数だけ追う管理者研修に何を期待するの?
これは、KさんがV社で行った研修相談時の内容です。
Kさんの話では「2年程前にV社の研修を担当し、内容が良かったためでしょうか? その時に担当した方の推薦で研修の講師を兼ねて私に相談があったのですが、研修対象者は120名程度、現場の職長クラス、しかも、10回も研修会を計画されている」ということでした。
しかし、このまま計算すればわかりますが、1回の研修は12名程になり、かける時間や研修終了までの期間と費用も膨大です。
加えて、一般の教養や意識教育程度の内容では、手足は動かず、何も効果のない研修になります。
そこで、私は「私にそのような依頼をしてくるわけはないハズである」と考え、JMAの関係者(顧客対応窓口の関係者)と共に、「早速、お客様のニーズを確かめに訪問しました」ということから、この話は始まります。
Kさん達のお話では、V社でもご多分にもれず厳しい経営環境下にあり、リストラの末、従来の体制を大きく変革、新しい体制として職長を設定してきたそうです。
また、人件費縮減のため、外注業者やパートタイマー、外国労働者を活用した体制でこの厳しい環境を乗り切ろうという状況でした。
従って、現場管理者の方々にとって、ここには、従来にない厳しい内容が現場管理者に課せられることになり、「それに対応した管理教育を推進したい!」というご要求でした。
このような環境をとらえ、Kさんは、事の重大さと、新体制で現場強化を図る必要性と早急な現場力強化ニーズを理解したそうです。
なお、この種の問題を示す背景として、企業が抱えている問題に、次のような内容が紹介されました。
①年齢構成が20歳代から35歳代が多い、中間がなく、いきなり45歳から50歳代と、離れた年齢構成の職場を管理しなければならない
②かつて管理者研修を受けてきた人はいるが少なく、力を発揮していない
③新任の管理者は管理者になったばかりで、管理者の意識が少ない。実務経験も浅い状況で、現場の管理にあたっている。現場に入ることと上から言われる仕事が管理と考えている
④職場には正社員と外注、パートタイマー、外国人労働者と異なる企業、給与を受ける人が働いていて、現場管理に苦労している。どちらかというと個人の力量で現場を管理していただいている状況であり、品質、納期、生産性を始め、やる気や現場管理の面でかなり差異が出ている
⑤なお、V社側でも現場管理者のあるべき姿、仕事の用件を明確な形で示してこなかった
以上がV社の問題点でした。
だが、大小の差はあっても、今の企業環境ではどの会社でも抱える問題は似ています(人材強化は、経営の基本であり、中小企業はどこでも悩む内容です)。
そうなると、この種の問題の対策に有効な対策を早く投入した企業が、問題からの脱皮を早めることになります。
さらに、Kさんは、V社に今まで、現場管理者の方々の教育をどのように進めてきたか? を問うことにしました。
現状までの経緯を知らないで研修の提案をすることは、今後の対策に有効でないからです。
すると、予想通り、「Kさんに相談をかける以外に現場管理者研修を提唱する各社の提案を受け、色々と検討を進めて来ました。また、一般的な研修は上司が部下に教える形で進めてきたため、書に出てくるような一般的な内容(教養番組的内容)は皆、知識としては知っている状況です」というお話が返ってきました。
また、「しかし、実行があがっていないため、再度、初級コースとして昔から有名な管理者教育メニューを検討してきた」という話でした。
事は急ぐ状況です。このため「我が社で検討してきた対策だけでは問題解決に不安が多い。
また、同じような研修の繰り返しでは、単なる時間つぶしになってしまいます。
今回は、習った知識を実際の現場で活用することが目的です。
あえて言うなら、水泳の泳ぎ方に対していくら知識ばかりを増やしても、プールか海、我が社の場合は激流で対岸に渡りきる泳ぎ方ができなければ無意味です。
実務に直接役立つ指導内容でなければ何も役に立たない! ということを我が社では問題にしています。
このような事情から、今回、Kさんに一括して、是非
