技術はコピーでは伝承できない

技術はコピーでは伝承できない

熟練工の大量退職に備えて、いろいろな試みがされていますね。

 

1.熟練工の方が工場にいるうちに、動画をとりながら、工程をノートに書いたり
2.学者肌の方が話し合い、論文のようにまとめたり

 

上の二つのようなことが多いみたいです。

私は以下のように思います。

技術のデータ保存ではなく、技術を持った職人を育てることが重要ではないでしょうか(過去の記事「技術伝承議論の問題点」に詳しく書いてますので参考にしてください)。

 

下に要約します。

『技術伝承の問題を議論するとき、あまりにも「職人」を軽視しすぎてます。

「技術を持っていない方が、いかに簡単に安価にその技術を手に入れるか。しかも一度マニュアル的なことを作ってしまえば、この先受け継がれるようにしたい」

そのような考えでは、技術伝承はできないでしょう。

技術は職人から職人に受け継がれていくものです。実際に現場で作業しなければ熟練工にはなれませんし、その奥底にあるものは、言葉や文字や映像では表面に出てきません。出したとしても大切なものは抜け落ちて伝わると思います』

 

今日では、工具や工作機械や制御技術や加工プログラムがすごく発達しています。

それらを手に入れれば、昔ほど苦労せず加工できます。

しかし全てがコピーできるわけではありません。大切な部分が抜け落ちます(詳しくは「武道はスポーツではありません」に書いてます。参考にしてください)。

 

内容は、オリンピック競技として武道である柔道を公開してしまったため、武道の「道」が正確に伝わっておりません。武道を志す一人としてあれを武道として世界中の人に見られることを恥ずかしく思います。という内容です。

技術(特に高度な技術)をコピーして、使ったとしても、「実(じつ)」が伴いません。実とは、自分のものにし使うことです。つまり、なぜそうするのかを理解したうえでその技術を使い、今後次の技術につなげることです。

単に技術をコピーしただけでは、表面的には品物はできるかもしれませんが、自分の経験の蓄積にはなっていないのです。

 

したがって、熟練工を育てなければ現在より高度な技術を持った職人は期待できないでしょう。

~基本を大切にした技術伝承~汎用旋盤職人養成


1963年大阪生まれ。西尾鉄工所代表。旋盤師、伝統技術継承者◎祖父の代から80年続く大阪八尾市の町工場の三代目。「職人道」を極めた先代のもとで、13才から弟子入りし、昔ながらの職人技を叩き込まれ、家業を一人前にこなした。工業高校卒業後、中堅工作機械メーカーに就職。工作機械(機械部品を産み出す母なる機械。マザーマシンとも呼ばれる)の構造を隈なく学び、23才で独立。最先端コンピュータで制御された「NC旋盤」に対し、職人の「技」と「勘」が頼りの「汎用旋盤」(職人の手で動かす旋盤)をこよなく愛し、現在に至るまで、その加工にこだわり続けてきた。数少ない伝統技術継承者の一人。◎若い世代の人材不足、技術伝承に危機感を持ち、2016年「汎用旋盤職人養成講座」をスタート。教材用に独自開発した「汎用フライス盤」は、設計、加工、組立・調整をすべてひとりでやり遂げ、自身の総合技術力の賜物となった。最近、営業下手な職人の殻を破り、SNSを駆使して「基礎の手技」の重要性を次世代へと訴える。また、異業種の職人を対象に、「いぶし銀の会」を立ち上げ、オリジナル製品の企画、開発など「未来の職人像」を探っている。コンピューター依存が加速する製造業の未来を受け入れつつも、「機械の前に人間ありき」と、代々受け継がれてきた職人の技と精神性の伝承に力を注いでいる。◎2014年「八尾市ものづくり達人懸賞」受賞、2015年日刊工業新聞「マイスターに聞く」掲載、「なにわの名工」受賞◎西尾鉄工所ホームページhttps://nishio-tekkousho.jimdo.com/ 西尾鉄工所技術伝承 https://nishio-tekkousyo.jimdo.com/