従来品を新規市場へ投入する戦略

従来品を新規市場へ投入する戦略

貴社で、従来品ベースの新製品を、新たな市場で販売したことはありますか?

1. 付加価値拡大戦略で売上高増を目指す新規事業開発

付加価値を創出し拡大する戦略は2つです。

  • 売上高を増やす
  • 変動費を減らす

どちらかです。

 

売上高を増やすとき、高付加価値製品だけでなく、従来製品も戦略に加えます。

商圏は、従来市場と新規市場です。

従来製品と高付加価値製品を、従来市場と新規市場へ販売する組み合わせから、4つの戦略があります。

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中小では、限りある経営資源で付加価値を創出し拡大する戦略に挑戦します。

明確な根拠を持って、これら4つの中から戦略を選択するのです。

新規事業の位置づけをはっきりさせます。

2. 新規事業開発の方向性についてのアンケート

『日経ものづくり』2016年3月号に「新規事業開発の方向」のアンケート調査した結果が掲載されています。

2-1. 新規事業開発はうまくいっているか

勤務先における新規事業開発の状況を単一回答で質問しています。

回答数は266です。

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失敗組は68%です。

(うまくいくものは少ない、あるいは、うまくいくものはほとんどない、の両者を合わせた数値)

一方で、成功組で「半分程度以上うまくいく」と回答しているのは26%です。

(だいたいうまくいく、うまくいくものが多い、うまくいく場合が半分くらいの3者を合計した数値)

 

7割はうまくいっていないと回答しています。

ですから、新規事業開発の成功率は、高くありません。

ただし、4社に1社は成功させているともいえます。

 

新規事業開発では、事前の準備をして、適切に経営資源を分配します。

新規事業開発の手順を学び、成功させる確率を高めます。

せっかく挑戦するならば、成功組に入るよう知恵を絞りたいです。

2-2. 最も力を入れている新規事業形態は何か

従来製品と高付加価値製品を、従来市場と新規市場へ販売する組み合わせから、4つの戦略があります。

どのタイプの戦略を選択しているか単一回答で質問しています。

先の2-1. 新規事業はうまくいっているかの問いへの回答別に集計されています。成功組と失敗組です。

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成功組の約半数は、既存製品をベースにして、新たな市場での拡販に挑戦しています。

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失敗組は、新たに開発した高付加価値品を、新規市場へ投入する戦略の割合が、成功組より10%以上も高いことに気が付きます。

両者の結果を見比べると、次の2つの見解が得られます。

 

1)新たに開発した高付加価値品を、新規市場へ投入して成功させる難易度は一般的に高い

2)新規事業開発では、従来製品をベースにした、新規市場の開拓戦略の成功率が高い

 

新しいモノを、新たな市場へ投入するのは、失敗のリスクが高いです。

事前の準備や調査によって、勝算があると評価されない限り、避けるのが無難です。

新規事業開発には、成功の確率を高める手順があるということです。

 

下記は、4つの戦略のマトリックスに成功組が選択している事業スタイルの割合を記入した表です。

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成功の確率が高いところから挑戦し、領域を広げる戦略が望ましいです。

2-3. 新規事業開発のアイデアはどこからか

成功組を対象に複数回答で質問しています。

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「顧客の要望」が圧倒的に多いです。

次いで「社外のセミナーや異業種交流会、研究会」「トップの考え」です。

「社内での公募」が13%程度と低いのに注目です。

 

3番目の「トップの考え」も、外部情報を参考にして、最終的に社長自身が決定したと推定されます。

したがって、開発のテーマのヒントは、社内ではなく、社外に、特に顧客の元にあるようです。

将来へ向けた新たな飯の種は、社内側を向いて、ウンウン唸っても生まれないということです。ほんとうのコア技術を見極める時もそうでした。

 

開発テーマについても、顧客へドンドン聞いてしまいます。

考えてみれば、このアプローチは正当な方法です。

他ならぬ顧客へ新たな価値を届けるのが、新規事業開発の狙いだからです。

 

お届け先の顧客の欲しいコトを対象にすれば、失敗のリスクは当然低くなります。

新規事業開発は投資です。賭けや博打ではありません。

手順を踏むことで、成功の確率を高め、成功組に入ることが可能です。

 

新規事業開発では、既存製品をベースにした製品開発を進め、新規市場へ投入する戦略から考えます。

他の戦略より、成功の確率が高いです。そして、開発テーマは、ひたすら顧客の声に耳を傾けて絞り込む。当然、コア技術の周辺です。

 

成功の確率を高める新規事業開発の仕組みをつくりませんか?

出典:株式会社 工場経営研究所 伊藤哉技術士事務所


製造業専門の工場経営コンサルタント。金属工学の専門家で製造/生産技術、生産管理、IEにも詳しい。エンジニアの視点で課題を設定して結果を出し、工場で儲ける仕組みを定着させることを得意とする。コア技術の見極めに重点を置いている。 大手特殊鋼メーカーで20年近く、一貫して工場勤務。その間、エンジニア、管理者としての腕を磨く。売上高数十億円規模の新規事業の柱となる新技術、新製品開発を主導し成功させる。技術開発の集大成として多数の特許を取得した。 その後、家族の事情で転職し、6年間にわたり複数の中小ものづくり現場の管理者を実地で経験した。 大手企業と中小現場の違いを肌で理解しているのが強み、人財育成の重要性も強調する技術系コンサルタントである。 技術立国日本と地域のために、前向きで活力ある中小製造企業を増やしたいとの一念で、中小製造業専門の指導機関・株式会社工場経営研究所を設立。現在、同社代表取締役社長。1964年生まれ、名古屋大学大学院工学研究科前期課程修了。技術士(金属部門)