「各種、研修の題材とされてきた現場管理の知識を、実務の場で、職長クラスが実際に使って役立てる内容のご指導をお願いしたいわけです。なお、当然ですが、生産をしながらの研修です。このため、研修に多くの現場管理者を一度に送り込むことができないため、今回は、10回にわけて研修を進めたいと思っています」
というお話でした。
▼中小企業アンケート
このような話で、KさんもV社の事情がほぼわかったので、『研修を道具として荒波を乗り切る対策』を目的とした実務的な現場管理に対し、Kさんは更なる質問を加えました。
「研修はともかく、受講者のアウトプットをどのように考えておられますか?」
しかし、応えは「……?」という状況でした。
企業内研修の要点はアウトプットを先に決めることが重要です。
そこでKさんは、この沈黙を破るため「では、今回、現場管理者の責務は次の3つ原則にまとめられます。まず、ここから見直しをしましょう」と言って、下に示した要件を紹介したそうです。
①管理者には個々に定められた責務があり、その責任からは免れられない
②部下の育成、標準化推進の義務がある(権限委譲とレベルアップ上の条件)
③P-D-Cの輪を廻し、現場管理レベルを高める活動が義務づけられている
「現場管理とは、与えられた人、設備、時間、金……の中で最大効率を発揮していくことです。
このため、“管理とは無駄と金のなる木がわかり、持てる力を発揮する”という内容が求められます。
まず、このような内容を現場管理者研修の要点にして、この管理の基本を、実務でどのように使って具体的なアウトプットにつなげるかの対策を計画したいと思います。
具体的な対策に当たって重要なことは、一般論ではなく、具体的に個人名を挙げ、その方がどのような実力を持った人物像になっていただきたいか? を明確にすることが研修実施前に必要です。
また、このようにして個々人を育成強化した場合、現場管理者集団として、野球やサッカーのチームに例えるなら、ピッチャー、サード、セカンド、野手……バッター編成に当たる選手陣をどのような布陣にすれば競技に勝てるチームとなるか? について、監督にあたる工場長が構成をイメージしておく必要があります。
現場管理者研修はこのために実力向上を図る技術投入のための手段です。
したがって、まず、工場の組織態勢を機能する構成を策定された後(人的配備戦略の明確化の後)、今度は、例えば、A職場の従業員が○○のレベルの仕事をするようになれると、□□の効果が得られるといったように、具体的事例のような内容を挙げていただく手続きが必要になります。いかがでしょうか?」
と対策の内容を示すと、ここでも「ウーン……!」と、研修を相談され担当者の方を含め、V社トップ陣は黙って考え込んでしまわれ、しばしは沈黙したそうです。
要は「Kさんに頼んで研修をすれば、今、V社の目前にある霧が晴れる!」と漠然と考えていただけであり、V社自ら主体的に解決~現場管理者研修と共に獲得すべきアウトプットの項目までは明らかにしてこなかった点に、V社の方々は深く反省をされたわけでした(なお、繰り返しになりますが、この打合せには、V社の研修担当事務局の方々が1名、数カ月前まで工場長を担当されておられた方も参席されていました)。
V社には5つの工場があります。各工場で生産する製品も生産環境や顧客要求はそれぞれ異なります。
従って、一般的な研修では、共通性を高めても、各工場の問題解決には不向きとなります。
このため、V社の関係者は即答ができなかったわけです。
だが、このままV社の方々を悩ましたままにしておくことはできません。
そこで、Kさん「たとえ、研修の日程が少し延びても、アウトプットを整理されてから研修をスタートされる方式でも遅くないのではないでしょうか?」と話し、黒板に向かい、下に示すような表を示したわけでした。
▼現場管理者研修に臨む内容
「どうでしょう? 今回の場合、受講対象者の氏名、仕事、性格まで、各工場長はわかっているわけですから、その下の部長クラスの方々と共に、例えば、○さんはこの点が問題である。
研修でここをこのように教育してもらえば、このような仕事に力を発揮していただき、このようなアウトプットを出していただくようにしたい。
教育以外に工場長以下、教育でカバーできない問題をこのように改善したい、と言う内容を表にし、沢山ある研修メニューより、貴社の工場トップのニーズに合った内容を重点に研修をされてはいかがでしょうか?
