の発想を持つ

新たな付加価値を創出するために〇〇の発想を持つ

付加価値を拡大させたい、新たに生み出したいと考えるならば「コア」の発想を持つ。

「コア商品」を作る技術が「コア技術」。すべての強みは「コア技術」に収束される、という話です。

 

1.コア技術を全員で認識する

新たな付加価値を創出する切り口として、コア技術を思い浮かべます。

自社工場の強みです。

固有技術や要素技術と言われる工学的に要因に加え、組織力をベースにした管理技術も含めます。

モノづくりを実践するための「背骨」を構成する要素と考えてイイでしょう。

 

創業者がゼロから立ち上げて今日に至る歴史(経路)が強みの形成に大きく影響を及ぼしています。

競合先は、自社工場が経てきた歴史をまねることは絶対にできません。

つまり、自分たちには当然と思われていることが、意外と、「地味」ながら強みの源泉であったりします。

特に後者の「組織力をベースにした管理技術」にはそうした側面が強いです。

 

強みに注目するのは、事業を発展させるときの定石です。

まずは、コア技術、つまり自分たちの強みを全員で認識したいです。

 

2.コア技術から考える

新たな付加価値を生み出す事業を検討するとき、製品や商品ベースで考えると論点が発散してしまう恐れがあります。

今、売れている商品から、今後売れそうな商品を予測することになります。

新たにあの製品を開発すれば売れるのではないか、次はあの商品がヒットするのではないか。

製品や商品にのみ焦点を当てていると、その製品や商品が売れなくなった時には、事業撤退という発想した浮かんできません。

せめて、その製品や商品を開発したこと自体が、自社の強みを強化するのに役に立っていればイイのですが、それもよくわからず。

製品や商品にのみ焦点を当てた場合、思考の軸、論点の拠り所が不明確になる傾向にあります。

過去や今の売れ行きに目が行きがちです。

売れそうな商品を考えるうちに、ラーメン屋さんがそばやうどんを扱うようになり、さらに、売り上げの拡大を目指してカレーライスやハンバーグを加えるようなものです。

 

国内市場が右肩上がりで成長していた時代、具体的にはGDPや生産性がグングン伸びていた1990年代前半までなら、ファミリーレストランは繁盛していました。

しかし、市場が成熟化していると言われて久しい昨今、事業成功のカギは、絞ることや専門性、個性というキーワードで表現されています。

したがって、新たな付加価値を生み出す事業を検討する時は強みであるコア技術から考えるのです。

そして、「ウチのコア技術から顧客へどのようなあたらしい価値や付加価値を届けることができるのか」と考えます。

 

3.モスフードのコア技術

飲食業を眺めると「コア技術」の重要性が理解できます。

「コア商品」と表現した方が、しっくりくるかもしれません。

 

まだまだデフレを脱却できていないの中、生活防衛による消費者の節約志向や食材や人件費の上昇で、外食産業を取り巻く環境は大変厳しいようです

こうした経営環境の下でも堅調な業績を上げているファストフードチェーンがモスフードサービスです。

2014年の消費増税時の価格転嫁と2015年の平均10%の値上げに踏み切りましたが、売上高は増税後も前年比プラス、客単価も4%程度向上しています。

主力商品「モスバーガー」の価格は330円→370円へ値上げしてのこの結果です。

 

モスバーガーでは何をやったのか?

 

奇策はない。

「定番商品の磨き上げ」(千原一晃総合企画室長)に取り組んだのだ。

約1年かけて全国400か所、9千人の従業員に改めてハンバーガーの盛り付け、チキンの揚げ方など研修を実施した。

ハンバーガーはパンのようなバンズにパティ、ミートソース、トマトなどを重ね、最後に再びパンズを載せる。

単純作業のようだが調理方法、盛りつけの見栄えの巧拙で味覚と出来栄えが大きく違ってくるという。

(出展:日本経済新聞2016年11月7日)

 

チキンの揚げ方、バンズの焼き方、盛りつけ方、個々のコア技術によって、コア商品であるハンバーガーが出来上がります。

コア商品を作る技術が、コア技術とも言えます。

焦点が自社のハンバーガーという点からブレません。

論点が極めてクリアです。

 

そうした姿勢がファンから評価され、値上げにもかかわらず売上高、客単価ともに増加しているのでしょう。

顧客が支払う価値以上のものをお客に届けているので選ばれているわけです。

コア技術を磨き上げた結果です。

 

「奇策はない」という表現からも読み取れるように、正しいことを愚直にやりきること、本質は極めてシンプルといえます。

逆に言うと、シンプルに説明できなければ本質ではない。

強みはシンプルに語れないといけないようです。

話を複雑にするようでは本質から離れます。

 

4.コア商品とコア技術

新たな付加価値を創出する切り口として「コア商品」もあります。

「コア商品」を作り技術が「コア技術」であると考えれば、すべての強みは。

やはり「コア技術」に収束されます。

いずれにしても付加価値を拡大させたい、新たに生み出したいと考えるならば、「コア」の発想を持つことです。

 

自社工場での強みを「コア」の発想から抽出してみませんか?

「コア」に焦点を当てて新規事業を考えていますか?

「コア」からずれると論点がはっきりしなくなります。

 

まとめ。

付加価値を拡大させたい、新たに生み出したいと考えるならば「コア」の発想を持つ。

「コア商品」を作り技術が「コア技術」。すべての強みは「コア技術」に収束される。

 

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出典:株式会社 工場経営研究所 伊藤哉技術士事務所


製造業専門の工場経営コンサルタント。金属工学の専門家で製造/生産技術、生産管理、IEにも詳しい。エンジニアの視点で課題を設定して結果を出し、工場で儲ける仕組みを定着させることを得意とする。コア技術の見極めに重点を置いている。 大手特殊鋼メーカーで20年近く、一貫して工場勤務。その間、エンジニア、管理者としての腕を磨く。売上高数十億円規模の新規事業の柱となる新技術、新製品開発を主導し成功させる。技術開発の集大成として多数の特許を取得した。 その後、家族の事情で転職し、6年間にわたり複数の中小ものづくり現場の管理者を実地で経験した。 大手企業と中小現場の違いを肌で理解しているのが強み、人財育成の重要性も強調する技術系コンサルタントである。 技術立国日本と地域のために、前向きで活力ある中小製造企業を増やしたいとの一念で、中小製造業専門の指導機関・株式会社工場経営研究所を設立。現在、同社代表取締役社長。1964年生まれ、名古屋大学大学院工学研究科前期課程修了。技術士(金属部門)