社外へ人を送る一般管理者研修とは異なるわけです。
また、研修では、多分、列挙した全ての要求を満たすことはできません。
そこで、個人に対する要求内容を各工場の工場長が列挙した後、
①研修で実力向上を図るべき内容
②工場長の直接指導(OJT)で力量向上を図る対策
③受講生である現場管理研修担当者自身が個人的に目標を定めた後、今回の研修を通して実力向上を図っていただく内容を抽出された後に研修のテーマを決めてはいかがでしょうか?
そうすれば、ご本人にも役立つ研修内容を短期間で投入するお手伝いが出来ますし、私としても焦点を絞った研修を提案することが可能です」
JMAの事務局担当者も「御社には、Kさんが言われるソリューション型研修が向くと思います」と付け加えました。
すると、「なるほど!」となったわけですが、さらに、「現場管理者研修を計画される前に、できれば工場長が集まり、このような表を目の前にして、各工場長が個々の現場管理者の方にどのようなテーマに何が、どこまでできる力をつけて欲しい! という要求事項を明確にされた後、レベルアップを図りたい方々を見て、似た目的、すなわち、アウトプット要求項目を見て、メンバーをグループ化して、このグループにはこの研修内容、このグループにはこの内容、と区分してはいかがでしょうか?
そうすれば、多少グループ毎に内容が異なっても、受講される方々のアウトプットとトップ・ニーズに合わせた研修ができるはずです。要は、毎回アウトプットに応じた研修内容にアレンジする対策です」
「いや、良いご提案をタイミング抜群でいただきました。丁度、今月末に工場長が集まる会議があります。この検討は実施可能です。
早速提案し、実行へ移すようにしたいと考えます。今回は社長命令で、対策を進めることにしています。
そこで、Kさんにおいでいただいて内容を充実するため、今日の打合せとなったわけですが、正に、我々が望んだ内容のご提案です。
ありがとうございました。では、今月末まで待って下さい。しっかりした内容で計画を出し、再度のご相談としたいと考えます」
「更に提案ですが、貴社の現場管理者研修の場合、私の担当は120名が対象ですが、多くとも、5回程度で終了されてはいかがでしょうか? 多分、その程度の課題グループになると思います。
また、同じような研修が繰り返される場合、私が研修する時に課長か部長クラスの方のご出席を願い、現場管理者の方々と同時に研修をお受けになることをお勧めします。
現場管理者研修と同時に上司教育も進める方式です。
要は、問題解決ニーズ毎に上司を講師団にチーム編成するわけです。
そして、類似テーマ毎に、その方が受講後に講師を担当される方式です。そうすれば、上司教育と共に、習ったことの実施日程は縮まります。
また、工場ごとに対策事例を教科書にして、残った同種問題解決関係者に対し、上司自ら、生産の都合を見ながら研修が自由な時間で進められるため、御社が抱える問題の対策は早く進むと思います。
今後のことを考え、テーマが分類され、研修の種類が決まったら、ぜひ3~4名程度の講師担当を編成され、今回の研修を進められてはいかがでしょうか?
現場管理者研修というものは、社内で、しかも上司が部下指導という形でOJTスタイルで行う対策が基本です。
外部研修は、その種の内容の見直しに参加する程度です。事実、外部研修へ参加される方は1社で1~2名というのが実情です。
また、その目的は社内研修の見直し、と私はみています。
特に、貴社のような場合には今後、外部研修を受けたら、その後は、社内講師である程度の研修を行うべきです。
また、先の提案内容を見ていただいておわかりと考えますが、『フォローアップの無い研修はあんこの無いあんパンのようなもの』という言葉があります。
生徒には教えたことを実施願い、習ったことを使う技術と共に、成功体験による喜びを語り合うことが重要です。
人の成功を見て、習ったことを使う切り口を他の方が学ぶという技術波及も研修では重要な内容です。
また、この種のフォローアップ研修には、私が必ず参席しなければいけないという性格のものではないと思います。
それより、受講者を指導する方々と、研修後にフォローアップ研修を進める際、中間フォローの形で、自工場内で進捗を見て、そこに何か問題があれば、また、新たな問題解決内容があれば、講師を担当する方と私とが数時間程度の相談会を企画される対策が有効だと思います。
御社にはテレビ会議システムがあるので、出張無しでできます。
私が、ここへ訪問すれば、その種の相談は十分にできます。また、研修を担当させていただく私も、研修時の内容に問題が無いか? が判り、支援と共に、研修内容の実情が判るので助かります」
「なるほど、時代ですね!」
「そうです。お願いですが、研修のフォローアップは研修後1〜2カ月程度の後にお願いします。
3ヶ月後という方式を使う例もありますが、研修生にとっては、習ったことの活用は早いほうが有効です。
3ヶ月となると、研修後に帰社すると仕事がたまっている。
『宿題を後でやろう』となると、結局は中間発表程度となり、フォローアップ研修では、やる気を見せても、大半は実施に至らなかったり、中途半端な内容に終始する例を多く見てきました。
また、フォローアップ研修には、技術交流のための発表会と共に、どこかの工場で開催した後、工場診断という形で、改善発掘提案をしていただく企画を進めることが効果的です。工場間のノウハウ交換に役立つからです」
「我が社では、スタッフの方を中心としたISOの監査や安全診断をやってきました。その方式の応用ですか?」
「そうです。この現場管理者版です。
なお、今回のような研修を実施するにあたっては、事前に個々研修生の方々に宿題を用意していただき、研修に参加していただくお願いをしたいと考えます。
先の話に戻りますが、講師養成は私が研修の種類毎に1回を研修する。
その後は、御社の上司(同時受講の方から)2名の方が担当講師となり、その後の研修は、必要に応じて分担して研修を担当する方式をお願いさせていただくわけですが、当然、私が担当させていただく研修、特に演習の時や空き時間には、この上司である先生方が持つ疑問や方針など、ご自身が実施した場合に想定される不安点や、相談には乗らせていただきます。
また、先のお話のように、研修後にある問題やご心配ごとにはテレビ会議利用のシステムで補助します。
しかし、お願いがあります。研修時には講師を担当される方を事前にお決め下さい。
また、私の資料はそのまま差し上げるので、この方達には教育マニュアルを作っていただきながら研修に当たっていただくという点です。
そうすれば、受講と同時に、その後の事例などを入れた貴社独自の現場管理者教育マニュアルができ上がるので、その後の展開が効果的に進むからです」
「なるほど!」
「特に、受講生をフォローアップした内容を事例として加えたりすれば、今後、貴社の新任の現場管理者教育にも私たちの手を借りずに次の課題に足を進めることができると考えます。
私たちの仕事は、どうしても社外の者なので、御社の細かいご事情が掴めない状況です。
従って、産業界で一般的になっている題材を使わざるを得ない状況ですが、ここに提案した内容を実施されることにより、上司教育と共に、御社にあった研修が集大成されるはずです。
御社では貴重なお時間と費用投入を今回なされるわけですから、費用がペイしなければ、また、効果が出るスピードが遅く、実務的でないと、結局は時間のムダ遣いになります。
『悪いコンサルタントは企業を食い物にする』と言う言があります。だが、今回は、このような内容もゼロ化を狙いたいと思います。
かつて企業で勤務していた私は、貴社の立場がわかるので、このような提案をさせていただいたわけです」
「ありがとうございます。その通りです。反省ですが、ムダな研修を今までずいぶんやってきました。
有名なメニューという内容ですが、研修生は“良かった”という出張報告を出すのですが、やる気にはつながっても、具体的な効果はなく教養番組だったと反省しています」
「そうですか、その経験をお持ちであることが、今回の提案を深くご理解願えると信じ、ここ迄の発言になったわけです。
先を急ぎますが、先程のお話では、具体的テーマとして、貴社では品質、原価、納期改善を急ぐお話でしたね!」
「ハイ!」
「それなら、先ほど、現場管理者研修は5グループとお話しましたが、3グループ程度に絞られてはいかがでしょうか? 現場管理者研修は問題解決を進める環境条件を提供する程度の内容です。
この種の問題解決を具体的に進める技術的手段はほんのわずかです。
そうなると、同じご予算と日程を使い、3グループは現場管理者教育の次に、この方々や内容をバックアップするスタッフの方々を中心に、例えば、後2回は設備・故障対策と、生産性向上~作業の標準化に対する具体的な対策に対し、液晶ビデオなどを使用したスピード問題解決対策を進められることを推奨したと思います。いかがでしょうか?」
「なるほど」
「最初にお話された10回の研修費用を予算化されているのであれば、現場管理者研修だけでなく、このような面の強化が実務的にできる力を、全員でなくても育成することができます。
同じ時間を活用するならその方が効果的だと考えます。私が担当する分は5回ですから半分で済みます。
後の半分は5回分のご予算を御社でお使いになれば、外部費用は半分で済みます。
また、私としても、弟子を御社の中に短時間で育てさせていただくという価値を感じます。時間の浮いた分を他社の支援に使えることも、大助かりなのです」
「了解です。全10回の予算ですから、そこ迄やるべき、と思いました。社内で今回の内容を早速つめて、お返事します。
私は今回も、研修は職場長の意識教育から、と思っていました。
だが、『意識教育こそ、直属上司が実務を通して高めるべき』というOJT(オン・ザ・ジョブ・トレ-ニング)の基本を研修で習ったことを、今、思い出しました。
ところで、このような形で研修を進めると、今度は部長以上の研修が課題になるように思いますが、その点に対してKさんはどう判断されますか?」
「その種の研修は不要だと思います。産業界でよく行われてきた部長クラスの研修メニューとテキストをここへお持ちしましたのでご覧下さい」
「……よく書に出てくる内容ばかりですね?」
「そうです。このクラスの方々は自分で本を読み、情報を得て自分からそれを活用することが職務だと考えます。
従って、部長クラスの方に対する研修は一般論ではなく、ご自身が仕事を進める課題検討結果に、ムダや抜けがないか? をご自身で判定する目的で、テーマ別、目的別の研修をご自身で選択していくべきです。
部長職になってまで人に教わる方式では、その先が心配です。部長なら中期計画を自ら各種調査と共につくり、その実現に対し、他社情報などを利用して評価検討して中身を充実するために研修を利用する。
また、個々にその目的やニーズが異なるはずですから、その目的にあった内容だけを企業側が補完するという方式を主体にすべきです。
また、この種のテキストをご自身で使ってマネジメントレベルをあげるためには、項目を題材に、自社の問題や課題などを設問の形で記載した後、自分で答えをつくり、その後、教科書ではどのように扱っていくかを見るべきです。
部長研修テキストの項目を見ただけで、自社と自分の立場で意見をつくる。見解や対策を述べる。
その後、世の中の部・課長はこのように情報を集め、問題解決を図るのか? と対比しながらご自身のマネジメントレベルや問題解決技術をあげ、自職場を見直しながら、マネージャーとして先に策定した中期計画の内容を見直し、実行力の錬磨を図るべきです。
本来、このような主体的な内容が無い方は、部長を含め、工場トップの職に就くべきではないと考えます。
また、部課長が受け身で人から訓練を受ける! “護送船団方式で、アリバイづくりの形で必要知識を学び、関係者にひけらかす”というような精神と体制では、立派な部課長にはなれないと考えます。
企業内研修では1日研修ということで、このような内容を伝え、実施し、ご自身の仕事の見直しを行う研修をしていますが、もし、この種の対策が必要なら、このテキストをご参考下さい……」という話で、この打合せは終了したそうです。
この案は即座に検討されました。
また、短期間、かつ、目的とアウトプットを先に決めた実務研修会が実施に移されましたが、当然のように、V社では多大な効果が短時間に出たそうです。
Kさん、そのような報告をJMAの事務局担当から聞き、「講師として成果が出たお話が、物を貰ったり、飲み会に呼ばれるよりも、一番うれしいお礼だ!」と筆者にも話をされていました。
正に同感! 筆者も同じような取り組みを繰り返してきたため、この話を、ここに紹介することにした次第です。
コメント
現場管理者研修には、筆者の著書『モノづくり現場管理者育成技術』を含め、Eラーニングの形態があります。
この種の内容は市販されていて、誰でも「現場管理の基本」を個人で学べる教材です。
要は、講師や研修会を必要としない対策のため出版や公開されたシステムが産業界にあるわけです。
したがって、この種の任に就かれた方は、自ら学ぶ対象とすべきです。
また、もし、企業の目的を定めて研修をする場合、社内講師陣が内容を検討して、必要事項を抽出し「我が社、または、工場としてどのように解釈して実務に生かすか?」を検討の上、短時間の知識教育の後に実務展開へ向けるべきです。
MBCもそうですが、多くを学んでも、その知識を使うのはある特定分野に限られます。
下図のように、現時点で各人が持つ課題や問題解決対象に対して、目的と対象を絞った知識利用術を駆使すべきです。
そうしないと、勉強した内容は単なる教養番組や学問的勉学になり、V社とKさんの話にあったように、「激流を目の前にして図書館に学ぶ!」といった形態になってしまうからです。
▼研修を含めた情報を扱う基本
では、同じような仕事をする筆者にもV社を指導されたKさんと同じような相談がR社からなされ、対応した例を紹介することにします。
R社からの相談内容は体質強化、「特に、社外クレームをゼロにしたいので相談に来て欲しい!」というものでした。
その企業は、特殊な製品をつくる企業として有名な会社です。
お邪魔すると、4社程のコンサルタント企業に声を掛け、対応策を相談しているとのことでした。
また、筆者への依頼は「品質向上戦略をプロモートして欲しいが、この対策もコンペ」という内容でした。
このため、既に、研修を業とする各社とも対策手法を売り込む形で提案書を出していた状況の後、筆者への相談がなされた状況でした。
以上、このような環境でR社紹介から話がスタートしたわけですが、「今までの職人的な対応では限界になっていて、クレーム対策は重要な対策課題となっている」とのお話が出ました。
クレームには社長様自らの謝罪劇となっていたわけですが、問題の本質をつめていくと、また、重要問題の内容を記載し、問題の本質を目の前で解析していくと、手法投入の前に課題の整理と共に、現場管理者、スタッフの仕事の仕方に問題が行き着きました。
なお、テーマは本質的にV社の研修のご相談と似た内容でしたが、R社の場合は中間管理職が問題のネックになっていました。
要は、中間管理者の方々はそれなりに仕事を進めているわけですが、社長が心配される本質的な問題の周辺ばかりを対策し、現場に発生する問題の原点的対策になっていなかったのです。
具体的な状況は、現場の問題は製造現場管理者に丸投げ、方針や対策がフラフラするため、現場には事後処理ばかりが残り問題が山積していたわけです。
R社の社長のお話と事例を聞く内にこの内容は益々明確になっていきました。
従って、対策すべき点は、「中間管理者が中心となり、問題の整理と本質追求を行うことが大切である」というわけです。
そこで、筆者は、「どうでしょうか? 手法をあれこれ検討される前に、トップの要求は何か? 現場の要求や問題は何か? トップの要求事項を具体的に記載願い、現場は1人3件の具体的問題の列挙を行い、中間管理者が2日程度山籠りして両者の要求をどのように結びつけ対策へ向けるかを決めることをなさっては? また、決めたテ-マの完全達成のための予防措置、リスク対策も行うわけです。
これを行い、その達成をアウトプットとして中間管理者の責務にする。競争ながら達成する。
必要ならボーナスに反映される方式も一手と考えますが……」とお話したわけですが、コンペの提案というより、コンサルテーションそのものの進め方の話し合いに3時間も費やしました。
筆者は、その後、製造現場の拝見となりました。
ここで、R社では、他社見学や各種の研修会や講演会などへ盛んに出席していた状況ですが、5Sを始め、いろいろと手法を試した痕跡と失敗談を見ることができました。
製造現場には、対策手法の百貨店状況となった対策内容が表示されていたわけです。
また、中間権利者の方々は、多くの理論や対策知識の紹介はなさるのですが、問題の本質をついた対策を示す資料や表示などは全く無く、不良のグラフは 1年以上も停滞し、多くの知識が実務の現場でほとんど役だっていないことがわかりました。
このような現場見学の後、部屋へ戻りR社の会議室で再度の討論が開始されました。
また、対話の中から、突然、「現場管理者教育が計画されている」という話しが出ました。
その内容は、基礎管理者・意識教育だったため、筆者は「アウトプットはなんですか?」の問から、対策内容の整理を開始することを提案しました。
しかし、その問いの答えは何もなく、沈黙となったわけでした。いくらコンペでも、こちらが担当したくない会社があります。
目的や対策方針が異なる場合、ご依頼をお断りすることが本筋です。
しがみついてこの会社の注文をとるより、本当に必要なことをサゼッションした方が良いわけです。
そこで、「頭の中、問題の5Sをしないで、手法投入は無理です。また、経営分析を行い、現状と将来の問題を整理しなければ、やはり、手法投入は無理があると考えます……」と話すと、R社の社長様は、深くうなずいておられました。
そこで、「御社のような体制の強化より、問題1件づつに担当をつけ、私たちTZD研究会で進めてきた物理現象解析により1件づつ、現場、現物で原因を除去する対策を中間管理職の方々が自らお手本を示す形で進めることが、変な体制を作って、その総合司会のようなしごとをJMAの私に託すより有効と考えます」とお話しました。
しかし、今回の話を進める担当部長の方は、そのような提案には全く関心を持たない状況でした。
事実、「そうは言っても総合司会を……」ということに固執されるので、私の日程を見ると、幸か不幸か、R社が要求される日程は既に他社で埋まっているという状況でした。
このため、この仕事は、打ち合わせの場でお断りする線で話が進み、やがて、私も解放となりました。
結論は「既に、私以外に品質改善の総合司会をコンペであるコンサルタント会社に依頼されているのであれば、そちらにお願いして、R社が企画される内容の推進をお願いしたい」となったわけでした。
読者の方々には、この種の扱いが、筆者の思い上がりのように受けとめられるかもしれません。
しかし、この会社の指導をお断りしたいと思った理由を、もう少し、追記したいと考えます。
私たちに相談をかけられた担当部長の方が、帰る時「では、1年かけてじっくりと、今後の対策を各コンサルタント会社と相談したい」とあり、「あなたが、お話されたように、今まで各中間管理者に決めたアウトプットの見えない研修の見直しをさせ、その対策と共に、各種のコンサルタントの支援を得て、自分が企画した総合品質体制の実を示すから期待して下さい。
また、お会いした時にその成果を紹介させていただきます」と胸を張って話されていたからでした。
この内容は、熱心に私に実情を話をされたR社の社長様のご意向とは完全にずれています。
事実、部屋に戻っての討論では、私が話した「アウトプットは?」の質問と沈黙の後、目前で社長とこの方の激しい討論がなされたからでした。
なお、社長が事務系ご出身ということや、先に売り込みをかけたコンサルタントの内容もあったせいか? 「そう言うなら、君がリードを取る形で、今回の企画を進めて欲しい」と決定された経緯があったためです。
また、日程も然ることながら、私自信、トップの意向を理解しない担当者とおつきあいするのは大変だと思ったからでした。
これは、私のかんぐりかもしれません。しかし、結局はこのR社が私に依頼する総合品質司会的な支援はお断りする形で帰宅した次第です。
それから1年の後、筆者はR社の社長様から突然の電話をいただきました。
内容は「1年間我慢しました。あの品質管理部長の企画を実行しました。しかし、多大な研修費用と会議と討論の結果、立派な資料はできましたが、不良は平行線のままです。
要は、全く不良低減が進んでいないので電話しました。明らかに失敗です。
既にあの部長には会社を辞めてもらいました……。早急に助けて欲しいので来ていただけないでしょうか?」という内容でした。
そこで、支援となったわけですが、「不良対策は、図に示したように、1問題→1原因→1対策方式で物理現象の解析を進めて原因の除去を完全にすることが決めです」と言って、用意された不良項目に担当を決めていただき、研修内容を即実践する展開を図りました。
当然、中間管理者の方々には1件づつテーマを持っていただき『論より実践』の3現主義対策を図りました。
その結果、下図のように、4ヶ月で不良はゼロ化されました。
この状況を見て、R社の社長様「考え方や行動の不良が物である現物の不良になっていくこと、戦略と戦術を中間管理者が中途半端にしておく怖さを学びました」というお話をされましたが、辞めさせられたR社の品質部長は、山登りの装備で海の魚を捕る対策を進めた例です。
「管理という内容は目にとらえにくい」という局面を持っています。
このためか? Tさんや筆者は、ここに示したような例に多々遭遇してきたため、ここに事例の形で紹介させていただくことにした次第です。
▼R社における不良対策?管理グラフと不良対策方式の差